● 自宅前で記者にリップサービスした川淵氏 武藤事務総長から深夜に電話で“説明”
「記者のみなさんがあれだけ家にわーっと集まったら、僕もサービス精神でお話しせざるを得ない」――。
女性蔑視発言が国内外で猛批判を招き、辞意を表明した東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長。その森会長が後任にと自ら打診し、既定路線のように報じられた川淵三郎・元日本サッカー協会会長は2月12日、森会長が正式に辞意表明した組織委員会の理事と評議員の懇談会終了後、急きょ報道陣を集めて釈明した。
「(森会長に)もらい泣きしちゃって」「外堀が埋まっていて、断れる状況じゃなかった」――。スポーツ紙「スポーツニッポン」のウェブサイトによると、川淵氏は森会長と面会して打診を受けた11日の夜、自宅前に集まった報道陣に対して、このように後任会長就任への“決意”を語っていた。
だが、そこから事態は異例の展開を見せていく。
川淵氏によると、11日深夜に複数回、組織委の武藤敏郎事務総長から電話で会長選出に関するルールや条件の説明を受けたという。組織委では、会長になれるのは理事であり、理事になるには評議員会で選ばれなくてはならない。そして川淵氏は現在、理事ではなく評議員だ。「辞退しろとは言わなかったが、暗に求めていたのだろう」と、川淵氏は感じ取った。
さらに翌12日朝、橋本聖子五輪担当大臣は閣議後会見で会長人事に言及し、「組織委員会の理事会で決定される。今は何も決定していない状況」と川淵氏を後継とする流れをけん制した。
そうしたやりとりを経て、12日午後3時に予定されていた組織委の理事と評議員の懇談会より前に、川淵氏の「会長就任辞退」の一報が世間を駆け巡った。
また、その懇談会でも、会長選出のルールを無視するような川淵氏の事前の“決意表明”に対し、反発する声が上がったと川淵氏が自ら明らかにした。
森会長も川淵氏も、会長選出のルールや条件は当然知っていたはずだが、森・川淵ラインで決めておけば既定路線になると、2人とも素朴に信じていたのだろうか。
● 日銀総裁になれなかった悲運の元大物次官 経歴と実績買われての事務総長就任だったが 一方、今回の失態については武藤事務総長の影響力の弱さもあらわとなった。
武藤事務総長は12日の記者会見で、川淵氏の会長就任の“ニュース”について、11日に「メディアの方から聞いて知った」と明らかにし、事前に森会長から説明や相談を受けていなかったと認めた。テレビでも見たのだろう、「(川淵氏が就任について)映像で言っているのが確認できる。(川渕氏に)会長選出の手続きについて(電話で)お話しした」。
武藤事務総長は、政官財の各界でつとに知られた存在だ。2000年6月~03年1月まで約2年半、財務事務次官(大蔵事務次官を含む)を務めており、当時の小泉純一郎首相の構造改革路線を支えて「10年に1人の大物次官」との評判を呼んだが、その前には首相だった森会長にも次官として仕えていた。
その後日本銀行副総裁に就任するが、政治の動きと共に運命が暗転する。08年、当時の民主党など野党が多数を占めていた参議院が、武藤氏を日銀総裁とする人事案に同意せず、民間に転じて大和総研理事長のポストに収まった。
やがて2度の政権交代を経て東京五輪の開催が決定。武藤氏は、これまでの実績や経歴を買われて組織委事務総長に就任したのだが、今回の森会長の暴走を止められなかったわけだ。
首相時代から失言を繰り返してきたにもかかわらず、政界引退後も公然と自民党などに影響力を発揮してきた森会長。そんなキングメーカーに振り回された武藤事務総長には同情の余地ありとする向きもあるかもしれない。
だが、新型コロナウイルスの感染拡大により、世論調査では開催の中止や再延期を求める声が多く、開催そのものが危機的な状態にある。番頭役である「10年に1人の大物次官」とうたわれた武藤事務総長の責任もまた、重いと言わざるを得ない。
● 問題は“老害”ではなく失言と不透明さ ガバナンスうたうも空疎に響く失態 とはいえ、今回の失態の最大の責任が森・川淵ラインの“暴走”にあるのは当然だ。
「老害、老害と言われているが、老人が悪いかのような表現をされるのは極めて不愉快だ」――。83歳の森会長は辞意表明した12日の懇談会の冒頭あいさつで、こう反発した。
その森会長が後任の打診をした川淵氏も84歳。ただし今回は、高齢であることが取り沙汰されたわけではない。森会長の女性蔑視発言もさることながら、それが猛反発を浴びているさなかに、当の本人が不透明なプロセスかつ独断で後任を決めようとしたため、“恥の上塗り”になったのだ。森会長は自身の失態を、年齢の問題にすり替えるべきではない。
武藤事務総長は12日の懇談会後の会見で「(組織委が発足してからの)この7年間、組織委のマネジメント、ガバナンス、コンプライアンスは一番重要な点として、最大限努力してきた」と横文字を駆使して強調した。しかしその結果が今回の失態では、あまりに空疎に響いてしまう。
ダイヤモンド編集部/岡田 悟
これ『五輪組織委トップ人事で森・川淵ラインが「暴走」、元大物財務次官も無力』と題したDIYAMOND Online 2/13(土) 6:01の配信記事である。
このお二方普通の頭脳持ってるのか?と言いたい。辞める方は差し迫ってる後任人事で頭いっぱい、受ける方はとにかく嬉しくて頭いっぱい。と言う事で組織のガバナンス云々は考えなかったという事だろう。恐らく今までのオリパラ会合は相撲協会の会合のように車座会合で会長が全て決めて、会員はそれを黙認と言う形ではなかったのか。要するに会で議論じゃなく会長の決めた事柄の報告会のやあやあまあまあという形だったのでは? これを黙認と言わずして何と言う? 少なくとも国会議員や役人と言う人種は、国民に対して常に上から目線の習性が身に沁みついて直らないらしい。
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