いつもの休日
男は、中古カメラ店のショーケースをのぞきこんでいた
「う~ん・・・・。ちょっと高いかな」
懐具合が心細いのか、男はそうつぶやきながら、その店を後にした
そろそろ、日没の時間が近づいているようで、あたりは薄暮れに包まれようとしている
男は使い込まれた、ショルダーバックから、いつも使っているデジタル一眼レフを取り出しながらつぶやいた
「せっかくココまで出てきたんやし、法善寺横町にでも行ってみるか・・・」
夕暮れ時は、男にとって一番好きな時間だった
明るすぎず、暗すぎず、漆黒前の深い紺色の空が特にお気に入りなのだ
それに、蛍光灯の照明もあんまり好きじゃない、白熱電球に照らされた赤っぽい感じを特に好んだ
人混みをすり抜けて、男は法善寺横町にたどり着いた
「おっ!エエ感じやなぁ・・・・」男はつぶやきながら、カメラを構えて無心にシャッターを切った
35mmF2.0 男はこの単焦点レンズが、至って気に入っていた
「もう少し、歩いてみるかな・・・」
おとこは、ブラブラと歩き出した
もちろん、そこはいつも男がウロつく場所だ
見慣れた景色を目で追いながら、水掛不動尊の有る横町に入ろうとして、男は声を漏らした
「あれっ?」
そこには、見慣れない景色が・・・・
いや、そうじゃない、この景色はずーっと昔に見た覚えがあった
「ど、どうなんてるねん?」
男は、狼狽しながらもシャッターを切った
数枚のシャッターを切りながら、胸の底から沸々とわき上がってくる何かに気が付いた
「あぁそうか・・・」
ここは、男が幼い頃、父母に手を引かれて歩いたあの街並みじゃないのか?
男は確信した
何かの弾みで、過去の世界に紛れ込んでしまったのだ
男は元の世界に戻れるのだろうか・・・・・