毎日新聞によると
23日午前、米海洋大気局(NOAA)が撮影したフロリダ州に接近するウィルマ=AP 「アルファ」。人の名前に代えて初のギリシャ文字の熱帯暴風雨が22日、カリブ海で発生した。「○号」と数字でおなじみのアジアの台風にも実は名前が付けられている。ハリケーンや台風の呼び名の事情を探った。【ワシントン和田浩明、社会部・篠原成行】
大西洋海域のハリケーン(最大風速約33.1メートル以上)や熱帯暴風雨(同約17.4メートル以上)については、アルファベット順(名前の頭文字としては少ないQ、U、X、Y、Zを除く)に毎年21の男女名が6年分、計126個用意されている。これを発生順にAから割り振る。
現在、フロリダ半島に接近中のハリケーン「ウィルマ(wilma)」が最後の21番目。その後はギリシャ文字を順番に使う規則になっており、観測史上最多となる22番目の熱帯暴風雨が「アルファ」と呼ばれるのはそのためだ。次に発生すれば「ベータ」となる。
リストの名前は6年周期で同じものを使う。だが、大きな被害をもたらしたハリケーンの名前は世界気象機関(WMO)で協議してリストから外し、次回発生分から新名称に置き換える。8月末に米南部を直撃した「カトリーナ」も削除されることになりそうだ。
米海洋大気局(NOAA)によると、かつては上陸日にちなんだキリスト教の聖人の名前が使われた。しかし、同じ日に上陸すると同じ名前になってしまい、紛らわしい。その後(1)上陸地点の名前で呼ぶ(2)祝日名をあてる(3)中心部の緯度・経度で識別する--などの方法も試された。
一方、19世紀末から20世紀初頭ごろ、ハリケーンを一般的な人名で呼び始めた人がいる。英国生まれで、オーストラリアの気象観測体制確立に尽力した気象学者、クレメント・ラグ氏(1852~1922)だ。女性の知人名に加え、「公然と批判ができる」と嫌いな男性政治家の名前をつけたという。
ラグ氏が女性名を使っているのを聞いた米航空会社の気象観測担当者が社内で採用。第二次大戦中は米海軍や航空隊にも広まった。妻や恋人の名前がつけられたが、非公式のものだった。米気象局(当時)が53年に正式に女性名のリストを導入、「災害に女性の名前だけを使うのはおかしい」との観点で79年からは男女名を交互に使っている。
◇台風は14カ国10個ずつ用意
日本でも、戦後の米軍占領統治時代はキティ台風(49年)、ジェーン台風(50年)など米国風の女性名を台風に使っていた。その後、伊勢湾台風(59年)など甚大な被害のあった台風に上陸場所などの名前をつけた例はあるが、一般に発生順に数字をあてている。
一方、日本、中国、韓国など計14カ国で構成する「台風委員会」が00年から、各国が10個ずつ提案した名前140個からなるリストを運用している。9月25日に伊豆諸島を通過した台風17号は140番目の「サオラー」(ベトナムの動物)で、18号で1番目の「ダムレイ」(カンボジア語で象)に戻った。
日本提案分は5番目の「てんびん」や19番目の「ヤギ」などすべて星座名だ。ヒンズー教徒にとって牛が神聖な動物のように、動物名などでは国によって付けてはいけない名前もあるかもしれない、との判断から星座名にしたという。
気象庁は外国船舶も利用する海上警報などには名前リストを用いるが、国内向けには使っていない。同庁天気相談所の日野修所長は「名前で呼ぶか番号で呼ぶかは気象観測文化の違い。年間の発生数が分かる番号の方が便利だと判断しており、これを変更する予定はない」と説明している。
◆05年の21個のハリケーン・熱帯暴風雨の名前
1 アーリーン
2 ブレット
3 シンディ
4 デニス
5 エミリー
6 フランクリン
7 ガート
8 ハーベイ
9 イレーネ
10 ホセ
11 カトリーナ
12 リー
13 マリア
14 ネイト
15 オフィーリア
16 フィリップ
17 リタ
18 スタン
19 タミー
20 ビンス
21 ウィルマ
