楽しかったはずの飲み会

会社を定時で上がって、ギリギリ待ち合わせ場所に駆け込んだ。

Ｇさん、Ｔさん、Ｍさん、Ｋさんがいた。

でも、女の子はいない。
時間になっても連絡来ない。

Ｍさんは「駄目だな…」と呟いた。
Ｋさんは「日記書いてね」みたいな事を言っていた。

待ち合わせ１０分後、女の子３人とご対面。

ヤバイ、レベル高過ぎだよ。
スト４～５といった感じ。
正直、楽しめないかも。
ソロで歩いてたら、誰でも声を掛けるレベルだと思う。

僕は第一印象が大事だと思い、

「初めまして！よろしく！」

なんて、陳腐な挨拶をした。

一人が微妙な反応を示すも、他の２人はスルー。
冷たい風が吹いた・・・。

Ｔさんの案内で、個室の飲み屋に行った。
広さは６畳くらいでカラオケボックスみたいな感じ。
小さい規模の飲み会には最適だった。

トークはＧさんＴさんのツートップが引っ張っていた。
僕はポカーンとしてて、普通にご飯を食べてるｗ
元々、話すよりも聞いてる方が好きだからそれで全然良かった。

キャラとしては、

Ｇさん＝頼りがいのある先輩
Ｔさん＝楽しいお兄さん
ちゃっきー＝道程

みたいな感じｗ

僕はいつもそういうキャラなので、非常にやりやすくて良かった。
Ｔさん、Ｇさんのトーク力のお陰だ。

普通に場が盛り上がり、終電間際。
女の子の一人が

「会議をするから。」

と言って、他の女の子を呼び寄せた。
Ｇさん、Ｔさんは個室を出て行って、僕と女の子３人が室内に残る。

女の子、個室を出て行く。
僕はポカーンとして後を追うと、こんな言葉が聞こえてきた。

「ダッシュ！！」

『もしや、これは・・・。』

あの楽しい時間の後、こういうことは受け入れたくなかった。
僕はその場で呆然と立ち尽くした。

Ｔさん、Ｇさんが戻ってくる。
事の成り行きを説明した。

「やられた！すぐに追いかけろ！」

その言葉を聞いて、ようやく我に返った。

荷物を持って、ダッシュで追いかけた。

唯一、止められる立場にあったのに何もできなかった。
そんな罪悪感からか、絶対に捕まえてやるという気持ちで走った。

ホームに着く。
端から端まで走って探すもいない。
見逃したかなと思った。
でもあきらめられないという気持ちが、僕をやって来た電車に乗らせた。

先頭車両であることを確認して、後ろへと歩きながら探した。
このときの僕は銭形警部と同じくらいの、逮捕へのモチベを持っていた。

裏切られた。
間違ったことがまかり通るのが許せない。
何も出来ずにいた自分も許せない。
盛り上げてくれたＧさんＴさんに申し訳ない。

そして、電車内で発見した。

女の子は２人でいた。
バツが悪そうだった。

どうしてお金を払わずに行ってしまったのかと聞いたら、

「今日、払うって聞いてなかったし。」
「おごりだよね～。」
「お金持ってないし。」

正直、お金よりも楽しかった時間を返せと言いたかった。
でも、責任を取らせてこの子達に非を認めさせたい。

「身分証明書を出して！」

事務的な口調で、高ぶる気持ちを抑えながら（実際はどうだったかわからない）そう言った。
まるで警官の職質みたいな事をしてるなと思った。
されたことはないけど、多分、こんな感じだろう。

女の子は「これで良いでしょ！」とキャッシュカードを僕に渡した。

「お金入ってないけど、落とさないでね！」

これが身分証明書の代わりになるか疑問だったけど、向こうから出してきたので受け取ることにした。

Ｓ谷に着いて、２人は改札を出て行った。

僕はＳ街に戻り、ＧさんＴさんに結果を報告した。
２人とも、さっきまでの楽しそうな顔とは別人のようになっていた。
そこにはしゅうさんがいたのだけど、彼だけはいつも通りだった。

「あきらめたら良いじゃん！ちゃっきー、連れ出ししよ！！」

正論なのだけど、それで済ませたくないという気持ちが僕の中にあった。
彼のお陰で少しホッとしたけど、やるせない気持ちは無くならなかった。

結論：やっぱり不細工でも性格の良い子の方が良いよね。