吹く風ネット

20歳の頃(イメージの詩が流れていた)

少し遅れてから外に出ると
パラパラと雨が降っていた。
ちょうど公園にさしかかった時
パトカーが止まっているのが見えた。
数年前は学生運動の取り締まりで
いつも数台止まっていたのだが、
今はすっかり暇になって
たった一台しか止まってない。
これも時代の移り変わりなのか。

雨のしたたる公園では
ビデオコンサートをやっていた。
傘をさした数人の人たちが
吉田拓郎やかぐや姫などの
フォークライブの模様を見ていた。
やっていた曲は『イメージの詩』
数年前ならたとえ雨が降っていても
この公園を多くの人が埋め尽くし
この曲に歓声を上げたことだろう。

この情景を見た時
ぼくは青春が終わったと思った。
そのとたん涙が出てきた。
別に悲しい涙ではなかった。
決して辛い涙ではなかった。
もちろん悔しい涙でもなかった。
何が何だかわからない涙が
サーッとぼくの頬を伝って消えていった。
『イメージの詩』はまだ流れていた。

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