毎日新聞
23日午前、米海洋大気局(NOAA)が撮影したフロリダ州に接近するウィルマ=AP 「アルファ」。人の名前に代えて初のギリシャ文字の熱帯暴風雨が22日、カリブ海で発生した。「○号」と数字でおなじみのアジアの台風にも実は名前が付けられている。ハリケーンや台風の呼び名の事情を探った。【ワシントン和田浩明、社会部・篠原成行】
大西洋海域のハリケーン(最大風速約33.1メートル以上)や熱帯暴風雨(同約17.4メートル以上)については、アルファベット順(名前の頭文字としては少ないQ、U、X、Y、Zを除く)に毎年21の男女名が6年分、計126個用意されている。これを発生順にAから割り振る。
現在、フロリダ半島に接近中のハリケーン「ウィルマ(wilma)」が最後の21番目。その後はギリシャ文字を順番に使う規則になっており、観測史上最多となる22番目の熱帯暴風雨が「アルファ」と呼ばれるのはそのためだ。次に発生すれば「ベータ」となる。
リストの名前は6年周期で同じものを使う。だが、大きな被害をもたらしたハリケーンの名前は世界気象機関(WMO)で協議してリストから外し、次回発生分から新名称に置き換える。8月末に米南部を直撃した「カトリーナ」も削除されることになりそうだ。
米海洋大気局(NOAA)によると、かつては上陸日にちなんだキリスト教の聖人の名前が使われた。しかし、同じ日に上陸すると同じ名前になってしまい、紛らわしい。その後(1)上陸地点の名前で呼ぶ(2)祝日名をあてる(3)中心部の緯度・経度で識別する--などの方法も試された。
一方、19世紀末から20世紀初頭ごろ、ハリケーンを一般的な人名で呼び始めた人がいる。英国生まれで、オーストラリアの気象観測体制確立に尽力した気象学者、クレメント・ラグ氏(1852~1922)だ。女性の知人名に加え、「公然と批判ができる」と嫌いな男性政治家の名前をつけたという。
ラグ氏が女性名を使っているのを聞いた米航空会社の気象観測担当者が社内で採用。第二次大戦中は米海軍や航空隊にも広まった。妻や恋人の名前がつけられたが、非公式のものだった。米気象局(当時)が53年に正式に女性名のリストを導入、「災害に女性の名前だけを使うのはおかしい」との観点で79年からは男女名を交互に使っている。
◇台風は14カ国10個ずつ用意
日本でも、戦後の米軍占領統治時代はキティ台風(49年)、ジェーン台風(50年)など米国風の女性名を台風に使っていた。その後、伊勢湾台風(59年)など甚大な被害のあった台風に上陸場所などの名前をつけた例はあるが、一般に発生順に数字をあてている。
一方、日本、中国、韓国など計14カ国で構成する「台風委員会」が00年から、各国が10個ずつ提案した名前140個からなるリストを運用している。9月25日に伊豆諸島を通過した台風17号は140番目の「サオラー」(ベトナムの動物)で、18号で1番目の「ダムレイ」(カンボジア語で象)に戻った。
日本提案分は5番目の「てんびん」や19番目の「ヤギ」などすべて星座名だ。ヒンズー教徒にとって牛が神聖な動物のように、動物名などでは国によって付けてはいけない名前もあるかもしれない、との判断から星座名にしたという。
気象庁は外国船舶も利用する海上警報などには名前リストを用いるが、国内向けには使っていない。同庁天気相談所の日野修所長は「名前で呼ぶか番号で呼ぶかは気象観測文化の違い。年間の発生数が分かる番号の方が便利だと判断しており、これを変更する予定はない」と説明している。
◆05年の21個のハリケーン・熱帯暴風雨の名前
1 アーリーン
2 ブレット
3 シンディ
4 デニス
5 エミリー
6 フランクリン
7 ガート
8 ハーベイ
9 イレーネ
10 ホセ
11 カトリーナ
12 リー
13 マリア
14 ネイト
15 オフィーリア
16 フィリップ
17 リタ
18 スタン
19 タミー
20 ビンス
21 ウィルマ
毎日新聞