皆さんもご存じ、エアコンというものには、1)非インバータ型エアコン、2)インバータ型エアコン、この2タイプがございます。
そしてエアコンの広告などではたいてい、「インバータ型エアコンは非インバータ型エアコンより省エネです!」と謳われており、今や非インバータ型エアコンはもはや古いため電気料金が(メッチャ.....とは言わないまでも)高くご家庭の経済を圧迫しているはずだから、非インバータ型エアコンを使っているご家庭は一刻も早くインバータ型に変えればハッピーハッピーですよぉ〜♪みたいに印象付けて煽っている感じのものが多いと思う。
確かに相当年式の古いモデルは、非インバータ型エアコンが主流だったのは間違いなく、また今時のエアコンと比すれば電力を喰ってたのはまぎれもない事実、昭和期モデルを使っているご家庭は、それこそ今すぐにでもインバータ型エアコンに買い換えたほうが、いろいろと恩恵は多いだろう。そういう点では、エアコンの広告が言っていることは部分的に的を得ている。
一方でエアコンというものは、いわゆる「エアコン」つまり皆さんがよく目にするように、天井に近い高さに取り付けられているもの〜露出型〜だけを指しているわけではなく、お店の天井に埋め込まれているもの〜天井埋め込み型/ビルトイン/カセット型という〜や、窓に設置して使う〜いわゆるウィンドウ型〜というタイプなど実に様々な形態があり、幅広く見渡せば、業務用/家庭用問わず非インバータ型エアコンというものはいまだに存在するわけである。
で、非インバータ型エアコンは、インバータ型エアコンより、果たして「電力を喰う」というのは、本当のところどうなのだろうか?実に「電力を喰う」だけのものなのだろうか?だとしたら、どれほどのものなのだろうか?
...........これ、非インバータ型とインバータ型それぞれのエアコンのいわゆる「効率差」の問題の話で、エアコンである限り現代的なエアコンはどちらもほぼ差はないとわたし自身は考えているのであるが、エアコンの広告が煽ってるように、その辺りのポイント、ちょっと気になりませんか??わたしは、気になってます、ハイ。
というのは。このブログでも散々ご紹介してきたように、わたしの自室には、自宅を新築時に設置したDAIKIN製で冷房2.2kW能力の露出型エアコンが設置されている。
こいつのモデルは、DAIKIN "S22B1TYS-W"という。2002年製で御年22才と、それこそ年式が古く、さらに非インバータ型エアコンなんですね。
このエアコンがクラス的にどのカテゴリに属するものなのかは、古いためかネットには情報がないので分からないのだが、2.2kWクラスとしては馬力が高く制御的にもなかなか非常に優秀で、バリバリの現役、毎年の夏の季節には元気よく働いてくれて、とても助かっている。
非インバータ型エアコンとインバータ型エアコンはそれぞれ何が違うのかは皆さんで調べてください。両タイプに共通しているのは、「エアコン」と呼ぶ限り、「部屋の空気を冷房/暖房する」という根本的な機能であるが、難しいことは抜きにして、わたしが夏/冬のシーズンで使っているこの非インバータ型エアコンDAIKIN "S22B1TYS-W"は、果たして果たしてインバータ型エアコンと比べて、現実的な電気料金に直結しがちな「消費電力」にどれほどの差があるのか、弟の自室に設置の、わたしのと同じDAIKIN製2017年モデルであるインバータ型エアコンを相手に、I.フルパワーの冷房運転を行う、II.できるだけ風量をそろえる、III.吸気口と吹き出し口の温度差を測定する、IV.消費電力を測定する、これらの項目を条件として比較検証してみた。
さぁて、では非インバータ型エアコンとインバータ型エアコンの、いわゆる「効率勝負」、始めてみよう!
赤コーナー、DAIKIN "S22B1TYS-W"、冷房2.2kW、6畳用、非インバータ型、2002年製〜
青コーナー、DAIKIN "S28UTCXS-W"(弟の自室に設置のエアコンね)、冷房2.8kW、10畳用、インバータ型、2017年製〜
【ラウンド1):風量を同じにし、消費電力を測定】
赤コーナー青コーナー、まずどちらも送風で風量を揃え消費電力を測ってみる。
赤コーナーからいこう。
DAIKIN "S22B1TYS-W"。
運転モードは「送風」、風量は「強」。
消費電力は......
およそ25Wでした。
青コーナー、DAIKIN "S28UTCXS-W"。
運転モードは「送風」、風量は「5段階中4段目」。赤コーナーに揃えるため、ほぼほぼ直感でこの風量にした。
消費電力は......
