Local-Liner ~静サツ雑記帳

静岡運転所札幌派出所=静サツへようこそ。
札幌圏の鉄道を軸に、気ままに書き連ねていく日記です。

広裕と結那の鉄道相談室 第6回 電化方式~直流?交流?

2015年03月02日 | 広裕と結那の鉄道相談室
広裕「はい、お待たせいたしました!」

結那「『広裕と結那の鉄道相談室』へようこそ! 司会の北浜結那と」

広裕「那智広裕です」

結那「このコーナーも久々だね」

広裕「1年近く空いていたんだな。その間にいろんなことがありすぎて、俺はもう……(泣)」

結那「はいはい愚痴は後で聞いてあげるから。今日のテーマは?」

広裕「本日のテーマは「電化方式」です」

結那「今の日本は電車大国だから、電化してないところの方が少ないんじゃないの?」

広裕「そうでもないんだな。JRだけだと61.81パーセント(総営業キロ19541.7km)。私鉄や第3セクターを含めても66.64パーセント(総営業キロ26916.9km)だ」
(参考:都道府県別電化率・電化種類別距離一覧(http://deadsection.image.coocan.jp/dead_sec/electrify.htm)より)

結那「あれ? 意外と低いんだ」

広裕「世界的に見れば高いほうではあるけどな。それでも、ほぼ100パーセントに近いヨーロッパ諸国(※イギリス除く)に比べたら低い」
(※イギリス除く……イギリスは主要幹線を除くと軒並み非電化で、電化率は4割弱。)

結那「JRだけでも7000km近くが非電化なんだね」

広裕「まあ、そのうち2000kmぐらいが北海道なんだけど」

結那「北海道だけだと2割いかないんだね。主要幹線の函館本線・根室本線とかほとんど電化されてないし。なんで?」

広裕「485系1500番台」
(※485系1500番台……特急車両の完成形・485系の北海道バージョンだったはずの車両。「スーパーカムイ」の前身・「いしかり」に投入された。雪対策を万全にしたはずが、試される大地初めての冬でKOされ退場。本州に逃げ帰り、他の485系に混ざって活躍した。)



クハ485-1508(新潟車両センターT18編成)は数少ない生き残り。


結那「ああ……うん、わかった気がする」

広裕「それに、今は気動車でも電車並みの性能の車両がたくさんいるからね」

結那「キハ201系とか?」
(※キハ201系……1両あたり450馬力のエンジンを2つ積んだ、日本史上たぶん最強の気動車。国鉄車両がデフォルトが180馬力/両ないし360馬力/両なので、変態気動車。特急用のキハ283系(710馬力/両)より出力が大きいってどういうことなの……?)


広裕「あれは別格だ」

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広裕「さて、電化方式には2種類あります。直流と交流です」

結那「直流と交流がなにかっていうのは……さすがにいらないよね」

広裕「それぞれのメリットとデメリットをみていくか」

結那「まずは直流から」

[直流電化]

◇メリット
・交流に比べて車両製造コストが安い。
・架線に電流を多く流せるため、頻発運転に向く。

◇デメリット
・地上設備にはお金がかかる
・変電所の設置間隔を短くしなければならない(10km前後)

広裕「直流のメリットはとにかく車両が作りやすいことが一番だな」

結那「でも、考えてみたら変だよね。家庭用の電気は交流で送ってきてるのに、電車は直流って」

広裕「それはそのまんまデメリットに繋がっている。結那も知ってるだろ? エジソンが家庭用電源に直流を使おうとしてた話は」

結那「もちろん。確かエジソンが直流で、相手のウェスティングハウスが交流を採用して、結局負けたんだよね」
(※ウェスティングハウス……アメリカの電装品メーカー。ニコラ・テスラと協力して交流モーターや交流発電を実用化した)

広裕「あれで負けた理由は、直流だと交流に比べて電圧を低くせざるをえなくて、送電線に電流を多くした結果、線の抵抗で遠くまで電気が送れなかったからだ。
これは現代の直流電化でも同じで、5~10km程度しかもたせられない」
(※電圧を低くせざるを得ない……直流で電圧変化させる方法は抵抗で消費するしかなく、増やすこともできなければ熱として捨てる電力も大きい。一方、交流ではトランスで容易に変えられられ、損失も少ない)

