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seanの映画の部屋へようこそ。

「おまえうまそうだな」

2010-10-17 | 過去に観た映画
原作の絵本シリーズは(またもや)まったく知らなかった。
劇場予告で観た時もそれほど惹かれるものがなかった。
ところが、観始めてすぐに胸がつまりはじめ、、後半では
半べそ状態。そして無性に息子に逢いたくなってしまった^^;
いい話である。画にもストーリーにもこれといった特異性は
なにもないのに、ものすごく訴えかけてくるものがある。

かな~り昔に、「まんが日本昔話」なるアニメがあったが、
あのテイストを生かしつつ、軽快な音楽と、今風にドライな
感性を持ち合わせた展開に、いつの世も変わることのない
家族愛をふんだんに織り込んだ物語である。文化庁とかが
大推薦しそうな子供教育に適した話でもあるが、それより
「こういうのを観たかったんだよ」と思うお父さんお母さんに
大絶賛される物語であるに違いない。自分が生まれてから、
今までどれだけの愛と恩恵を受けてきたか考えさせられる。

物語はいたって単純である。
草食恐竜のお母さんがある日、流されてきた卵を拾う。
自分の卵と一緒に温めて孵したところ、それは自分達を
やがて食べるであろう肉食恐竜の赤ちゃんであった。
当然仲間から猛反発を食らい、遠くへ捨てに行くのだが、
自分を追って泣く子供の声に逆らえず、育てることに…。
仲間からは離れ、自身の子供と兄弟として育て始めるが、
食べる物の好みが違くなってくる。ある日森を出て平原に
出た肉食恐竜・ハートは群れに出逢い肉の美味しさを知る。
かくしてハートは、母と兄・ライトの元を去っていく…。
時は流れ、群れの無法者として名を馳せるハートの前に
草食恐竜の卵が転がり、中から可愛い子供が生まれてくる。
「おまえ、うまそうだな。」と声をかけたハートを自分の父親
だと勘違いした赤ん坊のウマソウ^^;は、彼を追いかけるが…

そして、歴史は繰り返される。
自分の母親が自身にしてくれたことを、ハートはウマソウに
できるのだろうか。何しろどう見ても彼は餌に違いないのだ。
小さくて、可愛くて、自分をこれでもかと慕ってくるけれど、
相容れない者同士であることに違いない。そこをどうするか。
やがてハートは、ウマソウを捨てることを決意するが…。

それぞれの想いがグングン伝わる中盤以降、泣けて泣けて
どうしようもなかった。必死で守ろうとする父親と、意地でも
ついて行こうとする子供。声優陣がまた、巧い^^;プロに交り、
加藤清史郎くんがウマソウの声を演っているが、なんだ?と
思うほど巧い。彼は冒頭からずっとハートを父親だと信じて
ついてきたのだと思っていたが後半、アッサリと覆される。
たくましく育ってほしい^^;とハムのCMで言われていたのは
こんな子供の成長過程を意味していたのかvなんて感無量。
お父さん方、こんな息子に育ってくれたら…嬉しいよねぇ(T_T)

お母さん役・原田知世、バクー役・別所哲也も巧かったが、
他の声優や随所に流れる音楽にしても、かなりのプロ仕様。
…絵本はもっとほんわかとしているのだろうか。
食う食われるの生存競争の描き方もリアルで容赦ないが、
生きていくために必要なものは食べ物と、あと何だったかを
薄れてしまった記憶の中に再発見し今一度家族の在り方を
考えさせようと観客に問いかける力作である。

(自分を愛し、育ててくれた親を、子供は絶対に忘れない。)

★★★★★

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8 コメント

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Unknown (ポアポア)
2010-10-23 21:15:53
観たいの!!
観たいのよ!
やってるのよっ!
でも、まだ、観れていないの。
終わる前に、絶対見るよ!v
きっと、すごく涙が流れる気がするけど・・・苦笑
返信する
ポアポアさん♪ (sean)
2010-10-25 20:32:44
これ、タダの今のうちに(爆)もっかい観ようかな…と。
自分にとってすごくいい教訓になった気がするの^^;
こういう作品、もっと増やして欲しいですねv

ポアポアさんもぜひぜひ♪
返信する
おまえうまそうだなで興味深く感想やコメントを見たので意見を言います。 ()
2012-12-28 22:13:24
絵本の読み聞かせやどこかの会館や図書館で映画の上映が比較的最近にあったというのは聞きました。そして、この記事やコメントを読んで興味深いと思いました。

裏事情なんて知ったこっちゃないと思う人もいますが、作者のインタビューとスタッフのインタビューもあったので意見を言いたいと思います。迷惑でしたらすみません。

映画版はコンセプトとか宣伝を見てると「元々は綺麗事たっぷりでやるつもりだったのか」「単純なお涙頂戴にするつもりだったのか」とすら思いました。原作者の宮西達也さんが映画のキャラクター、編集、企画会議すべて出席し「絵本のコピーはしないでください」と頼んでたり、絵柄も映画版だともっと丸っこくなってるのでそう思います。
宮西達也さんのインタビュー http://www.netdetirasi.co.jp/cinema/interview/059.php
http://mi-te.jp/contents/cafe/1-9-742/

映画版は、作者の方が企画会議にも参加して「原作と違うもの」と意見を言った事から、割と最初から原作とは違う物になる事が決まってたようです。少なくともセールス側にとっては、これはありがたいと思ったかもしれません。「原作と違うもの」って頼まれた以上、原作よりもキャッチーさを優先するという余地も出来たのですから。

でも実際にスタッフにとっては、上層部の考えはそれほど本意じゃなかったってのもあながち間違ってないのかもしれません。
http://photozou.jp/photo/photo_only/2860818/156276493のインタビュー(アニメージュ2011年8月号にあった)でスタッフの発言が少なからずありますがこれについて触れた意見を言おうと思います。このインタビューを管理人さんは読みましたか?見にくかったらすみません。

スタッフにとっては、同じ「原作と違う物」を意識しててもプロデュース側のような「とにかく女性が泣ける」という物よりも、もっと他の要素も意識したかったみたいです(女性と言っても色々あるのは本当ですよ)。 ここで何か含みを感じました。何故なら、あれだけ映画版の主な紹介であった「心温まる」について本当にそれほど語ってないな、とこちらも思います。
そればかりか、「捕食者と非捕食者の関係で~」とか「自然描写を~」とか「”泣ける”という題目だけで1本の映画を作るのに抵抗あった」とか「”泣ける”という物を苦労して入れた」と言ってます。寧ろ、ただの「心温まる」という要素を否定するかのような発言にすら見えました。

作中でも、マイアサウラのお母さんについて「どうするつもりだったんだ」「こいつ(ハート)を一生苦しめる気か」と言ってた肉食恐竜のボスがいました。マイアサウラのお母さんが育てなければ今はいなかったという事も認めていましたが、ああいう詰問をさせたので気になりました。この肉食恐竜のボスの怒り台詞はスタッフの抵抗にすら感じたのですが考えすぎでしょうかね?そして、スタッフ自身もこのマイアサウラのお母さんについて「浮世離れしたところがある」と評していました。このマイアサウラのお母さんへの発言は上にあるインタビューの画像に載っています。

それと、アクションシーンにもこだわってたというのがわかりました。丸っこい絵柄だけどかっこいいアクションをやろうとしてました。主観ですがアクション自体は絵本でもあながち有り得なくはない雰囲気に見えました。ただし、映画版の丸っこい絵柄もスタッフの発案なのか、誰かの意向ありきの物なのかわかりません。

人気原作でも映画化やアニメ化されると、確かに原作よりも分かりやすさが優先される事はあります。ただし、あまり行き過ぎるのも困りものです。この映画版のレンタルはどれくらいされてるのかわかりませんが。
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Unknown ()
2012-12-28 22:15:59
あと上で挙がってる「女の人が泣けるものを」という要望ですが女性についても色々ありますよね。漫画アニメファンが好むような絵柄じゃないし、漫画アニメゲームにあるようなイケメンキャラの話でもないし、ライダーみたにイケメン俳優も出ないし、映画版あらしよるにみたいに細かい絵柄のヤギと狼の友情物でもないからです。
これらの要素も無しで「女の人が泣ける」と言われるととにかく可愛い&押し売りのお涙頂戴が浮かんでしまいました。
返信する
Unknown ()
2012-12-29 06:06:35


映画の絵柄に関してもスタッフの反応で何か含みを感じましたね。一件、映画のデザインについて褒めてるように見えますが、お母さんのデザインについては褒めてても、他のデザインについては特に褒めてる様子は見掛けませんでした。(ただし、マイアサウラのデザインも絵本と違うのでその意味では不満に思う人もいるかと思いますが)

アニメージュ2011年8月号は自分の手元にもあるのですがその褒めてた発言を引用します。「あんなシンプルなキャラクターなのに、眉毛もないのに、ここまで表情を出せるのかと。あの辺はやっぱり柳田さんの力のおかげです。お母さんがあんなに生々しくて色っぽいのも、柳田義明さんの力ですよね。お母さんの色っぽさは想定外だったんですが。」

マイアサウラのお母さんのデザイン以外での発言だと「丸っこいキャラだけどカッコイイアクションをやる」的な部分くらいでしょうか。これだけだと他のデザインについては褒めてるのかどうかわかりません。そもそも、他キャラのデザインについてもどこまでがスタッフの発案なのかどうかわかりません。
誰かから「丸っこいデザインにでもしてくれ」と頼まれたからなのか、そうでないのか謎ですからね。
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階さん (sean)
2012-12-29 20:27:37
はじめまして~。
興味深くご意見を読ませていただきました。
ありがとうございました。
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おまえうまそうだなでは ()
2013-01-03 02:28:56
関係者の裏話を踏まえた意見で、おまけに長文なので気分が悪くなったら申し訳ありません。
裏話なんて客にはどうでも良い事かもしれませんが、この映画のように「おいおいそれはないだろ」と感じるのもあります。

また話を見つけたのでコメントしますがこれも不愉快に思われるかもしれません。

■原作者の思い
原作者の宮西達也さんについてこういう話もあったらしいです。
http://mcgeorge.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/10-344a.html
・「大人が読んで楽しいから子供にも面白い」
『おまえ うまそうだな』は7年前に発表。弱肉強食の厳しい自然界で本来、相いれない“親子”の関係を描きながら、
「種族の違い、敵対する者同士の壁は越えられるのか」と問いかける。
小学校低学年までが対象年齢だが、硬派なテーマが受け、大人のファンも数多く獲得している。
「最初から子供向けにと考えて描いていません。大人が読んで楽しいから子供も面白いと思えるのです」

■もしもの話
そして、今となっては野暮な話ですが、もしスタッフも映画版の上層部の意図を無視して、もう少し好き勝手やっていたらまた内容が違ってたかもしれません。
出来はどうなってたかは知りませんが、実際よりもスタッフの意図が強調される内容になってたかもしれません。裏話を読む限り、手放しに好き勝手する余地があったわけでもないんだな、と思いましたから。
映画版は作品紹介やコンセプトと、映画スタッフのインタビュー画像を見比べて見ると、いかに映画の売り手だか企画は本当に重要な物は二の次でとにかく「可愛さ」「ハートフルさ」ばかりに拘ってるかのように見えました。
その上、プロデューサー側からの「とにかく女の人が泣ける物を作ってくれ」という要望に
最終的には「泣けるという部分を苦労していれつつ」と言ってるので、少なくとも好き勝手やったわけでもないと思います。

■とにかく女の人が泣けるという要望
映画はプロデューサー側からそういう要望があったようですが要望ですが女性についても色々ありますよね。漫画アニメファンが好むような絵柄じゃないし、
漫画アニメゲームにあるようなイケメンキャラの話でもないし、ライダーみたにイケメン俳優も出ないし、
映画版あらしよるにみたいに細かい絵柄のヤギと狼の友情物でもないからです。
これらの要素も無しで「女の人が泣ける」っていうのは女の人をも馬鹿にしてると思いました。
ただ可愛いキャラでほんわかストーリーでも作れば、女の人が喜ぶとでも思ってたのでしょうか?
返信する
階さん (sean)
2013-01-03 19:55:21
不愉快には思ってませんので、大丈夫ですよ^^;
映画に対する感想やコメントというのは、本来自由なものです。
私も書きたいように書いてますからね(爆)
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