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大怪獣オチラ 壱

2007年09月25日 | 大怪獣 オチラ(全六話完結)
 それが最初に姿を現したのは昨年の夏、アメリカ合衆国ノースダコタ州のある町だった。突然、町全体を揺るがす地震が起こり、町郊外に大きな地割れが出来、そこから地響きをたてながら、のっしのっしと現れた。
 ティラノサウルスを二廻り以上大きくしたような巨体、見るからに獰猛そうな顔、黒光りしたぶ厚い皮膚、空に向かって爆発音の様な咆哮を上げると、地面に深い足跡を刻みながら真っ直ぐに町へと向かった。
 地震が起こっただけでも町はパニックに陥っていたのに、もの凄い咆哮を上げながら近付いてくるそれに、全く為す術がなかった。只1人保安官が「ここはオレの町だ!」と叫び、ショットガンを撃ちながら向かって行ったが、傷一つ付けることも出来ず、反対に踏みつけられ、ぺしゃんこになってしまった。それはその後、町を徹底的に破壊し、住人の大半を踏み潰し、握り潰し、噛み潰し、再び地割れの中へと戻って行った。
 かろうじて生き残った住人たちの証言を総合し、怪獣と認定され、名は日本の某映画に因んで「オチラ」と名付けられた。
 オチラが出現する前には必ず大きな地震があり、地割れがおき、そしてそこから現れた。しかも、どこにでも出現した。今日モスクワ近郊に現れたかと思うと、翌日にはメルボルンに現れた。また、何日も続けて現れたかと思うと。ぱったりと数ヶ月も姿を現さなかった。つまり、出現場所も出現時間も予測が出来ない状態だったのだ。
 人類はオチラに対して全く無力だった。


次回「大怪獣オチラ 弐」を刮目して待て!

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