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〇 「dポイント」と連携開始、Amazonも巻き込むポイント経済圏競争。

NTTドコモは、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)の日本法人であるアマゾンジャパンとの協業を発表。EC(電子商取引)サイト「Amazon.co.jp」で「dポイント」をためたり使えたりできるようになった。このことはNTTドコモのいわゆる「経済圏」ビジネスを強化するだけではない。Amazon.co.jpがポイントと経済圏を巡る争いに巻き込まれたことを意味している。

Amazon.co.jpの買い物でdポイントがたまる。

ポイントなどを軸として自社系列のサービスの利用を増やし顧客を囲い込む、いわゆる経済圏ビジネス。その経済圏ビジネスに力を入れてきた楽天グループが携帯電話事業に参入して以降、国内携帯大手による経済圏ビジネスを巡る争いは激しさを増している。

NTTドコモは、携帯4社の中で経済圏ビジネスでの出遅れ感が目立っていた。だが最近は大きな動きを相次いで見せている。2023年10月にはマネックスグループとマネックス証券との資本業務提携を発表。マネックス証券を連結子会社にした。さらに2024年3月には、オリックス・クレジットの子会社化を発表。とりわけ出遅れていた金融事業を急ピッチで強化している。

そして2024年4月10日にも同社は再び大きな動きを見せた。アマゾンジャパンとの協業だ。具体的に言えば、アマゾンジャパンが運営するAmazon.co.jpで、NTTドコモの共通ポイントプログラムであるdポイントをためたり、使えたりできるようになった。

NTTドコモは2024年4月10日にアマゾンジャパンとの協業を発表。Amazon.co.jpの買い物で「dポイント」をためたり使えたりできるようになった。写真は同日に実施された「ドコモとAmazonの新たな協業」に関する記者発表会から
画1、NTTドコモは2024年4月10日にアマゾンジャパンとの協業を発表。Amazon.co.jpの買い物で「dポイント」をためたり使えたりできるようになった。写真は同日に実施された「ドコモとAmazonの新たな協業」に関する記者発表会から。

この施策は、dポイントの会員プログラムである「dポイントクラブ」のアカウント「dアカウント」と、Amazon.co.jpの「Amazonアカウント」を連携すれば利用可能になる。NTTドコモの携帯電話サービスを契約していなくても恩恵が受けられる。連携によりAmazon.co.jpで買い物をする際にdポイントが使えるのはもちろん、1回当たり5000円以上注文すれば、その金額の1%分のdポイントがたまるという。

「dアカウント」と「Amazonアカウント」を連携していれば、Amazon.co.jpで1回当たり5000円以上注文することで金額の1%分のdポイントがたまる。写真は2024年4月10日の「ドコモとAmazonの新たな協業」に関する記者発表会から
画2、「dアカウント」と「Amazonアカウント」を連携していれば、Amazon.co.jpで1回当たり5000円以上注文することで金額の1%分のdポイントがたまる。写真は2024年4月10日の「ドコモとAmazonの新たな協業」に関する記者発表会から。

それに加えてNTTドコモの携帯電話サービス契約者には、Amazon.co.jpの有料プログラム「Amazonプライム」に関する特典も用意。NTTドコモ経由でAmazonプライムの「月間プラン」に申し込むと、dポイントが毎月120ポイント還元される。また初めてAmazonプライムを利用する人には3カ月間、dポイント還元の代わりに、月間プランの料金に相当する600円を還元する。

またNTTドコモ経由でAmazonプライムに契約し、なおかつ「eximo」や「ahamo」などの中・大容量プランを契約している、あるいは60歳以上という条件を満たしていれば、Amazon.co.jpにおいて「d払い」で決済する際に基本の0.5%に加え、さらに1%分のdポイントが付与される。全ての条件がそろえば、最大で3.5%のdポイントが還元される。

NTTドコモ回線利用者がNTTドコモ経由でAmazonプライムの月間プランに加入すれば毎月120ポイントが還元される。その他にも特典を用意している。写真は2024年4月10日の「ドコモとAmazonの新たな協業」に関する記者発表会から
画3、NTTドコモ回線利用者がNTTドコモ経由でAmazonプライムの月間プランに加入すれば毎月120ポイントが還元される。その他にも特典を用意している。写真は2024年4月10日の「ドコモとAmazonの新たな協業」に関する記者発表会から。

競合に勝つには強いECが必要。

Amazon.co.jpではこれまでも、買い物に他社ポイントを利用できるケースは存在した。だが買い物でポイントがたまるのは、Amazon.co.jp独自の「Amazonポイント」だけだった。1回当たりの注文でためられる上限が100ポイントまでという制約があるとはいえ、dポイントをためられるようにしたことは、両社にとってかなり踏み込んだ取り組みであることが分かる。

とはいえ、NTTドコモとアマゾンジャパンが踏み込んだ協業を実施するのは今回が初めてではない。2019年にも両社は協業を打ち出した。当時のNTTドコモの料金プラン「ギガホ」に、Amazonプライムが1年間利用できる特典を付与する施策を実施した。この施策は2021年に終了している。