結那「5~10kmていうと隣町までぐらいだよね。確かに、人の住んでるところじゃないときついかも」

広裕「そんなわけで、JRでは電化が早く輸送量も大きい太平洋側を中心に採用されている。私鉄のほとんども直流電化だ」

結那「この表だけ見ると、あんまりメリットないように見えるけど」

広裕「今残ってる私鉄のほとんどは、開業初期(1900年代初頭)から直流で電化されてるケースが少ないないからな。路面電車をルーツとした私鉄も少なくない」

結那「路面電車以外で一番古いのは甲武鉄道かな?」
(※甲武鉄道……JR中央線の原型。電車化されたのは1904年、飯田橋~中野。)

広裕「なにより、東海道本線が直流になったのは大きい。これにあわせて直流電化が進んだといってもいいな」

結那「今首都圏で3000両近くの電車が走ってるのは、ひとえに直流電化のおかげかもね」

広裕「次は交流電化だ」

[交流電化]

◇メリット
・電圧を上げることができるので電力損失が少ない
・大容量送電が可能
・変電所が少なくできる

◇デメリット
・車両コストが高い(変圧器のせい)
・直流区間があるとメリットは失われる

結那「実を言えば、世界ではこっちの方が主流なんだよね。都市鉄道(市電・地下鉄)を抜くと、直流がメインの国ってロシアとかスペインとか限られるもの」

広裕「戦後に電化された国は交流が採用されているところが多い。中国なんかがいい例(25000V/50Hz)だ」

結那「電圧が上げられるっていうのは分かるんだけど、この大容量送電っていうのは?」

広裕「仮に同じ電流を流すとしたら、交流の方が電圧を上げられる分、電力(=電圧×電流)が上がるだろ? だから、大きな電力を必要とする高速鉄道とか、大出力の機関車が必要な貨物鉄道では有利なんだ」

結那「直流1500Vでも160km/h運転するフランスとかはすごいんだね」

広裕「デメリットの変圧器のせいって言うのは、例えば日本では20000Vが在来線で使われてるんだけど、実際使う時には数百ボルトだから、変圧器を車両に置かないといけない。発電所とかならいいんだけど、変圧器自体大きさがあるし、絶縁しなきゃいけないから面倒だ」
(※変圧器の大きさ……主に電圧が高いため絶縁距離をとる必要から。)

結那「交流電車とか交流機関車って、屋根回りすごいごちゃごちゃしてるよね。交直流だと、直流でもこれを積まないといけないから……めんどくさそう」

広裕「さらに言えば、電車が主体になった日本ではあんまりメリットがなかったんだ」

結那「どういうこと?」

広裕「考えてもみろ。機関車(動力集中方式)に比べたときの、電車(動力分散方式)のメリットは何だ?」

結那「それは、モーターを積んだ車両を分散させて、勾配に強くしたり軌道への負担を減らしたり……あっ」

広裕「わかっただろ? 車両コストが大きいモーター車をおおく必要とする交流電車は、直流電車に比べてかなり高くついてしまうんだ。それが嫌で気動車にしてる例だってあるんだしな」
(※気動車にしてる例……羽越本線村上~酒田では、直流/交流をまたぐため交直流用車両が必要だが、高価な交直流電車を投入できず、普通列車では気動車のキハ40系やキハE130系が担当している。他にも、送り込みをかねて函館本線では気動車が運用されている)

結那「そっか……」

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広裕「それじゃあ本番と行こうか。日本で採用されているのは下の方式だ」

・直流1500V
・直流750V
・直流600V
・交流20000V(50Hz/60Hz)
・交流25000V(50Hz/60Hz)
・三相交流600V(50Hz/60Hz)


結那「こんな狭い国になんでばらばらなの!?」

広裕「さっき言ったメリットデメリットの問題だからしょうがないだろ」

・直流1500V



代表例:223系(JR西日本)


