セッション

Session 

Chapter 11

2008-05-05 17:13:24 | Weblog

ありゃ城塞か? 哲郎が呟いた。
どうやら城塞っぽいな、連太郎も頷いた。
二人は敵情視察に来ている。
身を隠しながら。少し離れた所から。

これはちと面倒なことになった、
ものの数日で片付くことじゃない、
哲郎はボヤいてみせた。

あの中には軍勢が詰めてるんだろうな、
外壁を突破してもきっと苦労するぞ、
連太郎は溜息をついた。

ん?
二人はほぼ同時に感づいた。

おい、見つかってるぞ、と哲郎。
ああ、もう囲まれてるな、と連太郎。



Chapter 12

2008-05-05 17:12:39 | Weblog

こいつぁ仕方ねぇ、哲郎はニヤリとした。
いっちょヤルしかないな、連太郎も頬を緩めた。

二人は表だって姿を現すと。
その場ですばやく臨戦態勢に入った。
周囲には数百程度は敵がいる。

哲郎と連太郎の二人は、
お互い少し離れた位置に仁王立ちしていた。
取り囲んでいた敵兵たちが一斉に襲いかかった。

距離を詰めるために全速で迫ってきた敵兵に、
大きな変化が起こった。敵兵全員に。

彼らの動きが急に、
ハエが止まるかのような遅いものとなった。
まるでスローモーションのように。
対照的に、哲郎と連太郎は普通に動けている。

二人はあたかも、
動かない人形たちを倒すかのように、
次々と敵兵を攻撃していった。

敵兵からみると、二人の動きは、
目にも止まらないスピードに感じられた。



Chapter 13

2008-05-05 17:11:44 | Weblog

ほとんど音速に近いのではないかという、
凄まじい速さで敵を倒しまくっていた、
哲郎と連太郎の二人は、
急に、あるイメージを脳内でキャッチした。

入浴するために衣服を脱いだマチ子の姿である。

マチ子は、入浴やそれに準ずる状況ではいつも、
他人に覗かれないように煙幕を張っていた。
一年中。毎日。

ただ、煙幕をうっかり張り忘れることが、
年に数回ある。わずかに年に数回。

哲郎と連太郎は、
その年に数回のわずかなチャンスを、
決して逃さないようにしていた。常日頃。

二人は敵兵たちの前から瞬時に消えた。
こうなったら戦っているどころではない。

しばらくして戦場から離脱した哲郎と連太郎は、
マチ子の雷撃で黒コゲにされて横たわることになる。



Chapter 14

2008-05-05 17:10:45 | Weblog

あんたたちバッカじゃないの!
マチ子は激怒していた。
哲郎と連太郎はいかにもバツが悪そうだ。

仕事の最中に人の風呂を覗きに来るなんて!
二人とも今度一回死んでみる?
マチ子の激昂は収まらない。

最大の敵は自分自身、康晴がボソッとこぼした。
不潔ぅ~! もう最っ低! ナオミが責めた。

ダハハ、全く男ってヤツぁ、ダッハハハ、
円楽の笑い声は今日も明るい。



Chapter 15

2008-05-05 17:10:02 | Weblog

ギイは訝しんでいた。
ついに現れたあの二人が何故か消えた。
戦闘を途中で放り出すかのように。

まさか、気付いたのだろうか、
こちらが用意していた罠のことを、
ギイは不安に駆られた。

そんなバカな、ありえない、
ギイは自らが敵として選んだ二人の能力に対し、
底知れぬ不気味さと、同時に畏怖を覚えた。



Chapter 16

2008-05-05 17:08:58 | Weblog

しばらく膠着状態が続いた。
ギイの軍勢は城塞から出ることはなく、
哲郎たちも静観していた。

正直にいえば、
哲郎たちはうかつに拙攻するよりは、
じっくりと機を窺うという構えだった。

哲郎と連太郎はある日、
ナオミに城塞の中の遠視を指示した。
遠視は、仲間内でナオミが最も得意としていたのだが、
まだ若いナオミの起用をマチ子が反対していた。

哲郎はマチ子の反対を押し切って、
最年少のナオミを参加させることにした。

城塞の外部には中々スキが見当たらないため、
内部の状況を探索しつつ同時に工作できないか、
哲郎は画策していた。

ナオミは遠視を始めた。
すぐ隣で連太郎が少し心配そうにしている。



Chapter 17

2008-05-05 17:08:04 | Weblog

ナオミはしばらくは黙っていたが、
やがてゆっくりと中の様子を話し出した。

城塞の内部には、
無数の大軍がひしめいており、火砲も多数、
そして指揮を取っている指揮官がいる、
ナオミは哲郎と連太郎に遠視の内容を教えた。

ギイではない、
内部の指揮官はギイでない、違う誰か、
ナオミは驚くべきことを口にした。

ギイはどこにもいない、
少なくとも城塞の内部には、
ナオミは念を押すようにありのまま言葉にした。

何? ギイがいないだと?
哲郎は吃驚した。



Chapter 18

2008-05-05 17:07:11 | Weblog

あ!
ナオミは急に動揺した。

どうした?
連太郎が動揺の理由を問う。

ちょっとマズいかも、
ナオミは眉をひそめた。

ちなみにナオミの眉をひそめた苦しそうな表情は、
後に、日本の多くの男たちの、
倒錯した情欲を掻き立てることになる。

はっきりいえよ、どうしたんだ?
連太郎がナオミの美しい瞳を覗いた。

なんか、誰かに逆探知されたみたい、
ナオミは泣きそうな顔になった。



Chapter 19

2008-05-05 17:06:25 | Weblog

キューバ危機。

アメリカの近隣国であるキューバに、
ソビエトが核ミサイルを配備したことにより、
アメリカとソビエトとが、
全面核戦争の一歩手前まで迫ってしまった事件。

振り返ってみれば、第二次世界大戦以降では、
人類最大の危機だった。

1962年10月15日から13日間、
東西冷戦は、悪夢的なまでに頂点を迎えた。



Chapter 20

2008-05-05 17:00:21 | Weblog

哲郎、連太郎、康晴、円楽、彬の五人が、
集まって討議をしていた。

敵方の誰かに逆探知されたであろうナオミを、
今後どのように守っていくべきか。

おそらくはキューバに現世干渉しているであろう、
敵方の城塞内部の軍勢をどう無効化すべきか。

城塞の中にいないギイは、
何を考え、何を狙っているのか。

丸メガネの奥で鋭い眼光を放つ康晴の頭脳が、
ここでついに本領を発揮するのである。