NTTドコモとアマゾンジャパンは2019年にも協業。当時の料金プラン「ギガホ」利用者向けにAmazonプライムを1年間利用できる特典を提供した。写真は2019年11月26日の「ドコモとAmazonの取り組み」発表会から
画4、NTTドコモとアマゾンジャパンは2019年にも協業。当時の料金プラン「ギガホ」利用者向けにAmazonプライムを1年間利用できる特典を提供した。写真は2019年11月26日の「ドコモとAmazonの取り組み」発表会から。

そのときの施策と今回の施策の違いは何だろうか。NTTドコモの山本明宏営業戦略部長は、料金プランや期間に関係なくAmazonプライムの特典が得られることが最も大きな違いだと答えている。それに加えて今回の施策では、NTTドコモの回線契約者でなくてもdポイントに関する特典が得られる。dポイントを軸に置き、より幅広い利用者に特典を提供して双方の利用を拡大することが大きな狙いとなるようだ。

NTTドコモの視点で見た場合、今回の協業は経済圏ビジネスの拡大に向けた取り組みの一環であることは間違いないだろう。dポイントクラブは2023年度に会員数を1億人にまで伸ばすなど、会員基盤自体は順調に拡大している。だが、それを利用する場としてECサービスが欠けていた。

NTTドコモは独自のECサービス「dショッピング」などを展開してはいるものの、楽天グループの「楽天市場」や、ソフトバンク傘下のLINEヤフーが運営する「Yahoo!ショッピング」などと比べると存在感が薄い。かといって、国内の主要なECサービスは既に競合他社の傘下となっている。金融事業のように買収での事業拡大は困難だ。

一度たもとを分かったアマゾンジャパンと再び深い協業へと至ったのは、経済圏ビジネスの競争が激化する中にあって、その中核となるECの分野でこれ以上取り組みの遅れが許されなかったためといえそうだ。

アマゾンの密なポイント連携はdポイントだけか。

一方のアマゾンジャパンの視点で見た場合、1億人規模となるdポイントの会員基盤が、Amazon.co.jpの顧客拡大に大きなメリットになることは確かである。

とりわけNTTドコモは、インターネットサービス全般の弱みとなっているシニア層を顧客に多く持つだけに、シニア層のEC利用拡大を推し進める上でも協業は大きな意味を持つ。今回の施策で60歳以上のNTTドコモ回線契約者に対するポイント優遇を設けたのも、シニアの利用拡大に重点を置いたためと考えられるだろう。

dポイントクラブの会員数は、2023年度時点で1億人を突破した。写真は2024年4月10日の「ドコモとAmazonの新たな協業」に関する記者発表会から
画5、dポイントクラブの会員数は、2023年度時点で1億人を突破した。写真は2024年4月10日の「ドコモとAmazonの新たな協業」に関する記者発表会から。

ただAmazon.co.jpの規模を考えれば、もっとオープンな立場で共通ポイントプログラムと付き合う手もあったはずだ。しかしながら携帯各社の経済圏ビジネス競争が激化したことで、ECサービスの競争にもポイント還元のお得さが大きく影響するようになってきたのも確かである。

それだけにアマゾンジャパンとしては、直接の競合となる楽天グループなどと対抗していく上では、国内での規模が大きい特定のポイントや経済圏と、もっと密に連携するのが得策と判断。顧客基盤は大きいが強いECサービスを持たず、競合関係となりにくいNTTドコモとの連携に至ったのではないかと筆者は見る。

そしてこのことは、巨大サービスであるAmazon.co.jpまでもが、ポイントと経済圏ビジネスを巡る競争に巻き込まれたことを意味している。ただNTTドコモとアマゾンジャパンは、今回の協業による連携が独占的なものかについてコメントを控えている。将来的にAmazon.co.jpで恩恵を受けられるのがdポイント陣営に限られるのかどうかは分からない。

そこで今後注目されるのが、アマゾンジャパンが他のポイントプログラムと連携する可能性だ。その有力候補となりそうなのが「Vポイント」である。

Vポイントは三井住友フィナンシャルグループとカルチュア・コンビニエンス・クラブなどが提携して「Tポイント」と統合することが発表されており、2024年4月22日にそのリニューアルが実施される。Vポイント陣営も有力なECサービスを持たないだけに、もしNTTドコモとの契約が独占的なものでないのであれば同様の連携が進む可能性は十分考えられる。

三井住友フィナンシャルグループ系の「Vポイント」は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ系の「Tポイント」と2024年4月22日に統合し、より規模を拡大する。写真は2023年6月13日の新ポイントに関する会見から
画6、三井住友フィナンシャルグループ系の「Vポイント」は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ系の「Tポイント」と2024年4月22日に統合し、より規模を拡大する。写真は2023年6月13日の新ポイントに関する会見から。

また規模の大きいAmazon.co.jpがポイントプログラムの連携で大きな動きを見せたことで、その影響が他のオンラインサービスにも波及する可能性が高い。各社のポイントプログラムとの連携が一層進み、経済圏ビジネス競争に大きく影響するだろう。有力サービスと共通ポイントを巡る動きは、今後より激しくなることが予想される。


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