〇 2022年9月に発売された「iPhone 14 Pro」。筆者は発売日に入手して以来、毎日愛用している。5カ月以上使って自分が重視するカメラ機能を中心に現時点ではベストなiPhoneだと確信した。
しかし最大の特徴となる画面上部のパンチホールを生かした「Dynamic Island」は面白いと思うものの、実用的な面で疑問を感じることがある。
今回は長所としてカメラ機能、意外に役に立っている機能として屋外における最大輝度を上げる「リアルタイムピーク輝度コントロール」をお伝えしよう。短所としてはDynamic Islandが残念に感じる例を紹介する。
カメラ3つが4つのカメラに、適切な倍率を選べるように。
iPhoneの「Pro」シリーズは他シリーズよりもカメラ機能が強化されている点が特徴だ。分かりやすいところでは、背面カメラがProシリーズには「超広角」「メイン」「望遠」と3つ搭載されている。「iPhone 14」などのProではないシリーズの場合は「超広角」「メイン」の2つになる。
カメラの焦点距離や絞り値などのスペックはシリーズごとにやや異なるものの、iPhone 14 Proでは、超広角が「13mm、絞り値f/2.2」、メインが「24mm、絞り値f/1.78」、望遠が「77mm、絞り値f/2.8」となっている。望遠カメラは光学3倍だ。
ここまでを見ると、背面にカメラを3つ搭載する「iPhone 13 Pro」と同じカメラ構成で、望遠が光学3倍である点も同様である。
筆者はiPhoneでレビュー記事用の物撮りをするほか、おいしそうな料理をスナップ写真として撮影することが多い。メインカメラでは広角レンズ由来のひずみのある写真に違和感を覚えるため、ほとんどの場合に望遠カメラを使っている。
しかし3倍望遠になると、被写体からある程度離れて撮影しなければ全体を捉えられない。「iPhone 12 Pro」までの2倍望遠がちょうどよかったと思えるのだ。
iPhone 14 Proではメインカメラのイメージセンサーが、従来の12MPから48MPと4倍に向上したことを生かし、メインカメラが捉えた映像から中央の12MPを切り出す、デジタルズームではない光学2倍望遠が実装された。
標準の「カメラ」アプリでは、ズームの倍率で「.5」「1x」「2x」「3x」といった4つの光学望遠を使えるようになった(間の倍率にも設定できるが、その際はデジタルズームになる)。実際に使ってみると、やはり2倍望遠は筆者の用途には適していると感じた。
3倍望遠が必要ないわけではなく、取材先で周囲の様子を撮影したり、リアルの打ち合わせでホワイトボードやスライドを撮影したりする際に活躍している。
搭載するカメラを増やすことなく、ソフトウエアの力で4つ目のカメラを実現し、ユーザーのニーズに幅広く応えている点を評価したい。筆者も多くの撮影用途をiPhone 14 Proでカバーできるようになり、デジタル一眼レフカメラの出番がほとんどなくなってしまった。
マクロ撮影機能でさらに用途が広がる。
2cm程度の近距離の対象物にもピントを合わせられる撮影が可能なマクロ撮影機能も役に立つ。超広角カメラを用いた機能でiPhone 13 Proから引き続き実装されている。筆者の場合は、物撮りで細部を撮影する際に活用している。商品のラベルに書かれた小さな文字などを撮影する際にもしっかりとピントが合う。
マクロ撮影機能は被写体を10〜20cm程度で捉えると自動的に作動する点に注意が必要だ。マクロ撮影には超広角カメラが使われるため、切り替わった瞬間に構図が変わる。20cmと言えば通常の撮影でもピントが合う範囲なので、意図せずマクロ撮影に切り替わる場合もある。また画質もやや荒くなるので、そのまま撮影してしまうと後で困ることにもなってしまう。
自動的にマクロ撮影に切り替わらないようにはできないが、切り替わった際に手動で通常の撮影に戻すことは可能だ。念のために設定方法を紹介しておく。
「設定」→「カメラ」とタップして表示された画面で「マクロ撮影コントロール」をオンにする。これによってカメラアプリでマクロ撮影に切り替わった際に黄色のチューリップアイコンが表示されるようになり、これをタップするとマクロ撮影がオフになる。
屋外で最大輝度が上がり視認性が向上。
iPhone 14 ProシリーズはHDRコンテンツを再生した際の最大輝度が1600ニトと、iPhone 13 ProシリーズやiPhone 14の1200ニトよりも明るい。また画面輝度を最大2000ニトに引き上げるリアルタイムピーク輝度コントロールが搭載されている。
屋外での視認性は確かに上がっているとは感じていた。比較のために晴天の昼間にiPhone 14と一緒に持ち歩いてみた。するとiPhone 14 Proの方が明るく表示された状態を確認できた。比較すると思っていた以上に違いがあることが分かった。
