ひさびさディノヒバ

神様が久々に降臨なさいました。
何がきっかけなのかは自分でもよく分からん…。
続いてしまいました。続きは明日にでも。
多分Act.3くらいで終わります。





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■　恋を始めるその前に　■




「もっと強くなってもらうぜ、恭弥」


そう言って僕の前に突然現れたあの人は。

僕の目の前に見も知らぬ世界を開き、

名も知らぬ感情を与えたのだ。




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ACT.1　kyoya：無自覚の誘惑

「よぅ、恭弥」
水曜日の昼休み。応接室の扉を開けた人物が誰なのか、顔を見なくても分かる。ディーノだ。
扉を後ろ手に閉めた彼は、部屋の中程まで来て足を止める。
窓辺に腰掛けていた雲雀は、ちらりと一瞥をくれただけで呆れたように視線を外した。
肩にかけた学ランの袖が、ドアを開けた気流の変化で僅かに揺れる。
「また来たの、あなた」
「おう、恭弥の顔を見にな」
「僕としては手合わせしたいところだけど？」
好戦的な顔つきをした雲雀に困り顔になったディーノは、俺もそうしたかったんだがな…と言いながら仕方なさそうに頭を掻いた。
「なに」
「今日の午後の便でイタリアに帰る」
ふぅん、とだけ相づちを打って、雲雀は窓から音もなく降りた。
とたんに興味を失ったような雲雀の表情に、ディーノは少なからず落胆する。
予想の範囲の反応とはいえ、何かしらの変化を期待したのだ。
壁の時計はもう正午を回っている。フライトまで３時間もない。
「だから、最後の挨拶に、な」
失望を押し隠して柔らかく微笑んだディーノに、雲雀が覚えた感情は僅かな苛立ちだった。
「最後って？」
「リング争奪戦も終わったしな。家庭教師役はお仕舞いだ」
言われて雲雀は思い出す。この人は自分を鍛えるために来たのだった。あの赤ん坊に頼まれて。
持っておけと渡された装飾華美なリングは、制服の内ポケットに入れてある。
「じゃあ、もう来ないの」
「そうだな。…まぁ、またリボーンに呼び出されるかもしれないけど」
その言葉にまた雲雀の苛立ちがつのる。
自分が何に苛立っているのかも分からないが、酷く不快だ。
「…赤ん坊が呼べば、来るの？」
問いかけながら、雲雀はディーノに向かって歩を進めた。
「そりゃあ、俺の元家庭教師だからなー、アイツは。滅多な事で呼ぶ奴じゃねぇし…と、恭弥？」
雲雀はディーノの間近まで来ても歩みを止めず、思わず一歩下がったディーノとの距離を更に詰めた。
息がかかるほどの近さに、ディーノがとまどっているのが雲雀にも伝わる。
見上げる形になった雲雀は、そのまま背伸びをして、唇と唇を触れあわせた。
自らのそれと、ディーノのそれを。

「きょ、恭弥…!?」
接触はほんの数秒にも満たない。
それなのにディーノの目は面白いほど見開いて、雲雀が少なからず感心して見ていると、肩を掴まれ引き離された。
ディーノは見た事もないほど狼狽えている。
その表情に、先ほどまでの雲雀の苛立ちは少なからず宥められた。
どうして、と疑問を口にするディーノから離れようとするが、肩を掴む力が思いのほか強い。
雲雀は仕方なくそのままの距離で口を開いた。
「こうすれば、またここに来るかもと思って」
「ここ、って、応接室？」
視線を外さずに雲雀はコクリとうなずく。
「また来て…良いのか？」
「今までだって勝手に来てたじゃない」
来ないと言うなら、今この場で咬み殺したい。
ムッとして眉根を寄せれば、そのとたんに抱きしめられた。

ふわりと鼻腔をくすぐるシトラス系の香り。自分の顔がディーノの肩口に埋まって、あぁ、この人こんなに背が高かったのかと気がついた。
あんなに何度も戦ったのに、この人とこんなに距離が近いのは初めてだ。
ジャケットの厚手の布地が邪魔で、それをよけるように顔をよじる。
頬に触れたシャツの薄い布地は、ディーノの体温を雲雀によく伝えてきた。
耳に伝わる鼓動は、猫のように早い。
それともこれは、僕の心音だろうか。


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