こんにちは、司法書士・ペット相続士の金城です。
NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で、獣医師の齊藤慶輔(さいとうけいすけ)という方の特集を見たことがあります。
齊藤さんは、全国でも珍しい、野生動物に特化して治療を手掛けている獣医師で、北海道で活躍している人です。中でも、齊藤さんは猛禽類の治療を専門にしています。
猛禽類は気高い動物で、どんなに重傷を負っていても、人が見ている限りはシャキッとした姿を保ち、決して人に弱みを見せないそうです。しかし、人が物陰に隠れた瞬間、クタッとなってしまうのだそうです。そんな猛禽類の高貴さに魅せられて、齊藤さんは猛禽類専門の獣医を志したとのことです。
ちなみに、猛禽類の視力は10以上といわれています。タカやワシが、はるか上空から獲物を探している光景を見かけることがありますが、1キロメートル先のネズミを識別できるほどの視力を有しているようです。人間の想像力が及ばない視力ですね。
また、タカやワシは、水面下にいる魚をはるか上空から正確に捕捉します。人間の目では、水面の光の乱反射のために、水面下にいる魚を識別することはできません。しかし、タカやワシの目には「瞬膜(しゅんまく)」というフィルターがあり、そのフィルターによって水面の光の乱反射をカットすることにより、水面下にいる魚を正確に捕捉することができるそうです。驚くべき能力ですね。
余談はさておき、北海道で野生生物の治療に当たっていたとき、齊藤さんは、重病の猛禽類が頻繁に運び込まれてくる事態に直面します。どんな治療を施しても甲斐なく、猛禽類は次々に死んでいったそうです。
最初、齊藤さんはその死因が分からなかったそうですが、調べていくうちに鉛中毒が原因だと判明します。
猟師が鉛弾でシカなどを駆除し、その死んだシカの肉を猛禽類が食べ、シカの体内に残っていた鉛弾を誤食してしまうことにより鉛中毒にかかっていたのです。北海道では、1990年代から、オオワシやオジロワシなどの猛禽類が200羽以上も鉛中毒死したとのことです。
また、本州では、イヌワシやクマタカなどの猛禽類や水鳥でも鉛中毒が発生しています。カモなどの水鳥は肉食ではありませんが、消化を助けるために胃の中に小石を蓄える習性があり、小石と間違えて鉛の散弾を誤食することにより鉛中毒になることが分かっているとのことです。
猛禽類の鉛弾中毒による死の実態は、下記のサイトに掲載されています。
苦しそうに奇声を上げるオオワシは鉛中毒で死んだ。診察した獣医師は訴える「一刻も早い鉛弾の規制を」 | ハフポスト NEWS (huffingtonpost.jp)
北海道の猛禽類の惨状を見て、齊藤さんは、行政や猟友会に対して鉛弾の使用禁止を訴えます。鉛弾の代わりに、毒性の低い銅弾を使うことを訴えたわけです。
鉛弾使用禁止の活動を始めた頃、齊藤さんは、猟師たちから、思い出したくもないほどの大量の抗議や脅迫を受けたそうです。しかし、齊藤さんの地道な活動の甲斐があって、北海道では2004年から段階的に鉛弾の使用が禁止され、2014年からはエゾシカ猟の時の鉛弾所持も条例で禁止されました。
北海道では鉛弾使用禁止条例が制定されましたが、本州以南の地域では鉛弾が依然として使用し続けられてきました。
北海道の猛禽類の鉛中毒が明らかになってからも、25年以上にわたって環境省は鉛弾の全国規制を棚上げにし、状況調査などを細々と行なってきたに過ぎなかったのが実情です。鉛弾の規制が進まなかった主な理由は、狩猟団体からの反発が強かったことによります。
しかし、2021年9月10日、小泉進次郎環境大臣が記者会見し、2025年度から全国の狩猟を対象に鉛弾の使用を段階的に規制し、2030年度までに野生鳥類の鉛中毒ゼロを目指す方針を表明しました。遅きに失した感はありますが、罪のない動物たちの命を守るためには当然の規制といえるでしょう。
なお、全国で鉛弾の使用が規制されるのは2025年からで、しかも段階的規制とのことですが、心ある猟師の方は、規制とは関係なく、なるべく早期に鉛弾の使用を自粛してほしいと思います。
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