徒然草庵 (別館)

人、木石にあらねば時にとりて物に感ずる事無きに非ず。
旅・舞台・ドラマ・映画・コンサート等の記録と感想がメインです。

渇いた太陽 ~Sweet Bird of Youth~ (3) @刈谷

2013年12月14日 | 舞台


先週末は刈谷で『渇いた太陽』の地方公演を観てきました。
実家からそう遠くないので、半年ぶりの帰省ついでに1日目は母と観劇です…こんなの何年ぶり?

母はテネシー・ウィリアムズの作品は『欲望という名の電車』を杉村春子さんの主演舞台(文学座)で観たそうです。もちろん若く美しいルリ子さまにも銀幕で親しんだ「日活映画全盛期」世代。歳を経てなお迫力ある彼女のお芝居を見て「エネルギーチャージされた」と感動の面持ち、大喜び。帰りの電車でも「大女優、あの役をできるのは確かに今の浅丘ルリ子しかいないかもしれないね。役に本人が重なるような…」「決して幸せな終わり方じゃないけど、何故か明日も観に行きたくなる、そんな舞台」と語っていました。
もちろん初・ナマ上川さんの演技にも目と心wを奪われた様子で「彼、TVより断然色気があっていいわね!あなたがリピートする理由が分かった!次に公演があったら行きたい!仕事もあるけど、日帰りで行ける距離なら行く!」と晴れて追っかけ(違)公認!←よし次からは大阪公演あったら誘ってあげよう!w

しかも後から聞いたら、父も「浅丘ルリ子、昔サイン会か何かで見かけたよ。ホントに小柄で、華奢で、キレイで、眼だけがキラキラ大きくて、お人形みたいだったなぁ」などと語りだす始末。母と私は好きな役者のタイプがかぶるので、山本耕史さんの『薄桜記』とか『居眠り磐音シリーズ』なんかは共通の話題でよく上がるのですが、いつもそんな話になると父は面白くない様子なのです。なのに!「上川隆也か、彼はイイ男だな。芝居も上手いし」とこれまた珍しいほどの高評価!何があった、父よ!!(←『遺留捜査』を見てたらしい…糸村さん効果スゴイ!)

そんなわけで、久しぶりの家族の食卓では大層話が盛り上がったのでした。


 ◇   ◇   ◇


さて二週間ぶりの舞台。お芝居は、確かに変わっていました。
台詞の応酬が滑らかになったせい?キャストの台詞が早すぎて、特に刈谷初日は正直かなり「走ってた」感じを受けました…特に一幕、主役のお二人は発声も滑舌も見事だし「流れて」いないのはさすがですが、数をこなして来た分?初見の客にはかなり聞き取りづらいスピードになっていました。1階席の中ほどの席でしたが、ホールが大きいので反響する部分もあったのかもしれません。母は「ちょっときつかった。含蓄のある台詞が多かったし、ゆっくり味わいたいから台本でもう一度読み直したいわ」と言っておりました。これは同感です。既に観てセリフがほとんど頭に入ってる私でさえ「ついていくのがやっと」でしたから。(翌日はこちらが「慣れた」のか、2階席から観た分には台詞・音響は気になりませんでした)


今日は劇中で使われている曲の名前がいくつか分かったので、記録しておきます。

★冒頭&ラストのシーン
『Deborah's Theme』エンニオ・モリコーネ
映画『Once upon a Time in America』より
http://www.youtube.com/watch?v=_3UTb34_3JQ

この舞台の主題曲と言ってもいい、心に残る旋律。
私たちの記憶の底に眠る「何か」を呼び覚ますような…。


★チャンスとアレクサンドラのラブシーン
『Moonlight in Vermont』ジョー・スタッフォード
http://www.youtube.com/watch?v=CwyZyDD6Yqw

ルリ子様が演出の深作さんに「使ってみては」と提案したそうです。
甘くて切ない、そして少し気だるい歌声。
このシーンが終盤、チャンスが自分に向けた「あの残酷な言葉」に繋がるなんて。