広裕「直流1500Vは日本で最もメジャーな電化方式といってもいい。JRの直流路線は全て1500Vだし、私鉄でも大手を中心に採用されている」

結那「昔は国鉄と貨物をやりとりする会社も少なくなかったしね」

広裕「やはり東海道本線が1500Vを採用した(1924年:(東京~)横浜~国府津)のが大きいな」
(※1500Vを採用した……東京~横浜は当初1200Vで、国府津電化の際に昇圧。1956年、米原~京都の電化で全線電化達成。)

結那「ちなみに、一番最初に1500V電化をしたのは大阪鉄道(現在の近鉄南大阪線とか)です」

・直流750/600V

代表例:札幌市営地下鉄5000形(第三軌条750V)


広裕「直流だと、他に600Vや750Vが見られます」

結那「600Vは路面電車が採用してるね。路面電車がルーツの江ノ島電鉄や静岡鉄道なども600Vです。ていっても、750Vや1500Vに昇圧したところが多いから少ないんだけどね」

広裕「変わった例だと、伊予鉄道の高浜線が路面電車と交わる関係で600Vになっている」
(※路面電車と交わる……大手町駅と古町駅の2ヵ所で交わる。平面交差のため架線も重なり、同じ電圧にせざるをえない。過去には京都市電と京阪の例もあった。)

結那「600Vはわかるとして、750Vってすごく中途半端じゃない?」

広裕「なんでも、戦前の回転変流機は800V以上だと安定しなかったみたいで、安定していた600Vや750Vが採用されたらしい」
(※回転変流機……交流から直流に変換する機械の一つ。モーターに似た構造を持つが、電動機を利用した変換より効率がよかった。)

結那「第三軌条を採用しているところは600Vか750Vかだね。写真の札幌市営地下鉄南北線も750Vだよ」

広裕「手の届く位置で1500Vとか流れてたら怖いよね」

結那「どのみち触ったら感電するに決まってるでしょ」

・交流20000V(50Hz/60Hz)



代表例:711系(50Hz)


結那「交流も種類があるんだよね」

広裕「架空電車線方式だけでも、電圧が2種類、周波数が2種類だ。世界的に見ても、交流だけでここまで方式が揃ってないのは日本ぐらいじゃないかな」
(※架空電車線方式……架線集電。架線とパンタグラフから電気をとる。一般的な電車や電気機関車はこれ。)

結那「周波数は商用周波数にあってるから仕方ないとして、電圧ぐらいはそろえたらよかったんじゃない?」
(※商用周波数……送電で使われる周波数のこと。東日本が50Hz、西日本が60Hzで、鉄道もそれに合わせて分布)

広裕「それが、国鉄(JR)の在来線の場合、直流電化の1500Vを得る時に使ってた交流が20000Vで、それを使いまわしただけという……で、世界的に見て標準の25000Vがあとから入ってきたんだ」

結那「国鉄らしいといえばらしいけど……」

広裕「ともあれ、仙山線からスタートした交流電化は主に地方で採用されて、北海道・東北・北陸・九州の在来線が交流20000Vとなっています。設備コストが低い分、輸送量が多くない路線には向いているしね」
(※仙山線……仙台~山形を結ぶ仙山線は、当初トンネル区間の作並~山寺が直流電化だった。その後全線交流となっている)

結那「北陸なんて西と東を直流で挟まれて陸の孤島だよ……米原~敦賀も直流になっちゃったし」
(※陸の孤島……北陸本線糸魚川~敦賀が交流。東は上越線や信越本線と繋がるため、西は東海道本線と繋がるため直流となったため、交流の陸の孤島と化した。)

広裕「さらに七尾線もいるぞ」
(※七尾線……1991年に電化。交流だと電圧が高いため架線上の絶縁距離をとる必要があるが、天井川をくぐる背の低いトンネルでは絶縁距離を確保できず、北陸において直流となった)

結那「私鉄だと阿武隈急行とつくばエクスプレス(TX)しかいないんだね」
(※阿武隈急行……元国鉄丸森線を引き継ぎ・延長した第三セクター。丸森線時代は非電化で、JR乗り入れを考慮して交流電化となった。)

