砂男
DIE SANDMANN
E・T・A・ホフマン
Ernst Theodor Amadeus Hoffmann
向原 明 訳
ナタナエルからロタールへの手紙
随分長い間手紙を書かなかったので、君たちはきっと心配しているだろう。お母さんは怒っていられるかもしれない。そしてクララの僕がこっちで自堕落な生活に没頭して,僕の可愛い天使の姿を全く忘れてしまったのではないかと危ぶんでいるに違い . . . 本文を読む
彼等二人の博士は、あらかたコンナ工合にして、自分達の研究に必要な、二人の若い精神病患者を作り上げたに相違無いのであります。
……恋に狂ふ少女……と……
……その相手役になるウスバカ青年と…………。
しかも、二人の博士の私達に対する悪戯《わるさ》はこれだけではありません。彼等はかうしたミヂメな若い男女を、意地悪くも壁一重《ひとへ》を隔てた室《へや》に封じこめて、夜となく昼となく迷ひ狂はせて居 . . . 本文を読む
かやうなお話を、此《この》窓の下に身を寄せて、息を殺して盗み聞き致して居りました私が、どんなに深く感謝して涙を流して居りましたか……あなた方の足音の消えてゆく方向を伏し拝んで居りましたことか……あなた方は恐らく御存じなかつたで御座いませう。
何をお隠し申しませう。
あなた方の御推測は、私の身に取りまして、ほとんど、空恐《そらおそ》ろしい程に的中してゐたので御座います。あなた方の御推察の通りの . . . 本文を読む
「ドグラ・マグラ」草稿
夢野久作
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(例)狂人《きちがひ》
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(例)御|同伴《つれ》になつて
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(例)[#ここから段落の2行目以降1 . . . 本文を読む
日が山の端にかくれると、この港の街には清らかな夕べがやって来た。と同時に、私もやっと息をついだ気持になって、新しいワイシャツに、この間買った細い紫色の蝶ネクタイに結び更えると、ぶらりと外へ出た。
両側に青々した菓を叫ばい茂らせたプラタナスが、フィルムの両端の穴のように点々とならんでいる山本通りにさしかかると、海の方から、そよそよと涼しい凰が吹き上げて来る。教会の隣りの空地にあるテニスコートのそ . . . 本文を読む
親の新たに得た性質が子に遺伝しないならば、生物の進化はいったいどのようにして説明されるのであろうか。ワイズマンによれば、「生物の進化し来たった原因は全く自然淘汰ばかりで、淘汰が行なわれるためには、生存競争をなす多数の個体の間に多少の相違がなければならぬが、この相違は雌雄生殖により、異った個体の生殖物質が種々の割合に混ずるにょって生じたものである」という。
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即ち、「動物の発生は、その初期ほど一般的な特徴があらわれ、発生が進むに従って特殊の特徴がぁらわれてくる。そしてある動物の若い時代の形態が、他動物の――成体形でない――若い時代の形態に似る。」これでは面白くない。第一久作は本原則を識らなかっただろうし、一元論への止みがたい欲求にかられている田舎者の筆者も、これではこの世に生れてきた甲斐がないというものである。ここにおいてか、吾輩アンポンタン・ポカン . . . 本文を読む
第四章
胎児の夢
「人間の胎児は、母の胎内にいる十ヶ月の間に一つの夢を見ている」
聞く人の耳に、誠に異様な響を与える命題である。子宮内で起っている不可思議に加えるに、正体不明の夢をもってした本命題はしかしながら、多くの人々によってプロットにさえ何らの係りを有しない単なる空想として受け取られてきた。
「普通人が見る、普通の夢でさえも、今日までその正体がわかっておりませぬのに、まして今から二十年 . . . 本文を読む
▼なれどつらつらおもんみまするに。三千世界を流るる時間が。何万、何億、何兆年とも。知れぬ無限の時間の中とはいえ。相も変らず昭和の御世じゃよ。キチガイ地獄もトントサッパリ。全く変らずそのままにある。
……サッサ来た来た。来て見てピックリ………続外道ー祭アーェー文。キチガーアーイー地イ獄ウ
ー……スカラカ、チャカポコ。チャカポコ、チャカポコ……。
▼あーア。続外道祭文キチガイ地獄。統の続 . . . 本文を読む
第三章 続キチガイ地獄外道祭文
夢野久作に対する戦後の第一次評価が加えられたのは、久生十蘭の死んだ翌年昭和三十三年に発行
された雑誌「宝石」の別冊七十八号「久生十蘭・夢野久作読本」によると見てよいだろう。あれから
約十年、順序かわって夢野久作全集、久生十蘭全集の刊行が続いたが、華々しさと衝撃力において前
者の優位がおおうべくもないことは、いかにスタイリスト連が地団駄踏んだとしても認めなければな . . . 本文を読む
かくして層次的、進化論的解釈はさらにP・ジャネやあの悪名高き禁酒主義者、エミール・クレペリンの脳髄にも輪廻転生するにいたったが、ここではフロイトの『精神分析学入門』よりズパリこのような考えをのべている箇所を引用しておきたいと思う。
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自我とリビドの発達が、根本においては、全人類が太古の時代から非常に長い年月を通して経て来た発達の遺産であり、短縮された形の反復だとい . . . 本文を読む
第二章 姪の浜の怪人
――暗示と催眠と層次説
結婿式の前日、呉一郎は英語の演説会に卒業生の総代として一番はじめの演説を受け持っていたが、几帳面な性質にもかかわらず予定の二時をすぎ三時になっても帰宅しなかった。折柄が折柄であるし、そのうちに空が一面に曇ってきて、あたりが夕方のように暗くなったので心配した入代子に頼まれて戸倉仙五郎は出かけていったのであるが……。
その仙五郎の証言によれは、姪の浜の . . . 本文を読む
学校行って40の中身を120に移し替える。これには1時間かかると思われるので、初っ端に仕掛ける。無論コピーの方がいい。居ない時間を狙うなら今から行った方がいい。
仕掛けたあとはTSUTAYA、就職課、
終わったら天神の書店福家でスケッチブック買う。その後、西新図書館で流れよわが涙を借りる。
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