なんと、おおよそ12W!.........ま、負けたぁっ!?やっぱり年式が最近のエアコンは違うなぁ....早くも技術の差を見せつけられました(>_<;)このまま「大負け」してしまうのか?
............と、そういうことは横に置く。とにかく、これらの数字から、赤コーナー/青コーナー両者の風量が現実的にほぼ揃えられているかどうかを、計算で確認してみる。
"風量と消費電力に関する正確な計算法" https://okbizcs.okwave.jp/mori.nc-net/qa/q9450529.htmlより、
P=Q*H/6120η*(1/133)=QH/46.01503η P:パワーkw、Q:風量m^3/min、H:風圧Pa、 η:ファン効率
ファン効率は、エアコンのシロッコファンの構造がどれも同一で効率もほぼ同じとすれば考慮しなくてよいとして扱う。
なんにせよ漠然と「エアコンから吹き出す風の量そのもの」の値が欲しいので、上の式から、
QH=46.01503P*[モーター効率]
赤コーナーの「風量風圧」は、
QH=46.01503×(0.025×0.35)=0.4026.... Pa・m^3/min
青コーナーの「風量風圧」は、
QH=46.01503×(0.012×0.75)=0.4141.... Pa・m^3/min
まとめ。
赤コーナーは運転モード「送風」、風量は「強」、風量風圧は0.4026Pa・m^3/min。
青コーナーは運転モード「送風」、風量は「5段階中4段目」、風量風圧は0.4141Pa・m^3/min。
それぞれの設定で、それぞれのエアコンの内部を通り過ぎる"空気量"はどちらも、ほぼほぼ揃っている、と見做すことができると分かった。
さてここで、上の二つの式で「0.35」とか「0.75」とか。これ何の数字かというとモーター効率の数字なんですね。
現在では、一般に扇風機などの送風機のモーターは大きく分けて「AC型」と「DC型」の二つが存在する。
「AC型」はずっと昔から存在するごく一般的なモーターで、効率は0.35程度と芳しくなく、総じて消費電力が大きい。一方「DC型」は今はブラシレスモーターが普及しており、その効率が0.75とAC型より高く、従って同じ仕事をさせた場合は消費電力が低い。
赤コーナー/青コーナーそれぞれのエアコンの風量を揃えようとしてそれぞれ風量を設定をし、内部を通り過ぎる"空気量"がどちらもほぼほぼ揃っていることは計算ですでに判明しているが、その際、両者の消費電力値に倍ほどの差が出たのは、赤コーナーは年式が古くAC型モーターであり、青コーナーは高効率なDC型モーターと、それぞれのモーターのタイプが違うからと考えれば、しごく当然のことだったわけであります。
よって「送風」運転は青コーナーの勝利〜。
ま、それはともかくとして、赤コーナー/青コーナーそれぞれのエアコンの内部を通り過ぎる"空気量"がどちらもほぼほぼ揃っていることは、次のラウンドで大変重要なことになってきます。
【ラウンド2):実際に冷房運転を行い、吸い込み口と吹き出し口の気温差と、消費電力を測定し、それぞれの効率を求める】
エアコンは部屋の空気を吸い込み、冷房なら空気を冷やし暖房なら空気を温めて吹き出し口から吹き出す、そうすることにより空調している。
吸い込み口の気温と吹き出し口の気温は、当然のことながら差がある。一定の空気量がエアコン内部を通って生じる気温差は一定の熱量そのものと考えることができるはずである。その熱量を発揮するのに一定の消費電力が必要なわけである。そうしてエアコンは空調という仕事をしているのである。
そこで、熱量と見做すことができるであろうこの気温差を、
この小さな気温計二つで測る。
そして、そのときの消費電力を測ってみるのである。では、やってみましょうか。
赤コーナー。
このように二つの気温計を設置して、吸い込み口と吹き出し口それぞれの気温を測る。
2024年9月19日(木)11:23、室温設定18℃で冷房運転開始。
運転が始まり、稼働状況が安定してくるまで20分程度の時間がかかる。
11:47になって、外気温30.6℃、室温28.0℃、消費電力719Wとなった。
このときの吸い込み口が、
28.5℃。
吹き出し口は......
