サンクトかわら版

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「トヨタ生産方式を支える最適化手法に関する研究」

2007年07月17日 | Weblog
「トヨタ生産方式を支える最適化手法に関する研究」という論文があることを別のサイトで知った。

元トヨタで働いていおり、現在首都大学の教授である、***教授の論文だそうです。


線形計画法によりトヨタ生産方式を定義すると、ある整数解が存在するということだそうです。

勿論、この分野をソビエト時代に計画経済の意思決定論として発展させていたのは、カントロビッチ等の数理経済学者でありその伝統はまだロシアには残っているでしょう。

ということは、私の感ではこの分野の発展的研究には、ロシアのサイバネティックス学者、数理経済学者の頭脳が不可欠になると思います。


トヨタさんには是非この分野でのロシアの隠れた才能を発掘し、トヨタさんのみならず、世界の為に貢献する研究成果を上げて頂きたいものです。

しかし、つくづくトヨタさんの物凄さ、懐の深さには改めて感動します。

こうした、一見、素人には無駄と思える研究を許しているというのは、物事の本質的なことを常に注視するという精神の賜物以外なにものでもないと思います。

ところで、8月に帰国が決まったのでこのブログは一時休止します。

短い間でしたが、有難うございました。

来年早々には、新しい体制で発足できるよう努力致します。


トヨタ生産方式の蛇足

2007年06月30日 | Weblog
今から20年以上のことを思いだした。

アメリカに出張した際、マシンデザイン(機械設計)という本があって表紙の下のほうに、re-vaitalise American Industory  (要するにアメリカ産業の復興へ!!!)
と書いてあったのに気がついた。

その後、MIT(マサチューセッツ工科大学)でトヨタ生産方式を教えるようになった。その時の学長コメント、”我々はノーベル賞を取る為の教育だけを行ってきた。しかし、産業を強化するには、それだけではないということに気が付いた。”

その際に英訳されたたのが、大野耐一、新郷重夫両氏の著書であったと思う。

大野氏の英訳版の序文が1987年6月となっているので、記憶に間違いない。

その後、アメリカは得意の情報処理とトヨタ生産方式を結びつけてある分野では日本企業を凌駕することとなった。

一方、ロシア語版の翻訳は、2006年となっている。

これから、ロシア製造業がどのように変化して行くのか楽しみである。


*****次回からは柔らかい話題に戻ります。******


 

トヨタ生産方式

2007年06月28日 | Weblog
トヨタ生産方式

先日紹介した、大野耐一著、トヨタ生産方式の巻末にモスクワ大学MBAコースの案内があった。


内容は、トヨタ生産方式と改善が中心で、2年間のコースである。

2年間のうち、企業実習が2社含まれている。


20年前、モスクワ大学に、いち早くMBAコースを提供したのは本家アメリカであったが主なテーマは金融、国際投資戦略といった分野であった。


前回書いた通り、20年前は、CCCP風、サイバネティクスの残宰が残っていた時代でありウラヂオストオク極東大学の女性助教授も全員、サイバネ学者であった。

サイバネティクスとは、亡命ユダヤ系ロシア人のノーバート.ウいーナーが提唱した機械と人間における情報処理の一般理論。西側では、同じユダヤ系のフォン.ノイマンがアメリカ政府と結びついて原爆開発にあたりまた、現代の電子計算機の一般理論の提唱など日の当たる分野にいたのに対して、ウいーナーは地味な存在であった。

なのに、CCCPでは、ソビエトサイバネティクスとして一時代を画した学問分野になった。

ウン十年前高校生の時、岩波新書から、この、ソビエトサイバネティクスの紹介書が出ていて工場自動化によるバラ色の世界が描かれていた。
その時は感激して読んだ記憶がある。(ひょっとしたら神田の古本屋か岩波に聞いたらまだあるかもしれない。CCCPはなにを考えていたのかをしる貴重な珍本であると思う)

要するに、苦痛である労働から、労働者を開放し、共産主義の理想を実現する為に

工場管理の全てを自動化することを基礎付ける学問であったのである。


つまり、АВТОМАТИЗАЦИЯ(自動化)をロシア的に、徹底的に、大規模に追求していたのであり、そこに投入する、計画情報は、ゴスプランから天下りに与えられたのである。

完全無欠のゴスプラン官僚が作成した、バランス計画に基づいて生産するのだから売れようが滞貨の山になろうが知ったことか.

さて、トヨタ生産方式の一つの原則は、АВТОМАТИЗАЦИЯ→АВТОНОМИЗАЦИЯなので
(自 動 化)       (自 働 化―--人ヘンの付いた自動化)

あるが、骨の髄までこびり付いた自動化信者をトヨタさんは改宗させることが出来るのか。


そこが、一番、楽しみなところである。

また、モスクワ大学MBAコースの卒業生がロシア製造業の中核を占める頃にはロシアは変わっているのだろうか。

それも見届けてみたい。(ロシアに来たのはそれも一つの動機!!!!)


最後にロシアに関する小話。

日本人がロシア人に言った。

「日本では工場の仕事は全てコンピュータがやってくれるんだ。脳をもったロボットがあるんだよ。」

それを聞いたロシア人が答えた。

「そんな馬鹿な。本当に脳があったら工場の仕事なんてするものか。」


ロシアにいるとこの小話のほうが実感が沸く!!!!!

