サイレント

静かな夜の時間に

亜空間(1)

2006-11-16 02:51:46 | Weblog


始末屋として仕事に復帰した二日後、
次の仕事の話がきた。
ヤクザの捕縛だ。

ヤクザといっても、
無論この世の実世界におけるヤクザではない。
別世界における組織のことだ。

ここでヤクザという言葉を使うのは、
この世のヤクザと実態がとても似ていて、
これ以上合うような言葉がないからだが、
完全に同じかといえばそうでもない。


話は師匠がもってきた。
例によって用件を短く伝えるだけで、
詳しい事情は説明しない。

あちらの世界におけるヤクザ組織のひとつが、
ある計画を立てていたらしい。
かなり巧妙な仕掛けを用意しておいて、
相当数のこの世の人命を奪って収奪しようという、
大胆な企みだったらしい。

しかし、その計画は実行前に白日に晒された。
所轄がその動きを事前に察知し、
巧妙かつ大胆な仕掛けを潰したとのことだ。

そして所轄は、ヤクザ組織の頭領や幹部に対して、
ごく当然の成り行きとして、逮捕状を出した。
問題はここからだ。

所轄が逮捕できないでいるのだ。

異世界における、そのヤクザに相当する組織が、
強力な戦闘能力を有しており、
所轄が組織の本部に直接的に実行力を行使できず、
事実上、いまだ野放しになっている状態らしい。


私に話がきた仕事とは、
その、強力なヤクザ組織の本部に立て籠もっている、
頭領や幹部たちを逮捕することだ。

おとといの動物狩りよりも楽しそうだ。
私は無表情のまま口元を緩ませた。