吹く風ネット

1976年の日記を読んで(後)

 そんなある日のこと、大きな固まりが顔を見せた。それを見てぼくは、「これが親だ」と思った。
「こいつを退治すれば、他の虫も自ずといなくなるだろう」

 そこでぼくは、爪を立てて、その親を無理矢理絞り出した。すごく大きく、長い虫(脂肪)だった。
そんな大きなのを見たことがなかったので、感心しながら、それを見ていた。
 ところが、その脂肪が取れた跡から血が流れてきたのだ。いちおうは患部を洗っておいたのだが、そこを消毒したり薬を塗ったりすることもなく、そのまま放っておいた。

 その翌日のことだった。朝起きると、鼻が真っ赤に腫れ上がっているではないか。おそらく穴の中に、ばい菌が入ってきたのだろう。それを見てぼくは、初めてことの重大さに気づいた。慌ててオロナインを塗ったのだが、すべては後の祭である。腫れが引くまでに3週間、鼻の赤みが取れるまでに3ヶ月もかかってしまった。

 まだその腫れが引いてなかったことのことだったが、用があって高校に行かなければならないことがあった。
「これは困った。知った先生とか後輩に会うと面倒だ」
 そこでぼくは帽子を深くかぶって、学校に行った。

 ところが、ぼくが学校の事務所の前に立っていた時、運悪くそこに1年の時の担任がやってきたのだ。

「おう、しんたやないか」
「あっ、こんにちは」
「何しに来たんか?」
「卒業証明書がいるようになったんで、もらいに来たんです」
「そうか。ん?おまえその鼻どうしたんか?」
「‥‥。いじっていたらこうなったんです」
「アホかおまえは。むやみに鼻なんかいじったらだめやろうが」
「‥‥」
「病院行ったほうがいいぞ」
「えっ、そんなに悪いんですか?」
「放っておいたら、一生その鼻は治らんぞ」
「えーっ?」

 こんな赤く腫れ上がった鼻で、一生過ごすなんてまっぴらである。とはいえ、病院に行く気はさらさらない。そこで、家に帰って、まるでドーランのごとくに、オロナインを塗りたくった。
 それがよかったのか、それから何日かたって、ようやく腫れは引いた。少しホッとしたものだった。

 それ以来、ぼくは鼻を触ることはなくなった。それに懲りず、そんなことを続けていたとしたら、それこそぼくは終わっていただろう。

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