滴洋日記 ~古典と歴史の迷い道~

大好きな古典と歴史の散歩道。歩くほどに踏み迷う・・・
お付き合い下されば幸いです

ガイダンス (全巻講演会)

2009-04-20 12:09:55 | 村井先生の源氏物語全巻講演会
源氏物語千一年
今年は、源氏物語成立千一年です。
去年は『源氏物語千年紀』という事で、数々のイベントなども行われ、また関連本の刊行もあり、源氏物語に対する知識を深める事ができました。

この『千年紀』ですが、千一年前の寛弘5年の11月、藤原公任が「あなかしこ、このわたりに、わかむらさきやさぶらふ」と紫式部に呼びかけた事が『紫式部日記』に書かれている事がその根拠となってます。
私は、これより前に成立していたかも知れないし、逆にまだ最後までは完成していなかったかもしれないと思うのですが、いずれにしても、この頃に『源氏物語』という世界文学史上稀な奇跡とも言える物語が世に出たという事は事実です。

去年は『千年紀』という事で、お祭り騒ぎの一年でしたが、今年はすっかり沈静化してしまいました。
以前からの源氏物語ファンとしては、いささか寂しいような、でも本来の姿に戻ってホッとしたような複雑な気分です(笑)


昨年まで、神戸山手大学の村井利彦教授の公開講座「シニアゼミ・源氏物語」を受講して、ほとんど訳文ながら、なんとか全巻を読み通す事ができました。

三年間の勉強で、自分で言うのもナンですが(笑)少しは理解も深まったような気がします。
そして、もう一度、最初から、前には聞き漏らしてしまった事や、理解できなかった事など、今一度村井先生の講義を拝聴したいと思っておりましたが、新年度から「源氏物語全巻講演会」と言う生涯学習講座が開講される事になりました。

月二回、一回に一巻ずつの講座です。
これから、毎月二回の講座の記録と、私の感想などを綴って行こうと思います。

4月9日は、第一回目でこの日は「オリエンテーション・ガイダンス」でした。

源氏物語成立当時の背景について『紫式部日記』寛弘五年11月の記述の解説を中心に説明して下さいました。

 源氏にかかるべき人も見えたまわぬに、かのうえはまいていかでものしたまはむと

この言葉、私は「光源氏のような人がいるはずがないのだから、紫上のような人がいるわけがない」という訳をそのままに読んでいましたが、村井先生のお話では「光源氏のような人はひょっとしたらいるかもしれない。けれど、紫上はいるはずもない」という事だそうです。

そう思って考えると、光源氏には数々のモデルとされる人が存在しますが、紫上にはそのようなモデルはありません。
紫上という女性は、作者の筆が産み出した特別な存在という気がします。
きっと、紫式部にとっては、自分が産み出した大切な我が子とも思える存在だったのでしょう。その大切な紫上を、酒の席の座興にされたんだから、彼女としてはとても不愉快だったんでしょうね。

以前に、清少納言ならこんな時には、当意即妙に辛辣さを上手に包んだ上手い返事をするだろうに、紫式部って、やはり真面目人間でこう言う事は苦手なのね!と思ったんですけど、そんな風に軽々しく扱われる事自体許しがたい事だったのでしょうね。

源氏物語成立伝説と『湖月抄』
さて、源氏物語と言うと必ず出て来る石山寺の源氏物語成立伝説!
これについてのお話が、なかなか興味深いものでした。
私は今まで、どうせ後世の人が作り上げたお話だから!と、全く興味がなかったんですけど、なぜ石山寺という源氏物語とはあまりご縁があるとは言えないお寺が、登場しちゃうのか?その謎が面白く感じられました。

『湖月抄』の源氏物語成立伝説は、まずは登場する人物の年代がゼンゼン合わない事や、そもそも石山寺からでは、琵琶湖に映る名月を見る事ができないなど、このお話自体がムリなのですが、それなのに、なぜこのような伝説が生まれたのか?そして、それが定着したのか?

村井先生は、石山寺は東大寺と縁が深く、東大寺の僧奝然が開基となった清涼寺(嵯峨釈迦堂)を物語に取り入れた源氏物語には縁が深いと言うお話をされました。
その辺りの事もっと知りたいです。

それから『湖月抄』の次の文章に注目です!
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光源氏を左大臣になぞらへ紫上を式部か身によそへて周公旦白居易のいにしへをかんかへ、在納言菅丞相のためしをひきてかきいたしけるなるへし
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周公旦
白居易
在納言→在原行平
菅丞相→菅原道真

この人物に着目したのは、すごい事!
特に、在原兄弟のうちの業平になぞらえられる事が多い光源氏ですが、よく読んで見れば光源氏には行平の姿が投影されています。
とのお話です。

『湖月抄』文庫本でも出てて、友人に見せてもらったけど、これ読むのはかなりタイヘンそう!!!
でも、そのうちに挑戦したいです。

源氏物語に関するエピソードとして、一条天皇が「この作者は日本書紀を読んでいるに違いない!」とおっしゃったという話は有名ですけど、これを読んで日本書紀を連想した一条天皇はとても読みが深い方だと、村井先生絶賛(^_^)
単なる王朝の恋愛物語ではなく、ここに皇統の正当性を巡る展開を感じ取られたのだから!と、かねてより源氏物語は政治小説であるとのお考えを述べておられる村井先生らしい視点です。

源氏物語に描かれるふたつの愛
常日頃「源氏物語を恋愛小説としてのみ読むのはそろそろ卒業なさい」とおっしゃる村井先生ですが、最後に恋愛小説としての側面について、源氏物語の描かれる二種類の愛についてお話しくださいました。

「花心の愛」と「二心なき愛」です。
一人の男が大勢の女を愛するのが「花心の愛」
一人の男が一人の女をひたすらに愛するのが「二心なき愛」

源氏物語は花心の愛の物語です。
「二心なき愛」も描かれていますが、伊予介の空蝉への愛。常陸介の浮き舟の母中将への愛。いずれも物語の主流ではありません。

玉鬘への鬚黒の愛も「二心なき愛」ですね。
光源氏も、彼女に対してはそのような愛の気持ちを持ちかけているようなところもあります。
花心の愛の中で苦悩する紫上を始めとする女君たちとは少し違った立場にいる玉鬘。
今度玉鬘十帖を読み返す時には、この事も心に留めておきたいと思います。

このブログは、村井利彦先生の講座のまとめと私の感想文が、入れ混じってしまってます。
先生のお話はできるだけ正確に書き記しているつもりですが、理解不足や無知のための間違いも多いと思います。
間違いなどありましても、一切の文責は私ろすまりんにあります。

はじめまして

2009-04-20 12:07:42 | はじめに
はじめまして
ろすまりんともうします

yahooブログから、引っ越して来ました。
yahooでは「古典の迷い道~源氏物語を中心に~」というタイトルで開設していましたが、引っ越しを機に、源氏物語以外の古典文学や、それが生まれた時代の歴史についてもあれこれ書いて行こうと思い、タイトルを「滴洋日記~古典と歴史の迷い道~」と改めました。

そもそもは、神戸山手大学の村井利彦教授による「生涯学習講座・シニアゼミナール源氏物語」の勉強記録として始めたものです。昨年で三年間の講座が終了しましたが、今年度より「源氏物語全巻講演会」というタイトルで新しい講座が開講しました。
このブログもメインは、その勉強記録という事になります。

yahooブログの方は、アーカイブとして残しておきますが、少しずつこちらへ移して行こうと思っております。

yahooブログのURLはこちらです
http://blogs.yahoo.co.jp/genjimonogatari405