14℃であった。
というわけで、気温差が14.5℃となった。
次、青コーナー。
このように二つの気温計を設置して、吸い込み口と吹き出し口それぞれの気温を測る。
測定した順番の都合により赤コーナーより前後するが、2024年9月19日(木)10:53、室温設定18℃で冷房運転開始。
運転が始まり、稼働状況が安定してくるまで数分程度と、わりと時間が早い。この辺り、さすがインバータ型エアコンだ。
20分ほど運転して、11:13になったら、外気温30.3℃、室温28.5℃、消費電力686Wとなった。
このときの吸い込み口が、
28.5℃。
吹き出し口は......
15℃であった。
というわけで、気温差が13.5℃となった。
まとめ。
赤コーナーは吸い込み口と吹き出し口の温度差が14.5℃、消費電力が719W、外気温が30.6℃。
青コーナーは吸い込み口と吹き出し口の温度差が13.5℃、消費電力が686W、外気温が30.3℃。
簡単にこう考えることにする。
エアコンという「機械」がある。●Wで運転中のこの機械に空気を通すとその空気の温度を■℃下げて吹き出す。→●W×エネルギー変換率=■℃。この定義に基づき、次のような式を組み立てる。
エネルギー変換率=[吸い込み口と吹き出し口の温度差]℃/[消費電力]W
計算で赤コーナー/青コーナーそれぞれの「エネルギー変換率(すなわちエアコンの効率)」を算出する。
赤コーナーの「エネルギー変換率」は、14.5/719=0.02017....
青コーナーの「エネルギー変換率」は、13.5/686=0.01968....
※ただしラウンド1で比較した「風量風圧」が青コーナーのほうがわずかに小さいことを考慮して補正をかければ、その分青コーナーのエネルギー変換率の数値はほんのわずか高くなることに注意。
むむむ〜?なんとぉ〜??
か.........勝った!?
22年選手の赤コーナー:非インバータ型エアコンの"S22B1TYS-W"が、7年前ながら高効率とされるインバータ型エアコンの"S28UTCXS-W"に、「エネルギー変換率」で勝った...............ぁ!
アア
何と言うことでしょお!勝ったよ〜〜〜〜〜!!
【まとめ】
というわけで、古くて非インバータ式のエアコン"S22B1TYS-W"と、比較的新しい世代のインバータ型エアコン"S28UTCXS-W"とでは、「どちらも効率はほとんど同じ」という事実が判明したことになりますな。
一面的にではあるけれど、「非インバータ型エアコンはインバータ型エアコンより省エネの点で劣る」とは必ずしも言い切れない、ということである。
もし仮にそうであったとしても、その差が僅差であれば、結局は使い方次第で省エネ運転はいくらでも可能性があるわけで、今使っているエアコンが非インバータ型だからと言って、省エネのためにすすんでインバータ型エアコンに更新すればいい、これまたそんな単純な話ではないのである。
ま、前述したように、例えば40年以上の前の非インバータ型エアコンだとか、明らかに化石とも呼べるような大変に古いエアコンなどであればこの限りではないのだけれど。
もちろん現実的な性能は、10畳用仕様の"S28UTCXS-W"のほうが高いのは当然で、その性能を発揮させるには、"S28UTCXS-W"の風量を「5段階中5段目」の最強に設定することで、やはり6畳用の"S22B1TYS-W"の性能を大きく引き離してしまうのは言うまでもないところだけれど、ここで問題にしているのは「効率」なので、それぞれが同じ効率を有しているものなのであれば、パワーが必要であればそれだけ電力使用量はかさんでくるし、室温維持程度のパワーであれば、条件が同じであればほぼほぼ同じ電力使用量になるし。
2000年代以降のエアコンに限っていえば、現在のところの話として、最終的には非インバータ型エアコンとインバータ型エアコンの両タイプは、効率の点においてはどちらもほとんど同じと考えていい、つまり
『非インバータ・エアコンとインバータ・エアコンの電力使用量にほとんど差はない!!』
実際に検証してみて、このページではそのことを結論として申し上げて、終わりとします。
いや〜、わたしの部屋のDAIKIN "S22B1TYS-W"、どんなもんかな〜と思ってたけど、今回のこのような検証をして、非インバータ・エアコンとインバータ・エアコンはほとんど変わらない、てなことが分かって、安心したわ〜。ある程度自信はあったんだけど、一方で本当に電力使用量がインバータ型より多めだったら、ちと困るなぁ〜と思ってたところだったのでね。あとは使い方次第だな。来年の夏は少しニーズを増やして、これからも大切にDAIKIN "S22B1TYS-W"を使っていきたい、そんなふうに思ってます♪
ここまでのご精読、どうもありがとうございました。