私の小学校の校区には漁港がありました。
写生大会は必ず漁港。
トロ箱を見て、ふと、車を降りてみたくなった。
夏のムッとする暑さに、懐かしい漁港の臭い。
決していい匂いとは言えない、けど、心のどこかを揺らすような、切ないにおい。
幼い頃、このにおいは日常だった。
いつのまにか、街からは「臭い」が消え、喧しい「音」も消えた。
あの頃、港ではトロ箱に詰める氷を作る製氷工場の音が、ひっきりなしに聞こえてた。
もちろん、今は、何も聞こえない。
ただ、海鳥の鳴き声がするだけ。
それが、いいとか、悪いとかじゃない。
そんなこと覚えてる私もいつか、土に還り、今日の日常が、別の誰かの心に刻まれるのだろう。
でも、どうか、海は青く、空も広く、海鳥はずっと同じように鳴いていて欲しい。