7/5-7/8まで、今年の秋に行われる秋田国体シンクロ競技のリハーサル大会がある為、秋田に行ってきました。
シンクロの音響って??と思われるでしょう。大まかな仕事は、シンクロは水の中で演技をするので、プールの周りと水の中にスピーカーを仕込みます。他にも、競技に使う音源出しもやります。
今回は秋田の音響さんの株式会社MACSさんに、機材手配のご協力をいただきました。ありがとうございました。
水に反射した音って、聴いた事がありますか?おそらく意図的に作った音は、聴いた事が無いと思います。
水の反射音は、不思議ときれいな音がするんです。もちろん、水面が波立ってしまうと乱反射をしてしまうので、音が変わってしまうのですが、サウンドチェックの時や朝1番に音を出した時は、とても澄んでいてクリアな音がします。使っているスピーカーはBOSE802なのですが、普段聴いているBOSEサウンドとはまた違ってくるんです。不思議と。
柔らかくもあり、透明感もあり、これって水の効果なのかな??とは思うのですが、答えには到っていません。以前、シンクロの音響をしていたPAの人曰く、「水面から僅かに蒸発している水蒸気が、空気との温度差を作って…云々。」と言うのですが、「云々」から先が難しくって良く分かりません
が、一部お互いに共通した答えは、やはり水辺と言う環境で、水に反射するという条件だからこその音だろうという事でした。あと、スピーカー自体の箱がしっかりとした作りでないと、綺麗な反射音がしないようです。
どのホールや、外の環境で音を出しても、水の音のようにはなった事がありません。不思議です。実際に、プール以外で水がある環境、例えば湖とかだとまた違う音になるのか、1度試してみたいところです。
それから、今までは「水の上」の話をしてきましたが、実は「水の中」にもスピーカーを仕込んでいるんです。
写真が水中スピーカーを水面から撮った物なのですが、プールサイドからプールの横の壁に吊るして使います。青い物がスピーカーです。宮地では、「UETAX」というメーカーを使用しています。
水の中の音も、ほとんどの方が意図的に作った環境では聴いた事が無いと思います。
しかし、水の中の音は、使用するプールによって全く違う音になります。と言うのは、まずプールの深さが関係してきます。シンクロでは最も深い所で水深3mなのですが、これが1m違うと全く音質が変わってしまいます。水中スピーカーは水の振動で音を伝えます。今回の秋田のプールは、最も深くて2mでした。1m浅いだけで低音が薄くなり、全体的に反射音も少なくなるのでこじんまりと聞こえる印象でした。
それから、プールの水槽の周りがどうなっているのかも重要なポイントになってきます。
たとえプールの水深が3mだとしても、水槽の周りが機械室や何かになっていて空洞になっていると、水の中の音がみんな周りに漏れてしまって、いくら水中スピーカーの音を上げても、水の中の音量が足りなくなってしまいます。これが毎回、苦労する所で、音量が足りないからと言ってスピーカーを沢山仕込んでも、今度は水の中でお互いに干渉し合って音を打ち消し合ってしまいます。なので、仕込むスピーカーの数と位置とスピーカーを置く深さが重要なポイントになってきます。浅ければ水圧がかからないので音量は出るのですが、そうすると下の方が音が薄くなるし、スピーカーにも負担がかかって飛びやすくなります。逆に深ければ底の方には音が行き届くけど、水面近くの音が薄くなってしまい、水面近くで演技をする時に支障が出てしまいます。位置は先に書いた通り。チェックの時に何度も位置や深さを変えて、そのプールに合った場所を探します。
また、空気中と水中とでは音の伝わる早さが違うので、水面スピーカーに合わせて水中スピーカーにディレイを掛けて遅らせます。このディレイも、ほんのわずかでもズレると選手が演技出来なくなってしまうので、慎重に合わせます。
調整は、実際に潜って聴きながら調整して行きます。だから、シンクロの音響をするには泳ぎも必要になってきます
今回のプールはあまり塩素がキツい感じが無く、柔らかい感じの水でした。東京のプールだと塩素で目が痛くなるんですけどね。
秋田は水質が軟水なのだそうです。余談ですが、日本酒も硬水で造るより、軟水で造る方が柔らかい味になるそうです。ある料理屋のご主人が教えてくれました。
だからプールも柔らかい感じだったのかな??
化学的な事は解らなくても、科学的な経験で造っていくシンクロの音響。毎回違った発見があって、まだまだ奥が深そうです。