Web はデータを見て、それを根拠に仮設を立て、目標に向かって行動するには最適なメディアである。「PDCA サイクルを回していく」という事が大切ではあるが、その中で出発地点である「データを見て仮設を立てる」という部分に今回は注目してみたい。
例えとして、「ソーシャルメディアの視聴データ」「インターネット利用者及び人口普及率」「パソコン及び携帯電話からのインターネット利用の機能?サービスのアンケート」を見ていただこう。まずは今年2月の日本での主要ソーシャルメディア(mixi、Twitter、Facebook)の視聴データである。
2011年5月月間 日本の主要 SNS サイトの利用状況(家庭と職場の PC からのアクセス)
ネットレイティング社の調査だが、よく目にするデータだと思うので、もう見て「ソーシャルメディアが伸びてるのは知ってるよ。チェックしてるに決まってる。」というデータかと思うが、とりあえず掲載してみた。次に22年末までの「インターネット利用者及び人口普及率」のデータが下図となる。
インターネット利用者数及び人口普及率の推移(個人)
これもまた見慣れたデータではないだろうか。インターネットが普及していることも人口のほとんどをカバーしていることも周知の事実であろう。
この2つのデータを見ていただいたのは「インターネットは社会インフラとして確立されている」「ソーシャルメディアが伸びている」からといって、「これからはソーシャルメディアに力を入れてより広い層にアピールしていこう」という事を促したいわけでは決してない。確かに最近の Web 動向としては、ソーシャルメディアに注目が集まっている。というのも Facebook や Twitter が普及してきたからで、皆「ソーシャルメディアの波に乗り遅れないように」との思いもあるだろう。
ちなみに最後のこちらも見慣れたデータだろうが、「パソコン及び携帯電話からのインターネット利用の機能?サービス」のアンケートデータである。
パソコン及び携帯電話からのインターネット利用の機能?サービス(個人)(複数回答)(平成22年末)
周知の事実で「伸びてきている」ソーシャルメディアは実は「利用の機能?サービス」のアンケートでは「PC:5.8%」「携帯:4.8%」となっているのである。このアンケート調査では、「企業?政府等のホームページ(ウェブ)?ブログの閲覧」「個人のホームページ(ウェブ)?ブログの閲覧」「メールマガジンの受信」よりも下位にあたる。この一つの表だけをみれば、「ホームページやブログ、メールマガジンにもっと力を入れよう」ということになるのではないだろうか。
ただ、「メールマガジンやホームページがまだ現状ではソーシャルメディアよりも有効だ」といったことを主張するつもりは全くない。ソーシャルメディアが近年稀に見る伸びを見せている事も事実であるし、ホームページ?ブログ?メールマガジンが有効な手段と見る事も事実だと考えられる。
ホームページやブログだけでは、来訪が頭打ちになってきているものもあるだろうし、メールマガジンの配布も人によっては「うざい」と思われかねない。そういった点では Facebook や Twitter は多くの人にさらに気軽にリーチ出来るであろうことは推測できるが、友達?フォロワーを多く集めているのは、元々メールマガジンの著者であったり、アルファブロガーであったり、ある程度の規模を持った企業だったりする場合が少なくないし、最終的な落とし所はホームページやブログ?メールマガジンへと誘導していたりする。
ホームページしかなくて、そのホームページの来訪も少ないようであれば、まずはホームページへの来訪を増やすことだろう。そのためにソーシャルメディアが必要であれば、取り入れればいいし、継続的に利用されるようなサービスであれば、メールマガジンも有効となってくる。
肝要なのは、「あるデータがあれば、関連したデータも踏まえて、自社(自分)の現状と掛け合わせたうえで有効と考えられる手段を選別する」ということで、データを集めて多角的な視点から検討することではないだろうか。特に最近はユーザーへリーチできる方法が多くなり、デバイスも充実している中で、広く浅く手をつけられる方も多く見受けられる。「有効な手段は全部やりきる」のが一番良いかと思うが、人的にも経験的にも負荷がかかる場合が少なくないので、「選択」と「集中」を是非、行っていただきたい。
●執筆―――――――――――――――――――――
宗 和志(JWDA 上級ウェブ解析士)
E-mail:kazushi.so@gmail.com
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