現在は駅の横にバスターミナルができ、そこから駅のデッキまでは、エスカレーターやエレベーターで行けるようになっているが、当時バス停と駅の間にはチンチン電車の線路があり、バスを降りて駅に行くためには、歩道橋を利用して、その線路を越えなければならなかった。
歩道橋を上って下りて、さらに20メートルほど行って駅の入口に着く。そこから改札を抜け、また階段を上り下りして、ようやくホームに出たのだ。つまり階段を二度上り下りしなければならないわけだ。
9月のある日、ぼくはいつものようにバスから降りて、黒崎駅に向かった。
相変わらずの渋滞である。バスが着いたのは、電車発車の2分前だった。そこからダッシュだ。
いつものように、歩道橋の階段を駆け上がり、下りようとした。その時だった。なぜか足がもつれてしまい、歩道橋の手すりに頭をぶつけてしまった。かなり痛かった。しかし、時間がない。ぼくは体勢を整え、走って駅に向かった。
改札を抜け、駅の階段を駆け上がった時、無情にも電車は発車してしまった。
「あーあ、遅刻やん。どうしよう?」
しかし、考えても他に手段はない。しかたなく次の電車を待つことにした。
電車を待っているとき、先程ぶつけた頭が痛いのに気がついた。電車に乗り遅れたことで忘れていたのだ。
「きっとたんこぶが出来てるだろうな」と、頭に手を持っていこうとした。その瞬間、首筋がヒヤッとした。
「どうしたんだろう?」と触ってみると、なんと手に血がべっとりとついているではないか。
「頭ぶつけた時に切ったのかなあ?でも頭の傷は大げさだから、すぐに治るだろう」と、ぼくは気にしないことにした。
数分後に電車が来た。席は充分に開いていたが、ぼくは座らずに立っていた。もし首筋の血を人に見られたら、救急車で病院に運ばれてしまうと思ったからだ。
そんな状況でも「これで遅刻の言い訳ができる」と喜んでいる自分がいた。さらに「これで笑いが取れるなあ」などと馬鹿なことを考えていた。
最新の画像もっと見る
最近の「日記」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- 日記(723)
- もう一つの日記(1)
- ぶるうす(253)
- 思い出(28)
- 過去の日記(181)
- 言葉をつま弾く(29)
- 詩風録(13)
- 街風景(0)
- 夢見録(0)
- 吟遊(0)
- 生活(3)
- 事件簿(0)
- 飲食ネタ(1)
- 頑張る40代!(0)
- 健康一番(6)
- 備忘録(0)
- ローカルな話(1)
- 聴き歩き(1)
- スポーツ(0)
- 仕事の話(3)
- HP・PC・携帯(0)
- 想い出の扉(4)
- 中学時代(0)
- 高校時代(0)
- 浪人時代(0)
- 東京時代(0)
- 旅行記(0)
- 吹く風録(0)
- 筋向かいの人たち(0)
- 嫁ブー(0)
- ヒロミちゃん(1)
- 甘栗ちゃん(0)
- タマコ(0)
- 酔っ払いブギ(16)
- 歌のおにいさん(0)
- たまに人生を語る(0)
- 延命十句観音経霊験記(0)
- 霊異記(1)
- 携帯写真館(0)
- 本・読書(0)
- 歳時記(0)
- テレビ・芸能(1)
- 動物録(3)
- 時事・歴史(0)
- がらけろく(27)
- しゃめがら(1)
- 自戒(1)
- モノラル(2)
- 入院日記(0)
- リライト(51)
- 履歴書(0)
バックナンバー
人気記事