広裕「いずれも必要に迫られてだから、車両コストがいかに高いかが分かるな」

結那「地磁気観測所がなかったら、つくばエクスプレスも全部直流だっただろうしね」
(※地磁気観測所……茨城県石岡市柿岡にある、気象庁直属の施設。直流電化は観測に影響を与えるとして、半径30km内の電化鉄道(常磐線・水戸線・TX)は全て交流。なお、方法次第では直流電化もできる。)

広裕「都内に地下区間がある関係で都心部は直流になったけど、ドイツみたいに地下でも交流な例はあるからできなかったわけではないんだよね」

・交流25000V(50Hz/60Hz)



代表例:E2系(0番台は50Hz/60Hz、1000番台は50Hzのみ対応)


結那「新幹線で採用されているのが交流25000V。ヨーロッパでは一般的で、東海道新幹線から高速化のために25000Vを始めました」
(※ヨーロッパでは~……例外的に、交流電化が20世紀前半から始まったドイツ近辺では、11500V/16.7Hzという低電圧・低周波数が採用されている。)

広裕「以来新幹線は25000Vで統一されています」

結那「50Hzと60Hzをまたぐ新幹線は北陸新幹線だけです。それだけじゃなくて碓氷峠の急勾配もあるから、新幹線的には今でも難所なんだね」
(※碓氷峠の急勾配……在来線の66.7パーミルからは緩和されたものの、30パーミルの急勾配が続く。)

広裕「ちなみに、東海道新幹線は商用周波数が50Hzの富士川以東でも60Hzとなっています。しかも、わざわざ50Hzの電気を変電所まで持ってきた後、60Hzに直しています。60Hzのところから買えばいいのに」

結那「そこは買電場所の問題なんだって」

・三相交流600V(50Hz/60Hz)



代表例:大阪市交通局100A系(60Hz)


結那「この三相交流って言うのは?」

広裕「一般に言われる交流が単相交流っていうんだけど、三相交流は文字通り3つの位相がずれた交流を3本の電線で送る方法だ。家庭用の電気はこの三相交流で送られている」

結那「3本も同じ電気を流すって……意味あるの?」

広裕「この位相を均等(120度)にしてあげると、3本の和は0になるんだ。つまり、普通の交流が2本の電線で1組にする必要がある(※)のに対して、三相交流は3本の電線で3つを送電に使えるから効率がいいんだよ」
(※:発電所から来る電気と、戻る電気(これが通る線を帰線と呼ぶ)用に2本必要)

結那「でも、3本もあったらどうやって電気取るの? パンタグラフ? 日本じゃ見たことないけど」

広裕「スイスみたいに架線式の三相交流のところもあるけれど、なんせ車両に3つパンタグラフが必要なわけで、ほとんど採用例がない」

結那「じゃあ、どこで使われてるの?」

広裕「写真の大阪市南港ポートタウン線はじめ、新交通では三相交流が使われている。ガイドウェイに給電線路が引いて、そこから電気を取っている」
(※新交通……本来はモノレールなども含む言葉だが、日本ではAGT(「ゆりかもめ」「ポートライナー」などのガイドウェイ式中量輸送交通)をさすことが多い)

結那「そっか。側面から電気を取る(※)から3本線があっても問題ないし、送電線から電圧を下げるだけでいい三相交流が向いてるんだね」
(※:AGTでは唯一、山万(直流750V)は軌道中央から取る)

広裕「まあそういうことだな。新交通ってあんまり儲からないみたいだけど」

結那「ピーチライナーとか……」
(※:ピーチライナー……愛知県小牧市にあった桃花台新交通のこと。1991年に開業するも一度も黒字になることなく2006年に廃止された。)

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広裕「ということで、日本の電化方式を見てきましたが、いかがでしたでしょうか」

結那「本当はデッドセクションの話とかしなきゃいけなかったんだけどね。今回はここでおしまいです」

広裕「交交セクションとかの話もあるから、次に持ち越しだなこれは」

結那「計画性なさすぎでしょ」

広裕「結那、それはいっちゃいけないお約束だ」

結那「以上、『広裕と結那の鉄道相談室』でした!」


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