楽器を演奏するときや歌を歌うときは、「腹式呼吸で。」とは、よく言うんだけども、じゃあ、その「腹式」の「お腹」ってどこなんだろう。
オカリーナのレッスンで、ある方が「息を吸うとこのあたりがふくらみますよね。」と手を当てたのが「胃のあたり」だったので、驚いた。「それは、違う!」でもそうなんだと気がついた。腹式呼吸の説明をするときに「お腹に息を入れるように。」という表現を何気なくよく使うんだけれど、そう言ったときにイメージする「お腹」って「胃のあたり」だったんだな。
その方は意識をして「お腹」=「胃のあたり」が「前に出るように」意識してふくらませていたという。
その方にぼくの後ろからぼくの横腹を両手の手のひらで支えるように当ててもらって、息を何度か吸ってみた。
「横か、むしろ背中の方ですね。」
そうなんです。こういうものは、妙に理屈で説明しようとするからややこしいんだということがよくわかった。解剖学的には、「横隔膜」が上下することで安定した深い呼吸を得ることができる。そんなことを説明されたところで、言ってる本人ですら、「ここが横隔膜です。」とは説明できない。ついつい「お腹で」という説明になってしまうのだが、「胃のあたりをふくらませるのだ。」と思い込ませてしまう結果になるのだと「目からウロコが落ちる」心境で気づかされた。
「なんだそんなこと今頃気づいたのか。」
と言われそうだが、まさか胃のあたりをふくらませる努力をされているとは知らなかったのだ。
腹式呼吸の体験をする方法としては、前屈みになって、ゆっくり全部はいて、全部吸う。そうすると、胃のあたりはむしろ圧迫されるので、ふくらむことはない。また、仰向けになってお腹に手を当てて、静かに深く呼吸する。こうするとやはり背中が固定されるので、胸式の呼吸から自然な腹式の呼吸を体感することができる。
そのオカリーナの上手な生徒さんは、これからきっともっと安定した音で吹くことができるようになるだろうと思う。お互い大きな一歩だ。
レッスンの最後に「お腹(胃のあたり)は、息を吸うと出るのではなく、年齢とともに出てきます。」とお腹をさすりながら・・・。