上野 成就院 やすらぎ修行会「プチ法話」

御大師さまのご縁日である毎月21日。成就院では「やすらぎ修行会」を行っております。
ご参加お待ちしてます。

第149回「やすらぎ修行会」プチ法話 2023/10/23

2023-11-06 11:25:50 | 第101回~第110回
大阪西成発のフアッションブランド「NISHINARI YOSHIO」は、工房に集う70代、80代のおかあさんたちが、歩んできた人生や身近な人などから得た発想をデザインに落とし込んで製作した服のブランドです。その常識にとらわれない自由なデザインは、業界からも高い評価を得ているそうです。

昨年おかあさんたちに出された課題は、「自らの人生を象徴するファッション」。ずっと魚屋を営んでき方は、当時着ることのできなかったカラフルなエプロンを。真紅をベースに両腕の部分はカラフルな花柄です。子どもの頃貧しくてピアノを習えなかったという方は、ピアノの発表会で着る服を。黄緑と深緑を基調に首と裾には大胆なフリルが付けられています。

 ある方は、夫が亡くなった悲しさのあまり、思い出の品をすっかり捨ててしまったそう。唯一残っていたのが、山バッチがたくさん付いた登山帽でした。これを活かして何か服を作りたい!先生との対話の中で、帽子のカタチをポンチョに見立ててデザインを考えることになりました。

 ふわりと広がった服の胸の部分には、お母さんが着ていた浴衣の生地を、そして山バッチの柄をいくつかを刺繍で再現しました。刺繍をしていると二人で穂高岳や大山に登った時の記憶が蘇えり、「これええやろ」「ええで」と対話をしながら針を刺していたとか。母と夫がが自分に掛けてくれた思いを感じながら作ったとのこと。

 服を作っていると、古着を提供してくれる人、アバイスをくれる先生、共に励まし合う仲間、ひょっこり立ち寄るご近所の方、真摯な眼差しを注いでくれる業界の方、支援者など、いろいろな出会いが生まれます。そして過去の自分自身との出会いも。ファッションは時間や場所を越えて人を繋いでくれるのですね。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第148回「やすらぎ修行会」プチ法話 2023/9/21

2023-09-20 12:58:21 | 第101回~第110回
 イラクのシャニダール洞窟において発掘された、ネアンデルタール人の骨の周囲から大量の花粉の化石が発見されました。これは、死者に花を手向けるという「儀礼」が営まれていた証だと言われています。亡き人への思いを「カタチ」するという行為が5万年も前から行われていたのですね。

数年前、「ひとさじの会」に路上で生活をしていた仲間を追悼したいとの連絡がありました。暮れ方、事務局長と二人で隅田川に掛かる桜橋の袂に伺うと、ブルーシートを敷き花を供え、おじさんたちが待っていました。浄土宗と真言宗の僧侶二人の法会です。ゆっくり「般若心経」をお唱えし、真言宗の「光明真言」そして「お念仏」を繰り返しお唱えし、最後に「回向文」を読み上げました。

 その後、用意してくれた缶ビールを頂きながら、一人一人から亡き方の思い出を伺いました。「ここに初めて来た時、いろいろ親切に面倒を見てくれた」「仲間なのに何もしてあげられなかった」「ほんとにいいやつだったのに…」「今もその辺りから俺たちを見守っていてくれている気がするんだ」。感極まって涙を流している方も。「仲間」という言葉が、じんと心に響きました。

皆さんから「ありがとうございました」と深々と頭を下げられ、「これ少ないけれど、お礼の気持ち」と紙袋を渡されました。紙袋にはお金が入っていてずっしり重い。皆で朝早くから缶を集めて貯めたお金なのでしょう。

二人で話し合い、お布施は会の活動に役立てることにいたしました。亡き人への思いを「カタチ」するという行為はどういうことなのか。供養の原点を見させて頂いた思いがいたしました。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第147回「やすらぎ修行会」プチ法話 2023/8/21

2023-08-21 13:37:18 | 第101回~第110回
 お寺の近くのとあるビルには「ビル前で遊ばないで下さい 道路族(道路あそび族)」という文字とともに、子どもがシャボン玉をしている姿や道にマルを書いている姿が記されたパネルがあります。子どもの遊びも、なにやら窮屈なことになってきました。