 ◇   ◇   ◇


だと言うのに!!!
何やら真面目な感想を書くのがバカバカしくなるほどに「しょうもない」ポイントがツボって、2日目同行した上川クラスタの友人と終演後4時間も!オシャレな個室の居酒屋で日本酒ガンガン飲みながら熱く熱く語り倒してしまったのでした…高知の銘酒「美丈夫」(←名前で爆笑!)を何合空けたやら。当然?翌日は多少頭痛が残り、大いに反省しました。

今回はすっかりダメ観客に成り下がってしまったワタクシ…。

ちゃんとした?舞台の内容やお芝居については前掲の「渇いた太陽」感想(1)(2)をご覧いただくとして、以下「ガラにもなくダメわんこキャラに萌え萌えしたv」記録です。


 ◇   ◇   ◇


質問:「ダメわんこ」に萌えるのはいけませんか?

私から見ると、元々「がっちりした&凛々しい大型犬」っぽい、例えるならジャーマン・シェパードみたいな印象のある中の人ですが…「演じる」際には一切その気配を変えてしまうのが素晴らしい!このギャップの面白さが、『渇いた太陽』のちょっとミーハーな(苦笑)楽しみ方でもあります。


舞台上のチャンス・ウェインは本当に呆れるほどのバカ犬(注:既に人間でもない、この扱い!)っぷり。見た目も金茶色の髪のせいで「ちょっと頭のユルいゴールデンレトリーバー」のような。キャンキャン吠えるわ唸るわ暴れるわ反抗するわ、やりたい放題。あのホワイトゴールドの腕時計は首輪代わり!
ダメわんこは躾けないと!と思っていたら、飼主(笑)のアレクサンドラ様がちゃんと「調教」なさるシーンがあって、その度にニヤリ笑いが禁じ得なかったりします。


電話中のアレクサンドラにしがみつかんばかりの勢いで自己主張する姿はほとんど幼児w

「ねえっ!僕のこと話して!」
「うるさいっ!」(スパーン!)

この場面なんかは毎回ルリ子さまのアクションが変わっていて(笑)北千住では確か音を立てるほどの勢いで平手打ち、あるいは肘鉄、または頭をはたく…調教アクションの決まり具合がいっそ爽快w刈谷の二公演目では見事に首に手刀が入っていたけど、大丈夫かなーと思ったり(汗)


まあ、ひっぱたかれたり突き飛ばされたりする度に、そりゃまた軽やかに「くるんっ」とひっくり返る+しかも「びっくり!」と瞳が真ん丸になってポカーンとするチャンス(時々頬に手を当ててたり…「親父にもぶたれたことないのに!」←違)が、猛烈に!可愛い!ので、バカ犬なのにちょっとメロメロになります。
しかも髪が(ベッドに寝転んだりしていると)ふわふわに乱れていたり、ハネていたりすると、恐ろしいことに「やんちゃな子ども」にしか見えなくなってくるのですよ…中の人=48歳というのが完全に忘れ去られてしまう瞬間。そして「上川隆也」じゃなくて「チャンス・ウェイン」なんですよ。当たり前のことですが、あのダメわんこっぷりを見せつけてくれるのが「上川さん」ってのがまた…何という面白さ。


そういう意味ではアレクサンドラ様もアレクサンドラ様にしか見えず、完全に「ハマリ役」彼女の場合はさらにルリ子様の持つ経歴やスター性も「当然の如く」演技に華を添えているわけですが…まさしく女王の風格。したたかで強い女王様でありながらあの可憐さ、初々しさ。ホントに中の人の実年齢を忘れてしまいそうになります。いやあの華奢な体型も相まって、「少女型アンドロイド」だった、と言われても「そうだったのか!」と納得しそうな勢い。


そうか!
この舞台は「女王様vsダメわんこ」なだけではなく
実は「アンドロイドvsサイボーグ」だったんだ!
 ↑
めちゃくちゃ腑に落ちた自分がいる…。(違




≪おまけ≫1階席と2階席をハシゴして、ミニマムな所で気づいたトリビア。

第一幕でチャンスが脚を投げ出して座っている時に「土踏まずに筋肉ついてる人って初めて見た!」とビックリしました。←そこか! いや普通ならアーチ型に凹んでるはずのところが、少し丸く(偏平ではなく)ふくらんでいるのって。だから48歳でもあんなに跳べるのね!と納得。

チャンスがひっきりなしに吸う煙草は「ラッキーストライク」でした。(名前に引っかけたかな?)

