四十年近く前になるのかな。その頃住んでいた団地の最上階から、飛び降り自殺を図った男がいた。団地は十三階建てだったのでもちろん即死で、あたりには血糊など体内の諸々が散らばっており、落ちた場所には塩が撒かれていた。
男は市外に住む人間で、その当時団地に住んでいた人たちとは、縁もゆかりもない人だった。それだけでも充分迷惑な話だが、何と彼は今、その付近を霊となって漂っているというのだ。どれだけ人に迷惑をかけたらすむのだろう。
そういう奴だから、生きていた時にも、かなり人に迷惑をかけていたと思われる。だから供養もしてもらえないのだろう。
いったい閻魔様は、誰からも供養してもらえない彼のような迷惑野郎に、どういう罰を下しているのだろうか。街の中を浮遊させるのは迷惑至極、道路の脇に座らせるのも迷惑千万である。早くあの世に引き取って、二度とこの世に出さないでもらいたい。