 私が遊んでいた「西町公園」も全面リニューアル。滑り台もブランコも高さの低い物に置き換えられ、シーソー、一段低くなった円形の広場にあった貝のような形の滑り台、パーゴラ(藤棚)、カスケード(斜面を段状に施行して流水させる装置)?も撤去。とても広々となりました。これは犯罪防止の為に「死角」をなくす意図もあるのでしょうか。でもこれでは「かくれんぼ」ができませんね。

駒沢をジョギングしていると、住宅地の中に突然土がむき出しの広場に出ました。秘密基地のような建物の屋根からはジャンプを試みる子が。けっこうな高さです。水が湧いている広場には泥でドロドロになった子どもたちが。高い木に取りつき必死にズリズリと登っている子も。かまどもあり焚き火もできるようです。「こんにちは」と声を掛けてくれたお兄さんは、「プレイワーカー」と呼ばれ、子供たちと一緒に遊んでくれる人だそうです。後ほど「駒沢はらっぱプレイパーク」という場所だと知りました。

子供たちの遊びのキーワードは「冒険」。ちょっとした「危険」は遊びを楽しくするスパイスです。もっとワクワクするにはどうしたらよいのかと次から次へと考える。それが「生きる力」を醸成していくのでしょう。プレイパークのモットーは「自分の責任で自由に遊ぶ」ということだそうです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第146回「やすらぎ修行会」プチ法話 2023/7/21

2023-07-20 18:03:04 | 第101回~第110回

気仙三十三観音第二十八番札所常膳寺の本堂前には、樹齢千年を超えるという霊木「姥杉」がそびえ立っています。なんと、高さ50メートル、一巡りするのに八人もの手を必要としました。

 数年前、台風で折れてしまった姥杉の枝をご住職から送って頂きました。危ないのでクレーン車をお願いして切ったそうです。杉の枝といっても太い幹といってもよいほど。さて、どうしたらよいか。3年間考えあぐねました。ある時、深い森に覆われていた東北には霊木で仏像が作られたということを知り、それでは称観堂「抜苦」にご安置するお地蔵さまを作ろう!との声が空から降ってきました。

気仙の仏師佐々木公一さんにお願いをし、この度、お地蔵様が届けられました。枝とはいえ何百年も生き抜いてきたもの。お地蔵様の衣にはまるで模様のように木目がうねっています。ある方は「鉈彫りのような迫力」と、またある方は「生命の波動のよう」と評してくれました。

お地蔵様の頭の部分を見ると。年輪が詰まっているのが大部分ですが、お顔の辺りはだいぶ年輪の間隔が広がっています。寒い数百年と温暖な数十年がそうさせたのでしょうか。いままで生き抜いてきた年月が形となって現れているのです。

 はたまた私にも明確ではないにしろ年輪が刻まれているはず。はたして生きてきた年月がどういう形で刻まれて形となって現れているのか、鏡をまじまじ見つめてしまいました。お地蔵様のように、美しく力強くは現れてはいないようです…

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第145回「やすらぎ修行会」プチ法話 2023/6/21

2023-06-21 12:01:23 | 第101回~第110回
梅雨の雨にしっとり濡れ、頭を少しかしげて咲く紫陽花。艶やかな姿はちょっと重たい心を癒やしてくれます。

 徐々に花色があせてきた6月下旬が紫陽花の剪定時期。8月になると花芽を付けるためこの時期が最適だそうです。剪定することにより来年もたくさんの花を咲かせるのです。

門前の紫陽花の花の少し下をバッサリと切っていると、道行く人々の冷たい視線を感じます。しばらくして、近くに住むおじさんがやってきました。諸々説明すると、「この紫陽花の写真を撮っている人がよくいるんだよ」と教えてくれました。

 さらに「裏の空き地に9時から11時の間だけ咲く黄色でわいい雑草があるから、是非見て!」と教えられました。調べると「鬼田平子(オニタイラコ)」、結構雄々しい名前なのですね。翌朝、足を運ぶと可憐な花が咲いていました。
 
道行く人も近所のおじさんも、小さな幸せを探して、そして見つけてしばしホッコリしているのですね。

「今年も紫陽花をかわいがってくれありがとうございました。来年の花芽をつけるため切りました。どうぞお持ち下さい」と張り紙をし、バケツに紫陽花の花を入れておきました。翌朝見るとバケツは空になっていました。

 その数日後、街路樹の植え替え作業のため撤去するとの紙がひもで結わえ付けてありました。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第144回「やすらぎ修行会」プチ法話 2023/5/21