刈谷公演、なんとフライヤーが地方公演バージョンになっていたので驚きました。いや下部に記載された公演会場と日時が違うだけの話なのですが、初めて気づいた…思わず「レアものだ☆」とたくさん頂いてきてしまいましたwポスター欲しかったなー。(後からみたら真田で貰った大阪公演のフライヤーも西宮Ver.になってました。同じかと思ってた!)




 ◇   ◇   ◇


そして、初めて「中の人」が顔を見せるカーテンコール。
他のキャストが全員舞台上に並んでから、中央からルリ子様の右手をとって、そっと背中に左手を添え、優しくエスコートして登場するシーンは「絵になるような美しさ」♪譬えるなら「女王様と騎士(ナイト)」!

さっきまでのダメわんこはどこへ行った?いきなり「ご主人様を全力でお守りします!(キリッ」な「忠犬(シェパード)」に様変わり…これまた何という胸キュンなシーン!カテコ3回目は北千住でも刈谷でもルリ子様に半ば引っ張られるように出て来て、その照れたような控えめな笑顔がまたキュート…とメロメロになってしまうのでした。

カテコ1回目はキャストが手をつないだまま(笑)ハケてしまうので、いつも上川さんがしているような「ハケ口で振り返って観客席に最後の一礼」が見られないのですが、ラストではちゃんと「ハケ口にぴしりと立って、胸に右手を当てて一礼される」そのキマり具合も、本当に「サマになる」ので、この最後の一瞬まで目が離せないよなあ…といつも見入ってしまいます。ダメわんこの面影ナシw

お二人の身長差、体格差、衣装、どれをとってもこれほどにピッタリはまるカップル(違)観たことないわ…と、過去の上川さん出演作品に出てきた共演の女優さんたちを思い浮かべ、不思議な気分に。いわゆる女性と(色恋で)絡む役が基本的に少ないせいもあるかもしれませんけれど、一緒に観た友人も「ここまで違和感なく受け入れられるのはルリ子様だから」と大満足の様子。やはりお姫様&王子様願望(←えっ?)にぴったりのキャラ、ということでしょうかね…王子様じゃないけど「殿」も素敵でしたから♪

あ、そうそう。

バカ犬バカ犬と連呼しておりますが、そんなダメわんこのチャンス君が、最後の最後だけ一瞬アレクサンドラを「男として守るように」抱き寄せるシーンがあって、その場面はいつも「もう遅いよ!」と全力でツッコミつつも、ダメわんこの見せた「一瞬の本気」に胸が潰れるような思いをしています。


ダメわんこも「やればできる子」になれたかもしれないのに…
全てはもう遅かった…。。・゜・(ノД`)・゜・。


この日は、ラスト近くのルリ子様@アレクサンドラの台詞「私…もう行くわね」が、本当に涙が出そうなくらい震えていました。今までは突き放すように「行くわね」と強くおっしゃっていたのが、母のような慈愛さえ見せて、最後にもう一度チャンスに手を差し伸べているかのような…。
このシーン、ルリ子様のか細い肩を見て、出来るなら私が手を差しのべたいくらい…なのにできないもどかしさで、泣きそうになりました。毎回観る度に違う表情になるお芝居…と感じています。

そして、上川チャンスのお芝居にもさらに豊かな幅が加わって、明るい無邪気な笑顔、繊細な俯き顔、荒れ狂う激情や叫び、青ざめ怯える姿、どれも深い情感をその後ろに湛えていました。
ラストの台詞も、北千住では真っ直ぐ私たち観客に向き合うような揺らがぬ視線が印象的でしたが、この日は「いや…そうじゃない」と呟く場面で、壊れそうなほどに脆く儚げな一瞬の「瞳の揺れ」が…ふと伏せた眼差しとその姿に、彼の哀しみと最後のプライドを痛いほど感じました。

二週間の時間とその中で生まれた変化と深化。
全てが物語の「救いのない結末」を、より透明な、美しいシーンに昇華させていました。


 ◇   ◇   ◇


というわけで…?ダメわんこと飼主様の物語(違)、
一週間後の日比谷ではちゃんと真面目に見てきます。 


以上、ダメ観客の反省文でした。 m(_ _)m