〇 米オープンAIの「ChatGPT」をはじめとする生成AIのサービスが話題になっており、僕もテストで色々と使ってみている。
特に、米マイクロソフトのWebブラウザー「Edge」に、生成AIを活用したアシスタント機能の「Copilot」が搭載されたので、とても身近になった。
生成AIは一時期、仕事の効率を大きく変えるツールだと騒がれ、実際に利用もされ始めている。だが個人的には、作業を変わってもらうようなツールだとは思っていない。少なくとも今のところは、ちょっと力不足だと感じるのだ。
今回は、Copilotを活用した業務文書の作成方法を紹介する。2種類の文書を作ってみたので、どのくらいの手間で、どれほどのレベルの文書ができるのかを理解する際の参考にしてほしい。
企画書を作成させたが、情報が不足していると感じた。
Edgeに搭載されたCopilotは、ブラウザー画面に表示されるウィンドウで利用する。ここには「チャット」と「作成」というメニューが用意されている。
例えば「チャット」を使って企画書を作成するためのポイントを聞いてみると、必要な情報を並べてくれる。だがこれは、AIを使わなくても既に知っていることばかりだ。もちろん、それを知らない人にとってはとても便利である。とはいえ、この程度なら検索と結果はほとんど変わらない。一方で、広告など回答に関係ない情報は表示されておらず、画面が見やすい点はすばらしい。
続いて、「作成」メニューを使って「インターネット広告の企画書を作ってほしい」というシンプルな命令を出してみた。出来上がってきた企画書は、よくまとまっているがありきたりすぎる。これは、僕の命令の出し方が悪かったのだろう。
そこで今度は、具体的な商品名や販売価格、広告予算などを含んだ命令で企画書を作ってもらった。すると、なかなか魅力的な企画書が出来上がってきた。ただ、パッと読んだ限りではすてきな企画書に思えるのだが、よく読んで考えてみると重要なポイントが抜けている。
今回は予算を50万円と指示したのだが、その配分やインターネット広告の予算単価も表示されている。しかし、その予算配分の根拠がまったく書かれていないのだ。なぜその金額になったのか、根拠のある情報がなければ、そのまま使うことはできないだろう。
結局、生成AIに企画書を作らせる場合は、ここからが勝負なのだ。
Copilotが作ってきたのは、作成途中段階のものだった。要するに不十分で、必要な情報を人手で盛り込まなければ通用しないということである。個人的にはいちから作った方が早いと判断しているが、企画書を作り慣れていない人には良い方法だと思う。ただし、パッと読むとよくできている企画書ではあっても、ビジネスとしては重要な視点が抜けている可能性は高い。それを把握できない人が安易に使うと、痛い目に遭いそうだ。
契約書のテンプレートを作成、こちらは十分だった。
では僕は生成AIを業務文書作成に使うことをあきらめたのかというと、そうではない。今は、Copilotによる文書テンプレートの作成を試している。
実際に作成テストをしているのは、例えば契約書のテンプレートだ。僕は契約書を、テンプレートを利用して作ることが多い。よって前々から、テンプレートを探すのが面倒だと感じていた。それならば、生成AIに作ってもらえばよいのではないかと思ったわけだ。
試しに文章量(長さ)を「中」にして、業務委託の契約書を作ってもらった。命令のしかたを大きく変えたわけではない。生成AIが作成した文書を、完成品ではなくテンプレートとして使うという違いである。人手による修正が前提ということだ。
作成された契約書は、テンプレートとしては十分内容が伝わるものだった。命令にはなかった報酬の振り込みなどもしっかりと抑えてくれている。これなら適宜修正すれば、カジュアルな契約であれば十分役立つだろう。
続いて、文章量を多くして機密保持契約書を作ってもらったが、こちらも非常によくできている。必要な項目を逃していない。あとは、署名なつ印のスペースを追加すればテンプレートとしては十分だろう。自分の業務に見合ったテンプレートを検索し見つけてきて使うよりも、手っ取り早いはずだ。
この結果を受けて、先に作成させたインターネット広告の企画書が、テンプレートして使えるかどうかを考えてみた。その結果やはり、「予算配分の根拠」という文言がまったくないなど、欠落している情報が気になる。何らかの記述がないと下書きにならないため、個人的にはテンプレートとして使うことも難しいと思う。
生成AIを活用して作成した業務文書の評価は、人によって違って当然だろうし、命令の出し方によっても変わってくるはずだ。個人的には、業務文書の種類にもよるが、テンプレート作成であれば実用的で非常に便利だと評価している。