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明日また陽が昇るなら −カウンセラーもり あずさ(もるも)のブログ−

離別の悲しみに光を当てる -BUMP OF CHICKEN 「なないろ」 より- (2)

こんばんは。
アナタに明日への希望をお届けする「情熱の女」カウンセラー もり あずさ(もるも)です。

本日の記事は、先日書いたBUMP OF CHICKEN「なないろ」の歌詞分析の続編です。

先日は1番の歌詞を分析しまして

孤高に自分の道を生きる主人公の姿が描かれていることをお伝えしました。

本日は続く2番の歌詞についてです。

1番とは趣旨が変わって、大切な時間を過ごした恋人への思いが綴られます。

"胸の奥 君がいる場所 ここでしか会えない瞳
ずっと変わらないままだから ほっとしたり たまに目を逸らしたり"


・・・胸の奥に君がいて、そこでしか出会えない

その事実がずっと変わらない

このフレーズから、恋人はおそらくもうこの世にいないであろうことが推察されます。

この曲が、東日本大震災の津波の被災地である気仙沼を舞台にしたドラマの主題歌であることからも

震災で大切な人と死別した人たちのことを想って書かれているのでしょう。


”思い出すと寂しいけど 思い出せないと寂しい事
忘れないことしか出来ない 夜を越えて 続く僕の旅”


・・・そんな永遠に会えない人との思い出は

思い出してしまうと、もう会えないことを感じて寂しいですし

逆に思い出せなくなってしまえば

今度は会えなくなってから経った時間の長さにより

思い出が風化されることを感じて寂しくなります。

そんな矛盾に満ちた思いを抱える人にできることは

毎晩のように襲ってくる寂しさを抱えながらも

その大切な人を忘れないでいることだけ、という

残酷な現実を表しています。


そして、そんな主人公の心の中とは全く対照的に

昼間の街では陽の光が輝いていますが

そんな陽の世界にいるように見える他人たちも

自分と同じような寂しさや悲しみを抱えていることに

この主人公は気づいています。



”治らない古い傷は 無かったかのように隠す お日様が
昼間の星と同じだね 本当は キラキラ キラキラ
この街中に”


・・・主人公がずっと前から抱えている心の傷(=大切な人と離れたこと)は

陽の光が輝く表の世界では、無かったかのようにされていますが

本当はこの街中の人々が同じような心の傷を抱えており

それがまるで昼間の星のように、目には見えないだけなのだと伝えています。

こうした歌詞も、震災後大切な人を失った人々が

表面的には明るくたくましく生きているように見えているけれど

心の中では表に出せない寂しさや悲しさを抱えていることに

思いを馳せる内容になっています。


”涙の砂 散らばる銀河の中 疲れた靴でどこまでだっていける”


・・・ここでも「涙の砂」に「大切な人を失って寂しさと悲しさに明け暮れる人々」のことが

「散らばる銀河の中」に そうした人が銀河の星のごとくたくさんいることが

それぞれ表現されています。

そして「疲れた靴でどこまでだっていける」には

そんなたくさんいる人の一人である、寂しさと悲しさに暮れた主人公が

その気持ちを抱えたまま今後も生きていく決意が示されています。


”乾いて消える水たまりが それでも キラキラ キラキラ
青く揺れる”

・・・ここで1番と2番の歌詞とが繋がってきまして

1番の歌詞で出てきた、昨晩できた水たまり=悲しさ・寂しさ・辛さなどが溜まっている状況の象徴が

ポジティブな陽の光にあたり、表面的には乾いて消えて行ったけれど

それらは目に見えなくなっただけで、決して本当に消えたわけではなく

そんな苦しい環境にあってもなんとか日々を生きる人たちを称えて

キラキラ輝いていると伝えています。

ここまで来て、ようやく1番の歌詞の主人公はただ孤高に自分の道を生きている訳ではなく

大切な人を失った悲しみを抱えながらも、必死に前を向いて生きようとする人であったことが分かります。

このように、歌詞の世界では1番を読んだときに見えていたプロフィールが

2番まで読むとさらに違う側面が見えて

また1番を読み返すと深みが増す、ということがよく起こります。


そして、最後の歌詞で曲のタイトルから全ての歌詞が繋がります。


"いつか また会うよ 戻れないあの日の 七色"


・・・この世にはもういない、大切な人との思い出の日々

その日に決して戻ることはできない

そのことが「七色」=虹 という、視覚では見えるけれど実態のないものに象徴されていますし

もう会えることは無い相手のことを「いつかまた会う」と表現することで

たとえ実態としては会えなくても、心の中では繋がっていることを表現しています。

また曲のタイトルを「なないろ」と平仮名にして

歌詞の終わりを「七色」と漢字にする

そうした微妙にずれた記載を行う手法にも

「心」と「実態」とは必ずしも一致しないことが表現されています。

こんなところにも藤原基央さんのこだわりが見えますね。

こういう重層的、かつ柔らかく人々に寄り添う歌詞を書くことができる藤原基央さんは

素晴らしい作詞家だと思いました。

東日本大震災から10年が経った今

その後も私たち日本人は自然災害によって大切な人を失うことから

決して自由にはなれませんが

それでも前を向いて生きる人々を照らしてくれるこのような曲に

ひとときの癒しが得られればよいですね。

以上、BUMP OF CHICKENの「なないろ」の歌詞分析をお送りいたしました。

何かのご参考になりましたら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。
素敵な3連休を。

****
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