iPhone 14とiPhone 14 Proの最大輝度の違いを確認できたのは太陽光の強い日中で、曇天ではほとんど違いが見られなかった。アップルがリアルタイムピーク輝度コントロールを発表する際は「屋外で使用する際は」と注釈を付けていた。屋内と屋外を何かで区別をしているのだろうかと疑問に感じたのだが、単純に晴天の太陽光ぐらいの強い明るさが必要なのだろうと思われる。
iPhone 13 Proを使っていた頃は、真夏の直射日光下でiPhoneの画面が全く見えず、木陰に入って確認してたことを思い出した。今後、季節が進んで日差しが強くなるとさらに活躍する機能だろう。
Dynamic Islandは面白いけれども残念な面もある。
iPhone 14 Proでは前面上部に設けられているカメラや各種センサーを格納する領域に、従来のノッチ(切り欠き)ではなくDynamic Islandと呼ばれるパンチホール(穴あき)を採用している。
Dynamic Islandは端末の状況を知らせたり、状況に応じて操作のショートカットとして使えたりとUIとしての側面もある。かなりユニークだ。
自動改札にiPhoneをかざした際にDynamic Islandに表示されるSuicaや、「Face ID」で顔が認証された際に表示されるスマイルマークなど、アニメーションを見ているだけでも面白い。
UIとしての使い方は多少の慣れが必要だ。積極的に使おうと思わない限り、従来の使い方をしてしまう可能性がある。代替手段があるためユーザーが本当に便利だと感じなければ浸透しないのだ。
せっかくのDynamic Islandが宝の持ち腐れにならないようにしたい。筆者は音楽再生中に「ミュージック」アプリに切り替えなくてもDynamic Islandで再生をコントロールする機能をよく使っている。
音楽を聴きながら別のアプリを使っている場合に、Dynamic Islandの再生コントローラーを用いれば、使用中のアプリを動作させたままで曲を飛ばしたり戻したりできて便利だからだ。
しかし気をつけなければならないこともある。例えば音楽を聴きながらWebページなどでスクロールしたページを先頭に戻す場合だ。多くのアプリで画面の上部をタップするとページの先頭に戻せるが、誤ってDynamic Islandに触れるとミュージックアプリに切り替わってしまう。画面上部でもDynamic Islandのない左右の部分をタップすればよいのだが、今までの癖でつい中央上部をタップしがちなので注意したい。
個人的にDynamic Islandが最も残念に感じる部分は、ノッチのiPhoneよりも表示領域が小さくなる場合がある点だ。実際にはDynamic Islandの表示不可領域はノッチよりも約20%小さくなっているので、何を言っているのか不思議に感じるかもしれない。
例を挙げるとNetflixやAmazonプライムビデオといった動画配信サービスでiPhoneを横向きにして動画を視聴する際がそれに当たる。「シネスコ」などと呼ばれるような横長の作品の場合はノッチやDynamic Islandにかからないように全体を表示すると上下左右に黒い帯が表示される。Dynamic Islandはノッチよりも画面の内側にあるため、動画がやや小さく表示されてしまうのである。
ちなみに動画配信サービスや作品によってはDynamic Islandやノッチを無視してディスプレーの横いっぱいに表示できる場合がある。こうするとDynamic Islandの表示不可領域がノッチよりも小さいと実感できるが、中空に浮かぶDynamic Islandがかえって目立つ場合もある。
Dynamic Islandで表示領域が小さくなってしまう問題は他のアプリにもある。筆者が愛用しているDJアプリもDynamic Islandやノッチを避けてデザインされているため、動画の場合と同じようにiPhone 14 Proの方が横方向に若干窮屈にUIが配置されている。
わずかな差ではあるが、DJアプリではUIをとっさに、かつ微妙に操作する必要がある。少しでも余裕を持って配置されているほうがミスをする可能性が低くなり安心して使える。
写真撮影で望遠カメラを多く使う場合は、iPhone 14 Proシリーズがお薦めだ。iPhone 13 Proにはない光学2倍望遠は普段使いでも威力を発揮する。今回は紹介しなかったが、写真にこだわるユーザーには「Apple RAW」で撮影できる点もProシリーズにしかない特徴だ。
Dynamic Islandの残念なところは、ささいな部分ではあるが上位モデルとされるiPhone 14 ProがiPhone 14に負けてしまうのは悲しい。ちょっと揚げ足取りのように思われるような点を、筆者が感じるままに紹介した。今後の対応を期待している。