2023-05-22 10:55:24 | 第101回~第110回
 ゴールデンウィークの岩手の気仙は、藤、芝桜、水仙、菜の花、芍薬、ツツジなど色とりどりの花が微笑みかける「桃源郷」でした。麗らかな空の下、20人程度の方と歩き詣りをしてきました。

 巡礼にいつも参加してくれるMさんは、明るくおしゃべりをしているかと思うと、ビュースポットではサッと列を離れスマホ撮影を。同行で一、二を争う元気印です。とはいえ、5年ほど前、雨の後、外出先でつるんと尻餅をついてしまったところ、なんと大腿骨を骨折。つらいリハビリを乗り越え、巡礼に参加できるまでに回復しました。でも最後尾を守ることが多く、距離が長い区間や坂道が続くところではサポートカーに乗っていました。

今回、同行の友人に励まされ、疲れが出てくるお昼前の5キロ、先頭にぴったりとついて歩くことにしました。「疲れるから話さない」「写真を取るのは我慢」「左手のストックが役に立っていない」「それ3メートル離れた」、と「指導」を受け黙々と歩ききりました。やった、歩けた!

昼食後は車に乗る予定でしたが、「なにかどこまでも歩けちゃいそう」な気持ちになり、解き放たれたような面持ちで歩き切りました。 「すごいですねー。歩けちゃいましたね」と声を掛けると「今まで自信がなかったので、とにかく人に迷惑をかけてはいけないと思って、自分で枠をはめてしまっていたことにに気づきました」とのこと。

最後の霊場でのお勤めが終わると「やっぱり、優秀なコーチと観音様のおかげ」とにっこり微笑んでくれました。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第143回「やすらぎ修行会」プチ法話 2023/4/21

2023-04-24 11:39:18 | 第101回~第110回
先日、書院で「パラコード編み」のワークショップが行われました。「パラコード」とはパラシュートの吊り紐のこと。アウトドアに使用されてきましたが、アクセサリー等を編むことが流行しているそうです。

 先生は82歳の方、作品をデパートに出品するほどの評判です。しかし、キャリアはまだ2年ほどだそう。夫の介護が厳しく暗いトンネルのような日々を過ごしていたとき、お嫁さんが「こんなのやってみない」と「パラコード編み」についてのYouTube動画を見せたそう。それから、介護をしながら見よう見まねで腕をここまで上げたとのこと。

そもそもワークショップを開くきっかけとは、知人がパラコード編みのおしゃれなリードを付けて散歩をしているワンコに遭遇、衝動的に「この組紐で私のウクレレのストラップを作ってほしい!作った方を教えて!」と飼い主さんにお願いしたことです。積極的ですね。その後、ウクレレにパラコード編みのストラップを付けて教室に行くと、あちこちから「私も作りたい」との声が。

3時間みっちりと教えていただきましたが、編み方が特殊な編み始めと終わりがとても難しい。みなさん、輪の中を通したり、紐をクロスしたりとパラコードと必死に格闘しておりました。
 
 終わるとき、一緒に付いてきてくれたお嫁さんが涙ぐんでいたとか。きっと、皆さんから「先生」と呼ばれ、明るく堂々と説明をし、参加者全員から感謝されている。大変だったあの時を知っているお嫁さんは思わず心が高ぶったのではないでしょうか。

 「いつやるの。今でしょ」という言葉がひと頃はやりました。新たなチャレンジにもう遅いのではと臆することなどないのですね。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第142回「やすらぎ修行会」プチ法話 2023/3/21

2023-03-22 13:52:10 | 第101回~第110回
  とある雑誌に掲載されていた「いいじゃん会」。ひとしきりアルコールが入って場が暖まり盛り上がってくると「告白タイム」の時に。一人一人が順に仕事でへこんだことや彼氏とのいざこざなどを高らかに披瀝します。その時は皆で「いいじゃん、いいじゃん」と連呼。「会則」として、この時は「いいじゃん」以外の言葉を発してはいけないとのこと。テンションあげあげでビールがガンガン進みそうです。

 「しゃぁねえ教」というのも目にしました。ひとしきり「告白タイム」が終わると「しゃーねーしゃーねー、そぅりゃあしゃーねー…」と『般若心経』をお唱えするが如く声を揃えてお唱えするとか。複雑な思いが交響し深い声音なのでありましょう。こちらはぐっと落ち着いた雰囲気ですね。

