新種の蝶を求めて 

1990年代から蝶の新種発掘プロジェクト推進中。
内容:蝶だけでなく、現地の自然や人々の暮らしぶりを紹介します。

ネパール・ムスタンは意外に近かった。

2024-09-03 14:51:15 | 旅行
ネパール中部の中国・チベットと接するチベットと同様の乾燥地帯。主にチベット人が居住する。ジョムソム(2800m)が郡都。最近まで外国人の入域が制限されて来たことから禁断の王国と呼ばれている。

アクセス:乾季ならポカラから飛行機で一っ飛びだが、雨季は悪天候のため飛行機が飛ばない。今回(2024年8月)も、滞在期間中、飛行場では一機も見なかった。日が高くなると風がもの凄く強くなり、帽子を手で抑えてないと飛ばされそうになるくらいだ。チャレンジングな空港だ。数年前に外国人旅行者も事故で亡くなっている。
ちなみに、今回安全だろうとカトマンズーポカラ間を飛行機で移動したが、滞在期間中、ポカラ空港で離陸失敗し20名位亡くなった。どこも気を付けないといけないようだ。
陸路での移動も雨季は崖崩れだらけで、今回も通行止めになるほどでなかったが、3−4箇所崩れていた。今年は雨が少ない予想で、雨季でもムスタン行きは可能だろうと考えての訪問だ。スムーズに行けば、ポカラを朝のバスに乗れば夕方には着いてしまう。


ジョムソムの街並み (標高 2800m)
シーズンオフで外国人旅行者は非常に少なく閑散としていた。ヒマラヤは雲がなく山がよく見える冬がシーズン。そもそも雨季は奥地に行くこと自体が難しい。

ホテル代 
グーグルの地図上に出たホテルの値段が軒並み1万円を超えていたので、カトマンズやポカラより相当物価が高いものと覚悟していた。また現地での両替事情が分からなかったので、大量のネパール・ルピーを現地に持ち込んだ。しかし、ジョムソムにはATMは少なからずあり(実際には試していないが)、また、1万円超のホテルはツアー客向けの三つ星ホテルで、他にこじんまりしたリーズナブルなホテルもたくさんあり、現金が大量に余ってしまった。シーズンオフということもあってか、どこもホットシャワーが使えて、一泊、1500-2000円位で泊まれた。

アッパー・ムスタンとローワー・ムスタン
ムスタンは南北二つに分けられ、中心のジョムソムはローワー・ムスタンにあり、アッパー・ムスタンのローマンタンへは、入域許可がより厳しく
ローワー・ムスタンの更に南半分は、乾燥帯への移行地帯で比較的降水量があり夏場は緑美しい。


ティティ湖から仰ぐダウラギリ峰(8167m)


カリ・ガンダキ ムスタンを南北に貫いて流れる。河原はだだっ広くムスタンらしい風景になっている。しかし、ローワー・ムスタン最南端の写真手前あたりから川幅は急に狭くなり、標高も数キロで一気に7−800m下がる。フローラ(植物相)も温帯林から亜熱帯林に変わる。


ジョムソム付近のカリ・ガンダキ (車窓より)
ローワー・ムスタン最南端から2−30kmで、森林地帯から砂漠地帯に変わる。


ムクティナート寺院 (標高3800m) 
ジョムソムから20km位のところにあるヒンズー教と仏教の折衷寺院。資料によるとヒンズー教寺院とあるが、本宮はヒンズー様式以外、チベット仏教のマニ車や大仏もある。多角経営のようだ。インドからの巡礼者が多かった。


ホテル建設ラッシュ 門前町が発達しホテルが立ち並ぶが、1−2年で収容人数は20−30%増えそうな勢いだ。コロナ禍で大変な状況だったと思われるが、攻めの経営に転じている。

調査の前半は天候に恵まれたが、終わり近く降水量が増えてきて、崖崩れで帰れない恐れが出てきたので、3−4日も予定を早めてムスタンから出た。調査が完結せず尻切れ蜻蛉になってしまった。

再びネパールへ

2024-06-11 08:10:44 | 旅行
昨年6月に引き続き、2024年5月にネパールに行った。今回は、ゼフィルス類(きれいなシジミチョウのグループ:100種程度からなる)の幼虫採集が目的だ。

Chrysozephyrus birupaの幼虫発見
本種の幼生期は不明であったが今回の調査で発見した。シャクナゲ(Rhododendoron arboreum, ネパールの国花)から見出した。ただ、本種の幼虫が多型でちょっと特殊であるため、全ての情報が揃ってから発表する予定。このブログで予告だけすることにした。

ネパールのトレッキングパーミット
2023年3月より全てのトレッカーはガイドを必須とするルール改訂があり、トレッカーから不満が多数上がっていたようだ。そのためガイドがいると邪魔で経費ばかりがかかるので、今回はパーミット対象地域以外を訪問する予定していた。ポカラのホテルでその辺の事情を聞いたところ、ガイド無しでも許可がおりると言うことであった。それじゃと言うことで、早速、ポカラの観光局に申請したら即おりた。

変更点は、ガイド無しだけでなく、従来、TSMSと各地域のエントリーパーミットの2種必要だったのが、エントリパーミットに一本化されていることだ。

実際に入手したパーミットを紹介する。(写真は外してある)



山に入るとほとんどのトレッカーがガイドを連れているが、時々ガイド無しも見かけた。
ただ、ネパール政府は正式にはガイド無しでも良いと発表はしていない(ネットで見る限り)ようなので、状況は流動的と見た方が良いかも知れない。

久しぶりの新種の記載

2023-08-30 21:46:52 | 日記
今月(2023年8月)、2種の新種の記載を行った。新亜種の記載は散発的に機会があったものの、新種の記載はインド東北部ナガランドのコツバメ以来となった。

最初はセセリチョウ科のPedesta shinnookaensisと言う種。その名の通り中国湖北省神農架産のもので、2001年に採集していた。よく似た種が多く、新種であることを証明するのが難しかった。オークションで比較材料を落札して、近縁種との違いを科学的に証明する事ができ、新種記載が可能となった。

次はベトナム中部産のシジミチョウ科のChrysozephyrus ngoclinhensisと言う種。ベトナム中部最高峰のゴクリン山産。これもオークションで落札したもの。主要なジャーナルを調べたところ、まだ新種として記載されていないので新種として記載した。しかし、常識的に考えて、新種になるようなものがオークションに出品されることは無いと考えられ、誰かが一歩早く新種として記載している可能性がある。時間が立たないと、どう言う評価になるか分からない。

いずれにせよ、オークションで面白い材料が得られたのは意外。自分で取りに行く手間がある程度省ける。と言うより最近調査の成績が悪いので来年は奮起したい。

急遽、ネパールに

2023-07-08 13:40:14 | 日記
2023年6月後半 ネパールを訪問した。今年はインド洋の気温が低く、ヒマラヤエリアの夏の好天が予想され急きょ決めた。
雨季(6−8月)の蝶の採集は天候の影響が非常に大きく、悪い年だと一週間滞在して毎日雨で1日もネットを振れないこともある。だから雨季の採集計画は消極的になる。

実際来てみて、予想通り天候に恵まれた。
景勝地ポカラでは、泊まったホテルの窓から雪山が見えた。ヒマラヤの雪山の写真はほとんどが雨の降らない冬季に撮られ、山並みは赤茶けている。しかし雨季の晴れ間の雪山はみずみずしい麓の緑とのコントラストが美しい。なかなか貴重だ。


マチャプチャレ遠景 (ポカラのホテルから)

しかし肝心の蝶の方はさっぱりダメだ。標高2000m位の稜線で吹上げてくるゼフィルス類(キラキラ輝く小さなシジミ蝶の仲間)を待ったが収穫ゼロだった。山腹にはそれらの幼虫が食べるアラカシ類(Quercus)、マテバシイ類(Lithocarpus)、シャクナゲ類(Rhododendorn)、ネジキ(Lyonia)など生えており、これは期待できると思ったが。同様の環境でインド東北部アルナチャル・プラデシュ州では成果があったが今回は何故ダメなのか原因は不明。


標高2000mの稜線


トレッキングコース上のゲストハウス 
山上に点々とあり、山奥に泊まりそこを基地にできるのは有難い。ただ成果が無かった。麓からポーターを雇って登った。



 ポカラ・レイクサイドでのモーニングセットが320ルピー(350−400円程度)。その辺の食堂でも朝食の値段は同じくらいするので、洗練された内容の割に安い。小綺麗なホテルもコスパは良い。


リモートワークに最適? ポカラのホテル
 それなりに洗練された環境があり物価が安いので、リモートワークにもってこいではないかと思う。ネット環境も悪く無いようだ。もちろん風光明媚だ。ポカラは標高800mほどで、夏は避暑にはならないが、それ以外のシーズンは良いだろう。避暑のなると最低カトマンズ(1600m)
の標高が必要。
 いっそうのこと不動産を買おうかと考えるかも知れないが、コロナ前からバブルらしい。構造的にネパールは宅地にするための平地が少ない。経済発展に伴って都市化が進みカトマンズとポカラに人口が集中したらしい。だからこの先ずっとバブルの可能性もある。
 カトマンズで泊まったホテルで宿帳を見せてもらうと、中国人とインド人で二分していた。それ以外は極まばら。インド人は街中で見てもネパール人と全く見分けがつかず分からなかったが結構来ている。インドに比べるとネパールの方がホテル・レストランのサービス内容・価格とも圧倒的に優れている。そりゃ来るだろう。

カトマンズ 旅行者が多いタメル地区の通り
 ネパールは15年振りだが、発展著しいベトナムに比べると、変化が小さい印象だ。ベトナムだと全く別の街に変貌してしまっているが、昔なつかしい光景が広がる。発展に取り残された分、物価も諸外国に比べると上昇は小さいようだ。日本と共通している。変化が小さい分、昔の日本の影響が強く残っており日本人には居心地が良い。中国の影響も中華料理屋は増えているもののそれほど強くない。
 
 残念なことにコロナ明けても外国人旅行者がまばらしか見かけない。夏はネパールにとってはシーズンオフなのでその影響があるが、それでも前回来た時に比べると余りに少ない。レストランも客が自分だけのことが多かった。もったいない。2023年4月より、国立公園内など入域許可が必要なところは、すべてのトレッカーにガイドを雇うことが義務付けられたので、それで敬遠されているのかも知れない。自由に自分の体力や好みに合わせ、現地でスケジュールを変え難くなり、かなり不便になるので影響は大きいだろう。癒しの旅がストレス・フルになってしまう。本末転倒だ。



2023年調査の準備 ー小型二輪の免許を取るー

2022-12-25 12:26:43 | 日記
2023年はタイにも行く予定にしているが、ベトナムのように50ccバイクが無く125ccからのようだ。従って自動車の免許では足りない。そのため急きょ小型二輪の免許を取った。これでタイの山々も自由自在だ。

しかし、タイ以外の大陸アジアでレンタルバイクが利用できるところは全て原付があり、タイ以外ではこの免許は役に立たなそうだ。それでも免許を取ったのはタイに期待しているからだ。当地の蝶の調査は古くから進んでおり、新種発見の可能性はほとんど無い。しかし、ベトナム、ヒマラヤの蝶との比較材料として以前より欲していた。材料は自分で採集するのが最も信頼できる。更にまとまった数が必要な場合標本商から得るのは難しい。