こんな本見つけました。

2007年06月26日 | Weblog
こんな本見つけました。

左が、大野耐一著 トヨタ生産方式、右が新郷重夫著のトヨタ生産方式の研究のロシア語訳版である。


ドームクニーギに行って”生産管理”の本、特にトヨタ生産方式の本を探しているのだけどと聞いたら、
さっと(その速さはちょっと驚き)案内された棚にはトヨタ生産方式の本が、この本以外に数点しかも一冊ずつではなく何冊か揃っていた。
(普通、ドームクニーギの陳列は1冊づつが普通)

それにもっと驚いたことに、棚と反対のバラ積みコーナーにも揃っていて、店員(ドームクニーギではコンサルタントという)
さんが他の本も勧めてくれたのだが、両方で1,315ルーブル(約6,500円)もしたので取敢えずこの二冊にした。

それにしてもトヨタは工場が出来る前に”生産方式”を売ってしまうのだから凄い会社ですね。


さて、実はこの本、なかんずく新郷重夫さんの本は小生にとって思い出の本なのである。

20年ほど前、モスクワから帰国して早速、診断士の大先輩に報告したらウラヂオとモスクワで仕事があるというので
引受けたのが、財務管理論と生産管理論だった。この内生産管理のテキストの種本として使わせて貰ったのがこの
新郷先生の本だった。


ウラヂオでは、生徒が全て女性の助教授だったことしか覚えていないが、モスクワでは、当時の新興資本家が集まって
いた。

馬鹿よけ---フールセーフの話まできて、昼休みに課題を出したら、一人の男が近寄ってきて、”俺達、社長になんで
こんな程度の低いこと”を教えるのだと偉い剣幕で迫ってきた。

それなら、貴方ならこの課題をどう解きますかと聞いてやった。

そこで、彼は、黒板二枚に、数学論文をあっというまに書きあげた。

恐らく、サイバネチクス---自動制御論に基づく品質管理システムだと思うのだがなにせこちらに数学の
素養がないので訳がわからなかった。


しかし図らずもロシア-ソビエトと日本-トヨタの生産管理---工場管理の違いを鮮明にするエピソードであった。

トヨタなら現場の知恵で、”右に穴を開けるなら右しか空けられない治具”---馬鹿よけを”現場の労働者”が考え
だしてしまう。管理側はそうした現場の知恵をIE---インダストリアルエンジニアリングのフィルターを掛けつつ
絶えず出させる為のモチベーションを与える役割を担う。

一方、ロシア-ソビエトの工場は、”労働者は昼間から飲んだ暮れている”ということを前提に全ての工場を優秀
な、サイバネチクス技術者が、あらゆる知恵を絞って自動化する。



結果はどうなったか言わずもがなですな。


さて、あれから20年、本物のトヨタがサンクトペテルブルグに工場建設をすることになった。

ロシア風トヨタ工場がどんな形になるのか、いまから楽しみである。


АВТОМАТИЗАЦИЯとАВТОНОМИЗАЦИЯの文化の違いをトヨタさんなら克服出来るのか?????


蛇足)このロシア語を訳せたらまた1級合格を約束します。

蘇る秋葉の心、第二段

2007年06月24日 | Weblog
蘇る秋葉の心、第二段


ダーチャの主人、ボリスさんがラジオを直している所。

このラジオ半端じゃない。

FM、SW,MWラジオ、プレーヤー付きのオールインワンステレオなのだ。

勿論、スベトラーナ製真空管ベースで、3連式メカバリコンが使われている。

ということは、前段高周波増幅回路付きのはずだ。

広大な、ロシアの国土で弱い電波を受けるには必要だったのか。

また、ペテルブルグからヨーロッパ自由主義陣営の電波も傍受可能だったのか。

この変がロシアソビエトの面白いところで、そとからの電波を妨害して
おきながら、一方で前段高周波増幅回路付きのラジオを市販していたのだ。

(因みに日本では、前段高周波増幅回路付きは自作するか、トリオ(現在のケンウッド)のアマチュア無線機器あたりしか無かった。通常家庭用ラジオは、所謂5球スーパーで2連式バリコン型)

今や、インターネットの時代なので、情報の統制など出来様はずもないのだが、ソビエト時代はこうしたラジオでビートルズを聞いて涙していたのだろうか。


さて、スベトラーナというのはソビエト時代の有名な真空管工場。ボリスさんに聞いたら今は工場敷地の半分以上を貸出ているとのこと。

日本の真空管アンプ愛好者が使用しているのはこのスベトラーナ製か中国製のもの、秋葉に行けば見かけることが出来る。

この工場が閉鎖(というか真空管製造設備の廃棄)になったら世界のマニアはどうするか。

誰かが、”手作り真空管キット”(”手作り真空管アンプキットではない)”などというものを考えて東急ハンズで売出すかも知れない。

でも、スベトラーナさん、なんとか浮気しないで。私もいずれ、オール三極管アンプで”ロシアロマンス”を聞く予定なので!!!!!