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迷宮・緑柱玉の世界の独り言

迷宮・緑柱玉の世界 1章-7節  「物事の意味?!」

2020-07-26 | 迷宮・緑柱玉の世界
一之瀬先生のお宅のドアを開けると、昨日と同じように、足の踏み場も無いほどまた散らかっていました。
「またかぁ・・・」
昨日同様の散らかった部屋の意味が分かりませんでした。
「なぜ?どうして欲しいの?」
昨日の告白で、私と付き合いたいといってくださったことに間違いが無いとすれば、これは完全に見て欲しいということだと思いました。
それ以外の理由は思いつきません。
先生は、私に知って欲しいと言っていたのですから!
戸惑いや恥ずかしさがあっても、状況は変わらないのです。
2日目ともなればで、私の中に余裕が出来ていました。
アルバイト、やると決めたのですから、約束は守ります。
考えてみれば、見放題の触り放題、これ以上ないチャンスです。
好奇心をくすぐるチャンス到来と思えば、気分が明るくなります。
私は、部屋の掃除を楽しむことにしました。どうせ、ここには、私しか居ないのですもの、怒られることは無いのです。
好奇心が、じっとしていられなくなって来ました。
前の彼氏からの知識で、少しは、知っていましたが、これほど多くのものを一度に目にするのは、初めてです。
今まで、たとえ興味があっても、手にするチャンスなどありませんでした。
でも、今は、触ることも見ることも自由なのです。

「あっ、そうだ」

昨日びっくりしたクローゼットのある寝室に向かいました。
子供が、玩具箱に向かうように、心は弾んでいました。
宝探し!
私が、クローゼットと思った場所は、壁一面、収納用引き出しになっていました。
昨日は一部の引き出しに、道具をしまうために見ましたが、それ以外の何十個もある引き出しが気になっていたのです。
数個の引き出しを見るうち、すべての引き出しを見てみたくなりました。
椅子を持ってこようと振り向いたとき、ベットの上に、写真がありました。
私の顔が大きく引き伸ばされ、パネルになっていました。
これらも、明らかに隠し撮りです。
綺麗に撮れていると思いました。
私の持っているスナップ写真とは全く違う写真でした。

「ショックだなぁ」

友人はよく「あんた、ずれてる!」言います。
このときのショックも確かにずれていました。
私が感じたショックは、隠し撮りされたことではありません。
こんな私もいるんだなぁと思った事と、何気ない写真が、作られた写真のように綺麗に見える事が、ショックだったのです。その一瞬は、雑誌の中の1ページの様に素敵に仕上がっていました。
先生がプロの写真家なら、納得しますが、大学の教授です。
それに、先生に写真を撮る趣味が有るとか
多くのカメラを所有しているなんて、聞いていないし、何処にもカメラなんかありませんでした。
そして、、、
私の知らない私を先生は知っているんです。

ここに写る私は、
テーブルに頬杖をつき、目を閉じ、うつむ気加減で写っているのです。
たぶん、喫茶店でしょう、私の前には、ティーカップが写っていました。
センターのズーム
私を中心に背景などは、ぼやけている。
欲しいものをこの中に綺麗に収めています。
何気ない一場面ですが、
自分で私のそんな一瞬を見たことで、衝撃を覚えたのです。
そして、そんな写真が撮れる先生が、うらやましく思えたのです。
私には撮れない構図とチャンスです。
どうしたらそんなチャンスと構図で何気なく撮れるのだろう。
私は、以前から、自分に無い才能を持つ人に対して、強烈な嫉妬心を覚えるのです。
あの人にあって、なぜ、私には無いの?という様に、出来ない自分が悔しくて仕方ないのです。
綺麗なものわ求めるのに綺麗をたくり出せない!
美しいものを欲しがるのに美しさを作り出せない。
無い物ねだりが激しいのだと思います。
まさにこの時の感情は、綺麗な写真が撮れる先生に嫉妬していました。
ファインダー越しに素敵なものを残せる人の目には、きっと素敵なものが映っているのだと思うだけで、悔しいのです。
見ている世界が違うのなら、この目が欲しい!
私にも見たい!
先生の見る素敵な世界を私に見せて欲しい!
私は、憧れと、嫉妬心をむき出しにして、写真を眺めていました。

