子どもの本はいい。

大人でもおもしろい子どもの本を紹介するブログ。

ぼくがスカートをはく日

2019-01-14 20:12:24 | YA・アメリカ
「ぼくがスカートをはく日」 作:エイミ・ポロンスキー 訳:西田佳子 絵:まめふく 発行:株式会社学研プラス


今度、学校で演劇のオーディションが開催される。
ぼくは、女神の役をやりたい。
「男子が女子の役をやるんだって!」と言われるだろう。
けれど、ぼくは自由に自分らしく生きたい。本物の女の子になりたい。
――12歳のグレイソンは、一歩、進みはじめる。

(学研プラスHPより)


読むのには苦戦しました。
いろいろ忙しかった部分もありました。
トランスジェンダーというそうですが、
男の子が女の子になりたい、というお話です。
いろいろなことに寛容と思われるアメリカでも、
ゲイとかレズとか、いわゆるLGBTに関しては、
拒否反応がかなりあるようです。
グレイソンのおじさんおばさん(グレイソンの両親は事故で亡くなり、おじさんおばさんのところで暮らしている)
はグレイソンの行動を受け入れられないし、
一部のクラスメイトは、グレンソンをいじめてくる。
それでも演劇の仲間など、グレイソンを理解してくれる人たちもいる。
理解があって、はじめてグレイソンの行動は意味を持つ。
「いろいろあって、みんないい」
これでいきましょうよ。
確かに自分も、そういう人たちと出くわしたら面食らうでしょう。
すこしづつ慣れていくしかない。
「個性」としてその人たちを認めてあげることが大事でしょうね。
まあそんなところで。
みなさんもぜひこの本を読んでみてください。
 
"GRACEFULLY GRAYSON" by Ami Polonsky(2014)

MARCH2

2019-01-14 20:05:27 | YA・アメリカ
「MARCH2 ワシントン大行進」 作:ジョン・ルイス、アンドリュー・アイディン 画:ネイト・パウエル 発行:株式会社岩波書店


ナッシュビルでの座り込みが成功したあと、ジョン・ルイスは非暴力の手段を通じて世界を変える運動にますますのめり込んでいく。
だが仲間とともにバスに乗り込んで向かった深南部では、かつてない試練に向き合うことになった。
容赦のない暴行、残忍な警察、放火、殺人…。
若い運動家たちは引き裂かれるような恐怖にさいなまれながら、時には命を危険にさらしてまで闘いつづける。
その勇気はマーティン・ルーサー・キング牧師をはじめとする指導者や、政治家たちの心をも動かしていった。
やがてSNCC(学生非暴力調整委員会)の委員長に選出されたジョン・ルイスは、
1963年のワシントン大行進に最年少の演説者として登壇する。
アメリカ公民権運動の歴史を振り返る“MARCH”三部作。
フリーダム・ライドからワシントン大行進までの日々を描く、激動の第二巻。
 
(カバー袖より)


新ブログはちょっと時間がかかりそうなので、とりあえず記事をUPします。
 
うーん、なんか読みにくい。
一巻ではあまり感じなかったけどなあ。
絵なんかもわかりにくいコマが時々あるし。
話の展開も、なんかわかりずらかった。
人物も似たような人が出てくるんで…見分けつけにくい。
まあ内容としては、
公民権運動が盛んになるにつれ、白人たちの抵抗も激しくなる、
そこで黒人たちは大規模デモとして、「ワシントン大行進」を実行する、
という感じでしょうか。
最後にワシントンでジョン・ルイスが演説を行うんですが、
そこはなかなかいいです。
「『忍耐強く待て』と言ってきた人々には
 もう無理だと言わなければなりません
 段階的な自由は欲しくありません
 今すぐ自由になりたいのです!」
劣悪な条件で暮らしてきた黒人の魂の叫び!
この声をわれわれもしっかり受け止める必要がある、と思いました。
われわれ日本人の中にも差別感情はある、と思います。
いじめは、その一番身近な表れだと思います。
この声を、他人事として聞き流すのでなく、
「自分たちはどうなんだ」と思い返すことが必要なんじゃないかと、
そんな風に感じました。
 
 
"MARCH:Book Two" Written by John Lewis and Andrew Aydin, Art by Nate Powell(2015)
 
 

MARCH1 非暴力の闘い

2018-11-24 18:29:48 | YA・アメリカ
「MARCH1 非暴力の闘い」 作:ジョン・ルイス、アンドリュー・アイディン 画:ネイト・パウエル 発行:株式会社岩波書店


バラク・オバマの大統領就任式の日,かつての公民権運動の闘士,ジョン・ルイス下院議員は,これまでの道のりを振り返っていた.
南部の農場で生まれ育った少年が,いかにして差別に対抗する非暴力の手法を学び,運動に身を投じるようになったのか.
公民権運動の歴史を当事者の目線で描く,骨太のグラフィック・ノベル第一弾.

