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ヨーロッパって、危険?

2017年01月15日 | 日記
年末、日本に一時帰国している際、
テレビの情報番組で、ベルリンのテロリズムのことを扱っているのを見ました。
司会者が言っていました。
「昔は欧州といえば、憧れの場所だったけれど、今、欧州とは『怖い場所』になってしまいましたね。」

また、日本滞在時には、欧州生活に関して経験や関わりを持ったことのない方々に、よく言われます。
「ヨーロッパで高校生を生活させて、テロの危険はないの?」

これらのような感慨は、日本で暮らす人々にとっては、ごく一般的なものかも知れません。報道される情報を見ている限り、欧州とは「テロによる危険度の高い地域」と思えるのは無理からぬところです。

しかし、人生の3分の1の時間を欧州に身を置いて過ごしている人間から、ひと言いわせいただきたいのです。「欧州はテロで危険」という印象を持つ前にみなさんに考えて欲しいと思っています。

2016年1年間の
欧州でのテロによる死亡者数
日本の交通事故死亡者数
米国の銃犯罪死亡被害者数
に関して、それぞれの数値と対象になる全人口(概数)をあげてみます。

欧州のテロによる死亡者数/EUの人口
2016年3月22日 ベルギー 28名
2016年6月13日 フランス 2名
2016年7月14日 フランス 84名
2016年7月26日 フランス 1名
2016年12月19日 ドイツ 12名
合計127名①/約5億820万人②

日本の交通事故死亡者数/日本の人口
3904人③/約1億2700万人④

米国の銃による殺人事件の被害者数/米国の人口
15023人⑤/約3億2500万人⑥

私が言いたいのは、
「欧州で暮らしていて、テロの被害で死亡する確率は、日本で交通事故に遭って死亡したり、米国において銃で撃たれたりして死亡する確率の100分の1以下である」
ということです。計算してみると、米国で銃犯罪の被害に遭って死亡する確率は約2万人に1人、日本で交通事故で死亡する確率は約3万人に1人、欧州でテロの被害に遭って命を落とす確率は約500万人に1人、ということになります。

確かにテロの被害は衝撃的に報道されます。ISIS の狂信思想が世界に蔓延することに世界が警戒していることは、私も否定しません。
しかし「欧州は怖い」と思う前に考えて欲しいのです。
「テロを恐れて、欧州への渡航を控える」
という行動判断は、テロリスト達の思う壺です。自らの身を守る、という意識は私にもありますが、しかし少し角度を変えてみれば、テロリストを利する行動を取ることは、巡り巡って「自らの身を害する」ことにつながるのではないでしょうか。大切なのは、融和と行動を、世界が志すことです。私たちにできるのは、冷静にものごとを見つめ、志に基づいた行動を取ることなのではないでしょうか。
その土地のこと、その文化、人々を真に理解するには、その土地に赴き、直にその土地の文化に触れ、人々と触れ合うこと以上の近道はありません。
欧州を理解し、ひいては世界を理解するために必要なのは志と行動なのだと考えるのです。
そして私たちひとりひとりが、世界を正しく理解することこそが、世界を脅かす暴力主義の根絶につながるのだと信じます。

まして、スイスの治安の良さは欧州では他の群を抜きます。
さらにスキーリゾートの山奥の村、レザンでの暮らしは、今どきの日本の都会よりもむしろ安全なのではないかとすら思います。

スイス・レザンは、私が初めて訪れた16年前と変わらず、今日も、いつも平和です。



参考サイト
① 公安調査庁:世界のテロ等発生状況
② 外務省:欧州連合 概況
③ 警察庁:平成28年中の交通事故死者数について
④ 総務省統計局:人口推計、平成28年12月報
⑤ Gun Violence Archive
⑥ World Meters U.S. Population