そこには、切り取られた私の一瞬が存在しているのです。
私が何を思っていたかなんて私でさえ忘れています。
でも、そのパネルの中の私は、頬杖をつき微笑んでいるのです。
幸せな瞬間を切り取ってくれているのです。
私は、しばらく、パネルや写真を見つめていました。
涙が頬を流れ落ちていくのを、拭うことも忘れていました。
心が騒ぐ写真です。

昨日の写真、
今日の写真
その中には、見たくないものもありました。
でも、
自分で素敵な一枚だと思うものも確かにたくさんあります。
喫茶店の一枚
「私は、こんな笑顔で笑うんだぁ・・」
公園のベンチ
「これは、何かに怒っていたのだろうなぁ・・」
大学の食堂
「やだなぁ、私って大きな口を開けて、笑うんだぁ・・」
背景が真っ白な写真
「どこ見てるんだろ?いつの写真なんだろう?」
私の知らないところで、
私は、いつも先生と一緒だったなんて、思いもしませんでした。
先生は、
写真の私を見つめていたのでしょうか?
話しかけていたのでしょうか?
想うということは、情熱なんだ!
自分が好きな人を思うときは、
心が張り裂けそうになったり
想いを伝えきれなくて
苦しむこともありますが
誰かが同じように
そんな想いをしているなんて、考えもしません。
先生が好きと言ったくれたのが真実なら
先生が思いの丈をぶつけていたとしても不思議ではありません。
その思いが、散らばった玩具や道具なのかもしれない。
私が先生を好きと返事したなら
その想いを受け止めなきゃいけないのかもしれない
そう考えると、付き合って欲しいの返事は
今の私には出来ないと感じました。
でも
バイトはしたい。
付き合わなくても、先生のそばに居たい
付き合わないけどバイトだけするなんて卑怯?
付き合わないならバイトも受けるべしではない?
複雑な心境で、また、涙が流れます
次から次へと
涙が止まりませんでした。

大きなパネルの中の私はこちらを見て微笑んで居ます。
今の私は、先生の前で、あんな素敵な笑顔をする事はできないだろうな・・
寂しく、悲しい思いが湧いてきます。

「私だって素敵な笑顔で、微笑んでいたい!」

口に出してみるとなお、悲しい。
「隠し撮りなどしなくても、言ってくだされば、幾らでも撮っていいのになぁ・・。」
 綺麗に撮っていただけるなら、喜んで撮っていただくのに・・。
 いつも最高の笑顔で、笑っていたいなぁ。」

ベットに広がっていたパネルを、壁に立てかけ並べました。 
再び掃除を始めました。

私は、楽しむことにしました。
良い子になる必要はないのです。
誰も見てないし、見て良いのです!

「私がこれを触ることを期待して広げてくれたのなら、私は遠慮なく触りますよ。」

独り言、思ったことを全て口は出して言ってみると、心が楽しくなり始めました。
何にしようか、考えました。
楽しむ!そして、一之瀬先生を驚かす。
片付けながら、あれこれ考えました。
が、出来るものがいいのです。

大人の玩具


足枷
手枷
ラバースーツ
蝋燭
口枷
マスク
昨日教えてもらった
エネマ
苦悩の梨
まで、また出てました。

私がすぐに使えるものなどそうそう有りません。
諦めかけた時、玄関にあった真っ赤な首輪を思いました。
昨日見た合成写真
首輪をした私を思い出しました。
それなら、すぐにでも出来ます。

合成写真を作るぐらいです
写真の中の私が飛び出していたら、驚くのではないかと想像しました。
首輪をした姿を望んだ時があったから
加工したんだと思うのです。
鏡に向かって、
真っ赤な首輪を首に付けてみました。

チョーカーみたい!

お洒落には見えませんでした。
服が合わないのか?
色が合わないのか?
ワンピースのボタンを2つ外し
鏡に写してみても、少しも魅力的には見えませんでした。
私には、
チョーカーの良さが理解できませんでした。チョーカーではない?
首輪?
お洒落ではない?
隠微?
首輪をする意味?
何か理由があるはずです。

分りません。
少しでも理解しようと思いましたが、無理です。

もしかして、犬?

もし、犬を求めている?
私のプライドが許さない。
小さな意地

犬は嫌!
私の知らない私
と、叫び声を上げようとしたとき、玄関のチャイムが鳴りました

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