(岩波書店HPより)


岩波書店初のグラフィック・ノベル…ということで、まあ早い話がマンガですね。
上にもあるように、ジョン・ルイスの回想記、とでもいう内容になっています。
アメリカの公民権運動については、正直よく知りませんでした。
世界史で習ったんでしょうか。
アメリカの黒人たちが(黒人という言葉は使ってOKだろうか?)
差別を撤廃すべく、非暴力で闘っていくのであります。
座り込みやデモ行進などです。
すさまじく忍耐力が必要で、行動を起こす前には、だれが向いているか徹底的に人選をしていました。
そして行動開始。
レストランでの座り込みが開始されます。
当然のごとく起こる圧力、妨害。
しかし仲間も増えてゆきます。
そして少しづつ事態は変わってくる…というところまでが1巻の内容です。
アメコミを見たことがないので、比較はできませんが、日本のマンガと比較して「ノベル」だけに
文字は結構多いものの、絵で見せる部分も多く、コマ割りなどそんなに違和感はありませんでした。
「公民権運動」をわかりやすく見せてくれて、若い人にはとてもアピールするんじゃないかと思います。
…ということで全米図書賞など、取っているそうです。
やはり若い人に読んでもらいたいですね。
大人ももちろん読んでみてください。

"MARCH:Book One" Written by John Lewis and Andrew Aydin, Art by Nate Powell(2013)
 
 

どこからも彼方にある国

2018-05-23 23:03:54 | YA・アメリカ
「どこからも彼方にある国」 作:アーシュラ・K・ル=グィン 訳:中村浩美 発行:株式会社あかね書房

4251066723 どこからも彼方にある国 (YA Step!)
アーシュラ・K. ル=グィン Ursula K. Le Guin
あかね書房 2011-02-01

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他人とのコミュニケーションが苦手な少年オーウェン。
大学進学のこと、父親に本心を言えないことで鬱々としていたある日、
作曲家を目指す少女ナタリーと出会う。
ナタリーは心の内を話せる友達とになったけれど、
次第に女性として意識しはじめ、二人の間に溝が……。
友情と恋の狭間、両親の期待と自分の夢の間で苦悩し、
揺れる少年の心をSF・ファンタジーの大御所、ル=グィンが美しいアメリカの情景とともに紡ぎだします。
★厚生労働省社会保障審議会推薦図書
★全国学校図書館協議会選定基本図書

(あかね書房HPから)

 
ル=グィンが1月に亡くなった。ご冥福をお祈りいたします。
で、ル=グィンといえば大半の人が『ゲド戦記』を思い出すだろう。
自分は、『ゲド戦記』は、最初の『影との戦い』をずいぶん昔に読んだきりだ。
あとは『闇の左手』。これも昔の話だ。どちらも内容は忘れてしまったが、
いい本だったという記憶はある。
まあ、ともかくこの『どこからも彼方にある国』は、SFでもファンタジーでもなく、
なぜか青春ものである。
なぜ青春もの?
まあ確かに面白く読むことはできた。
不器用な2人の関係もよく書けていたと思う。
ただル=グィンが青春ものを書いていた、ということは意外だった。
そういえば絵本もあったね…。
まあよろしかったらどうぞ。
 

"VERY FAR AWAY FROM ANYWHERE ELSE" by Ursula K. Le Guin(1976)

ぼくはO・C・ダニエル

2018-03-20 23:00:02 | YA・アメリカ
「ぼくはO・C・ダニエル」 作:ウェスリー・キング 訳:大西味 発行:鈴木出版株式会社(この地球を生きる子どもたち)

4790233286 ぼくはO・C・ダニエル (鈴木出版の児童文学―この地球を生きる子どもたち)
ウェスリー キング Wesley King
鈴木出版 2017-10-30

by G-Tools


使ったあとの綿棒そっくりなぼく、ダニエル13歳。
アメフトはへたすぎて控えのキッカー兼給水係。
勉強は得意だけど書けない数字がある。書くと悪いことが起きるから。
寝る前に「儀式」を2、3時間する。
しないと死んじゃうから。ぼくはヘンだ。でも、だれにもいえない。
作者は、主人公ダニエルと同じOCD(強迫性障害)に苦しんできた。
だれにも話せず、ひとりで恐怖とたたかってきた。
そんな作者からの若い人たちへのエールがこめられた作品。
OCDにかぎらず、人は生きていくなかで、自分ではどうにもできない病気や問題にぶつかる。
そういったとき、まわりのだれかに打ち明けて助けてもらうこと、
ひとりぼっちじゃないと気づくことが、乗り越えるための大切な第一歩なのだという、
作者からの力強いメッセージが心にしみる話題作。
(鈴木出版HPから)
 
 
おもしろく読むことができた。
主人公はOCD(強迫性障害)を持つ少年である。
「ザップ」=強迫観念とか、「儀式」=強迫行為。とか。
作者の実体験にもとづくだけに、とてもリアルに描かれる。
パニックや儀式があまりに他人とかけ離れているからだろうか、
「自分はおかしいんだ」とか思ってしまって、
相談することができないのが、この物語の肝である。
作者は、「病気なんだから一人でかかえこむな」とメッセージを送っている。
自分もこんな障害があることは知らなかった。
この本が、特に強迫性障害を持つ人に読まれることが、
自分の障害を発見するきっかけになるかもしれない。
周囲の人も、この障害について理解を深めることはよいことだと思う。
「おかしな人」でなく、「病気なんだ」と気づくことが肝要である。
ぜひ多くの方に手に取ってもらいたい一冊である。
 
"OCDANIEL" by Wesley King(2016)