グリコがヒョウに言った。
「何を?」
「リハビリ」
ヒョウはしかめっ面で、そんな話今するなよ、という顔をした。
「……とりかえとくよ」
グリコはあたしと一緒に助手席に乗り込んだ。リンが運転席に座ってエンジンをかけた。
「俺はどうすりゃいいんだ?」
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うろたえながらアーロウがヒョウの袖をひっぱった。
「あんたは隣の住人だ。今夜は部屋で寝てたんだ。いいな。何も見てない。何も聞いてない。そうだろ」
「しかし」
「あいつ誰だい?……誰も知らないんだ。何もなかったんだ。わかるな」
「……わかったよ」
ヒョウはアーロウの肩をたたいて荷台に飛び乗った。
車が発車した。アーロウは不安な面持ちで見送った。
墓地についてからのリンとヒョウのコンビはまたしても迅速だった。
死体はウッディー.ウエストウッドがひきうけることになった。
「また会えたな」
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棺桶の蓋を開いたヒョウがウッディーにあいさつした。ひさしぶりのウッディーはずいぶんひどい様子になっていたがライフルを構えるポーズは相変わらずだった。のぞきこんだグリコは思わず吐きそうになった。あたりに異様な臭気が漂っていた。
「気にくわねえ奴だが面倒見てやってくれよ」
そう言ってヒョウはフニクラと一緒に男の死体を棺に落した。裸の男が二人、並んで横たわっている姿は気持ちのいいものじゃなかった。
土まみれの手を何気なくはたいたフニクラが指に何か付着しているのに気づいた。見ると紐のようなものが絡まっている。
「なんだ?」
フニクラはそれを指からほどいて投げ捨てた。しかし今度は投げ捨てた指にまた絡みついた。フニクラはいまいましそうに手を振り切った。同時にカラカラと変な音がした。フニクラはあらためて紐をひっぱってみた。またしてもカラカラ音がして、紐はひっぱるだけ伸びた。
みんなが気づいた時、フニクラはカラカラやりながら際限なく伸びるその紐と格闘中だった。
「なにやってんだよ」
「ヒョウ、なんだいこれ? どこまでひっぱっても終わらないんだ」
ヒョウは紐の先端を追った。紐は死体の腹から伸びていた。驚いてヒョウがふりかえると、フニクラもひきつりながら、
「そうなんだよ。何だい? これ」
「寄生虫か?」
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「なんだって?」
フニクラは恐怖におののいて紐を手からふりほどいた。
「なに? どうしたの?」
グリコがのぞきこんだ。
「へんな紐が出てるんだよ」
「え? なにそれ」
「あいつの腹から」
「え?」
リンが勇敢にも死体に接近して紐の様子を確かめた。確かにそれは男の腹部の傷口から始まっていた。グリコが思い出した。
「あ、そういえばこいつおなかに傷があったわ」
「それは俺も見たよ」と、ヒョウが言った。
「なんかヤバいもんを隠してるとか言ってたけど」
「ヤバいもん?」
「なにかわかんないけど」
「腹を切って何か隠すのはよくある手だ」
と、リンが言った。ブランドコピー
「……冗談だと思ったのに」
グリコは顔をしかめた。ところがその後もっとしかめなければいけないことが待っていた。リンがナイフで男の腹を切り裂いたのである。全員の口から「ウッ」という声が洩れた。リンはそのうえ切った腹の中に自分の腕を突っ込んだ。
さらにテンションの高い「ウッ」が口々に洩れた。
「何かある。腹膜が破れて腸の間にひっかかってるな」
「バカ! 解説すんな!」
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ヒョウが怒鳴った。
リンはもう片方の手もつっこんで強引に腸もろとも引き摺り出した。
「うわぁ!」
もう見てられる状況ではなかった。フニクラは耐えきれず嘔吐した。リンがそれを見て顔をしかめて言った。
「きたねえな。あっちで吐けよ」
もう誰も反論する元気はなかった。
「あった」
リンはまるで子供が土の中からカブトムシでも見つけたような顔をした。しかしリンが見つけたのはカブトムシでもモグラでもないはずだった。リンはそれをヒョウに投げた。
それはビニールの袋にくるまれたカセットテープだった。カセットは男が三階から落ちた衝撃のせいでバラバラに砕けていた。ビニールも破れて血が中に侵入していた。
「カセット? なんのカセットだろう」
「さあ。ちょっと調べてみるよ」
リンが墓から上がってきてカセットを回収した。
墓地を後にしたあたしたちは空き地に向かった。
ヒョウとグリコとあたしは引っ越し荷物で一杯の荷台に乗っていた。
みんな妙に無口になっていた。
運転席でフニクラがハンドルを握りながら隣のリンに聞いた。
「ほんとにこれで見つかんないのかな」
「大丈夫さ。日本の警察は世界一タコだ」
リンはひとり飄々としていた。
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「誰に習ったんだよそんなこと」
そんなやりとりがパイプから荷台にも聞こえてきた。
「グリコ、歌え」
ヒョウが言った。
「え?」
「歌え」
「何を?」
「なんでもいいから」
「なんで?」
「いいから!」
グリコは何か歌おうとしたが、何も浮かんでこなかった。
「歌えるわけないじゃない! こんな時に!」
グリコは子供みたいにべそをかいた。ヒョウのひどい声が聞こえてきた。一瞬何の歌だかわからなかったが『マイウェイ』だった。運転席のフニクラが一緒に歌い出した。グリコもあとを追って歌った。
最初元気に声をはりあげていたヒョウも二人の暗い声につられてトーンダウンした。
あたしはもうさっきからずっと耳の調子がおかしかった。よく聞こえないのだ。その理由を今頃あたしは思い出した。
「忘れてたわ」
あたしは耳につめていた栓をはずした。途端にヒョウとフニクラのひどい声が耳を突き破って頭の中に響き渡った。あたしはまた耳栓を元の場所につけ直した。
まるでお通夜のような『マイウェイ』をBGMにしてトラックは夜の闇を駆け抜けた。