 「生老病死」を「四苦」といいます。まあこう仰々しい言葉を挙げるまでもなく、生きていく過程では、思うに任せぬことが陸続と現れます。そんな日常の中、真面目な人ほどそれらの澱をため込み、心のキャパシティーを越えてしまうことがままあるようです。そうなる前に凝り固まった心を解き放つ
ことが大切。

 「しゃーねー」ことはたくさんあるゆえ、「いいじゃん」と笑い飛ばさないとやってられません。名を聞くと笑ってしまうような集会ですが、参加する方にとっては大切な時間/空間なのでしょう。いちいち説明しなくても思いを共有できる仲間は大切ですね。

 重たいことが起きても「いいじゃん」と吹き飛ばしましょう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第141回「やすらぎ修行会」プチ法話 2023/2/21

2023-02-21 15:41:07 | 第101回~第110回
お盆の時期に山谷のど真ん中、玉姫公園を会場として「山谷夏まつり」が行われます。いつもはガランとしていますが、この日ばかりは大勢の人で賑わっています。

 入口では、アルミ缶の買い取りを行っています。市場価格より高値で買い取り、そのお金でこの日を楽しんでもらおうという心配り。屋台がたくさんでており、煮込みやフランクフルトお好み焼きなどなど。厚焼き玉子を器用に焼いているおじさんは元寿司職人だとか。どれも100円台と極安。缶ビールもほぼ原価で販売しています。

 夏まつりのスタートは追悼法要から。バックネットに亡くなった「仲間」たちの写真が飾られ、その前に焼香台が。我々が読経する中、おじさんたちが列をなし、敬虔な面持ちで香を頂いては亡き方に手向けています。私たち僧侶は、浄土宗、日蓮宗、真言宗、曹洞宗などいろいろな宗派の者が。日本の仏教界では、教学上、共に読誦できる経典がないため、宗派の垣根をぐっと低くし、『般若心経』、お念仏、ご唱題、ご真言と皆でお唱えいたします。

ビールを片手に屋台の食べ物を買い歩き、みなさんだいぶ盛り上ってきました。まつりは、盆踊りが始まり最高潮に盛り上がります。当時お元気だった山谷の玉三郎もいきな手つき腰つきで踊っていました。するとその時、突然ザーッと大雨が。

おじさんたちも、支援団体の人も、外国人バックパッカーも、ただただ雨を浴びながら歓声を上げては一心不乱に踊り続けています。いろいろな隔たりを取り払い、渾然一体となった空間が生まれました。このような場から新たなモノやコトが生まれてくるのでしょう。今思い出してもゾクゾクワクワクするひとときでした。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第140回「やすらぎ修行会」プチ法話 2023/1/21

2023-01-21 09:05:43 | 第101回~第110回
津波で大きな被害を受けた陸前高田の街は、15メートルのかさ上げがなされ、その上にスーパーや飲食店がまずでき、図書館、市役所、市民ホール、博物館などの公共施設が建ち、街としての機能も復旧しました。しかしある方は、は「一年後には一年後の、三年後には三年後の、十年後には十年後の『悲しみ』がある」と仰っていました。世界は整えども、悲しみは消えることはない。

 地元の方と共にお参りする「気仙三十三観音霊場徒歩巡礼」も10年を重ねました。コロナ禍の中、一昨年は中止、昨年は、地元の方々による運営とし、東京に住まう私どもは、リモートにて巡礼に参加しました。23名の参加。

お堂の階段にスマホを立てかけてライン電話で気仙と東京を繋ぐと、画面にはおなじみの皆さんの姿が映ります。そして、お経をお唱えしている声、風の音、鳥の鳴き声も聞こえてきます。一緒にお参りをしている感覚を共有できました。スイッチをオフにするといつもの成就院本堂、不思議です。

ライン電話のテスト、経本の配布をしてくれた方、準備体操をリードしてくれた方、「新型コロナウイルス感染拡大防止接触者確認用」用紙を作成、チェックして下さった方、サポートカーを出して下さった方、観音様ラベルの地酒「酔仙」を注文したくれた方、音声・音楽入りの巡礼動画をFBにアップして下さった方、共にお勤め頂いたご住職…。気仙に伺えないというビンチを助けて頂きました。

気仙の方とともに歩んでいこうという想いひとつで、活動を重ねて参りました。多くの方々の心が観音様に向かい、自らの思いで関わって頂けるようになりました。活動に「広がり」と「厚み」が備わってきたように思います。来春も、いかねば!とそわそわしております。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする