皆さんはこれまでで消費量決定の過程を理解することが出来るようになっています。この論理を使って、所得(予算)が増えたときの影響について見ることにしましょう。
図1-4をご覧下さい。
予算制約線ABはAさんちのものを使い、ここで所得(予算)が10万円から15万円に増えた場合について図を俯瞰しながら説明することにします。
まず、所得(予算)の増加は予算制約線をABからA‘B‘へと右上へ平行移動させるという形で表現できます。縦軸の最大は375Kg(15万円÷400円)、横軸の最大は30Kg(15万円÷5000円)になり、予算制約線は右上に平行にシフトします。このとき均衡点は、その3で説明した原理にしたがってEからE‘に変わります。ここで、EとE‘を結んだ線を所得*消費線と名付けます。
所得が増えた結果、図1-4に示すように、米の消費量は100Kgから125Kgに(100Kg:10万円、125Kg:15万円)、また肉の消費量は12Kgから20Kgに(12Kg:10万円、20Kg:15万円)増えることになります。
予算が増えたのだから消費量が増えるのは自然なのですが、よくみると、それぞれの増え方は違っています。米の消費量は25%(125Kgー100Kg=25Kg、25Kg÷100Kg=0.25=25%)の増加にとどまっていますが、肉の消費量は67%(20Kgー12Kg=8Kg、8Kg÷12Kg=0.67=67%)も増えています。
先に、実際のデータから「所得が変わると消費の内容が変わる」のではと推察できていましたが、図1-4によって、この因果関係が論理的に説明できたことになります。
ただ、注意すべきは、米と肉の増え方は、「好み」を意味する無差別曲線の形に拠る、ということであります。別の無差別曲線を描くことで、米の増え方のほうをより大きくすることができるのは試してみればすぐわかることです。そして予算制約線を右上にシフトしたとき、どちらかの財の消費量が減る場合もあります(米の増加に対して肉の減少の組み合わせ)。
さて、現実にはその1の表1-1で見たように、所得が増えたとき、肉の増え方のほうが相対的に大きかったのですから、平均的な家計の好みはAさんちのものと同じような形をしていたことがうかがえますね。いずれにしても、このその4を以ってして、「好み」を媒介にして、所得変化は消費の内容を変えることが我々は以上わかった次第です。