【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

CECIL【156】夫婦でありたい

2010-08-08 | 5-2 CECIL




 CECIL【156】 


そのミオの肩を横から抱いてイーギンは、泣いていいのに、何だよソレ。ミオが落ち着いてよかった。と言って笑い掛けた。

「私、沢山ルール違反したのに...シゴト中にごめんなさい」

「沢山?無用電話じゃないしここに来るのは自由だ
 太ってないのにここに来た、くらいじゃないか?」

「う...会いたいときに会いたいと言ったこと...勝手しちゃった」

「そんなこと言うなら工場に行く」

「判った、申し開きごめんなさいっ言わないっ...聞いて」

「聞いてじゃない、傍に居て でいい」

「イーギン... 」

「リッツから最初に報告受けたときミオはアリシアを想って混乱中
 平素に暮らしていては身近ではないあんな事件に遭うなんて有り
 得ない、こんな暮らしは絶対無理の拒絶起こすと思った」

「 ...どういうこと?」

「『FALCON』社長の俺はこちらから攻撃や犯罪はしないが大衆に
 疫病撒くゴミは潰す。遣ってることはマフィアと同じ。流血抗争
 の中。今回『FALCON』と『クワロフス』が片付けたことで俺の
 明らかな正体がミオにバレる。すると、ミオはこんなことが続く
 なんて無理っと言って結婚破棄かなと過ぎった」

「え、そんなこと思ってもない、動画に出たりしないわ?」

「フツウのコたちは、明日死ぬかもしれない
 犯罪者相手の中に生きることは選択しない」

「あ...うん...私も思ってもみなかった。けどそれとイーギンは別」

「そうか?俺と結婚したらアリシアのようなこと日常だ?」

「『FALCON』の行使力の判った今は立ち向かうしか思ってない」

「ミオ...杞憂と判って俺は嬉しいよ。奴隷船
 に引き渡す?誰が教えたんだ?って笑えた」

「褒めてくれる?私、アリシアのことしか頭になかったのに」

「それでいいんだよ。しかしだ、人の消えること日常の世界に入る
 ならそれ相当の覚悟と根性が要る...それと関わらない世界にミオ
 を置いておくつもりだった」

「だから無用電話するなとか居場所訊くなとか」

「そうだ」

「じゃあ、動画にも出たしもう仲間。無用電話するし居場所も聴く
 無用電話して煩いって言われても理由分るから不安にならない」

イーギンは呆れて笑って、そうか。と言ってミオを抱き寄せた。

そして、ひとつだけ分からないんだが。と訊いて続ける。

「アリシアだ。何がそんなにミオの気を惹いた?ミオは友だち沢山
 いる。何かなければ、知り合ったばかりでそこ迄入れ込まない」

「それ...私にも分らなかった。だからアリシアがいなくなってから
 沢山考えたの...特別友だちになりたい何か惹かれるものがあった
 かどうか、ただ好きってだけでそれ以外はないって思ったけど」

「けど?」

「こういうことイーギンに言っていいの?...いえ、イーギンだから
 どんなことも話した方がいいわよね...多分...マリッジブルー?」

「え」

「その定義ちゃんと知らないけど...結婚して今迄ずっと仲良かった
 キャンディスとゼノビアとも縁が薄くなっていくことを感じて...
 『FALCON』社長夫人で友だちじゃない友だちを見つけたわ?と
 思った、と思う。アリシアは凄くピュアで上澄み会話のない人で
 船を降りても友だちでいたいと...ホント私、ストーカーくらい」

「それね...そこも結婚破棄される虞の要因だよ」

「ごめんなさい...イーギンのせいじゃないのよ」

「ソレは俺には付き纏う課題だからいいんだよ、俺を責めても
 身分を隠さないと菊之丞みたいに誘拐頻繁でうんざりだしな」

「そう言えば、菊之丞は?」

「社長の息子なんてうんざりだと言って身分証偽造して南の島」

「待って?だいたい息子は嘘よね?何でそんな、何処から何処迄」

「色々攪乱だよ。オーナーが菊之丞を息子に据えて餌にして地下に
 隠れているゴミを表に誘き出して叩くとか『FALCON』跡継決定
 してるから横からちょっかい防ぐとか...俺が結婚したとなったら
 標的はミオになる。からミオにネモとリッツが貼りつく。結婚は
 自由行動ナシに。お義父さんの結婚反対はそれ知ってるからだ?
 だが王様に可愛い娘献上は断れない」

「えっ...ふふ。それウける」

「だが、決定権はミオだ。王様は命令できない」

「ホントは私を弾きたかった?沢山ルール作って」

「そうだ。パーティー三昧と贅沢に喜ぶ女性の方が気はラクだ」

「けどそう言う女性に浮気つきもの。情報漏洩オマケ付じゃない」

「だから結婚する気なかった。結婚したいなら覚悟...面倒だった」

「でも今は私と夫婦でありたいと思ってる」

顔を寄せて迫って言ったミオにイーギンは笑って―返事しない。

「何で?何でうんって言わないの?さっきの話ではそうでしょ?」

「俺は決定したくないの。後で文句言われたくないから」

「ずるいってこと?...あそ。ええ、判ったわよっ私が挑むわ!」






CECILもくじ CECIL【157】につづく。




コメント    この記事についてブログを書く
« CECIL【155】顔晒しに行くっ! | トップ | CECIL【157】文句は20%聞く »

コメントを投稿