鬼畜の美食家 Ⅱ 4章
美人でスタイル万能の洋子は珍しく残業をしていた。と言うよりは美智子から強引に奪った彼氏に最近飽きてきたようで今夜の目当ては社内で評判の新しい男との出会いを模索していた。
夜も7時を回るとすっかり外は暗くなっていて、今や全国を地獄に導いた鬼畜の美食家たちのニュースは連日の報道で、民衆は疲れはてていてクーラーの効いたビルの職場は一つ、また一つと明かりが消えていった。
そして時計の針が9時を回るころにようやく洋子と彼氏はエレベーターの中に居て洋子に誘導するかのように男に抱き着いた。 洋子の耳に聞こえる新しい男の胸から鼓動がドクドクと早くなっていることに洋子は心を奪われていった。
だが洋子と新しい男の間を割って入るかのように、古くなった美智子の元恋人から携帯に電話が入った。
「あ、うんうん、残業したから今夜は真っすぐに家に帰るわあ」と、洋子は彼氏に嘘をついて早々と電話を切ると目の前の新しい男に抱き着いて唇を少し上にあげ新しい男にキスをせがんだ。
ところが二人でビルから出たと同時に帽子とサングスをかけた男がその様子をうかがっていて、二人はそのことには全く気付かなかった。
洋子と一緒に歩く新しい彼氏は自分たちが尾行されていることも知らずに、洋子は彼氏の腕に自らの身体を押し付け楽し気に笑みを浮かべた。
「うん、中々のプロポーションとサングラスの男は右頬を斜めに声を出さずに不敵な笑みを浮かべた、そして誰かに携帯で電話をかけた。」
そして洋子と親密になっていった彼氏はレストランで食事を楽しむと二時間後の11時にレストランから出て、高級なホテルに辿りついた。
二人は言葉もかわさずに勢いよくベッドに飛び跳ねると洋子が上になって新しい彼氏にデイープキスを数回楽しんだ。
そして彼氏は洋子の前で下着姿になると、洋子をそのままにしてバスルームへと足を運んだ。
その間、洋子は待ちきれんとばかりに時計を何度もチェックしては彼氏がバスルームから出てくるのを待って居た。
「ああぁぁー! いい湯だったあぁー!」と、言ってバスルームから出てきた彼氏と入違いに洋子は彼氏の前でブラウスとスカート、そしてパンストを脱ぐと足早にバスルームに入っていった。
洋子はこの男に早く抱かれたくて心躍らせつつ身体の隅々まで丁寧に洗い女の魅力全開でバスルームを後にすると踊る心を抑えてリビングへと向かった。 だが、リビングにもベットルームにも男の姿はなく洋子は唖然とした。
男はズボンもワイシャツもネクタイに靴下まで残したまま忽然(こつぜん)と姿を消し洋子を混乱させた。 洋子はとっさに警察へ電話しようとしたが、こんな事が会社にバレたら自分は終わりだと、携帯をソファーに投げ捨てた。
そして突然、部屋の明かりが消えたと思った瞬間、洋子は口をふさがれ気を失った。 そして何時間が経過していたのだろうか洋子が目を覚ますと、ホテルで消えた彼氏が口をふさがれて洋子に何かを伝えようとしていた。
彼氏は両腕を後ろで縛られていて洋子も同じように両腕を縛られ口もテープでふさがれていた。 そして数分が経過した頃、顔半分を仮面で隠した白衣を着た男が歩いて来るのが見えた。
白衣を着た男が二人に近づくと「今夜はお二人の思い出となる最高の一日になりますよ」と、ニヤリと笑ったその口元からは喜びの声が聞こえると同時に二人は白衣の男の手によって全身麻酔を打たれ気を失った。
「さあ皆様、本日は雄と雌の獲物でございます」と、天井から吊るされたカーテンを少しだけ開け6人のマダムと紳士たちが拍手をして、カーテンの方へ近づき雄と雌の身体を舐めるように見て興奮した。
いい雌じゃないかあぁと喜ぶ紳士といい雄ねえぇと、厚い胸板に手を滑らせたマダムが口元を隠して白衣の男に熱い眼差しを見せ自分の席に戻って行った。 そして同時に客達は喜びつつ自分の席に戻って行った。
そして薄暗い部屋の天井には豪華なシャンデリアがその怪しげな光で客達のワイングラスを照らしていた。するとカーテンの向こう側から白衣の医者らしい男が皆様、今夜は趣向を凝らして食する前にこの肉を舐めると言うのは如何でしょうか?。
客達は総立ちで拍手をして歓喜すると足早に紳士は女の方へと駆け込みマダム達は男の方へとドレスの裾を持ちながら足を急がせた。
紳士とマダム達は我先にと雄と雌の肉に舌を滑らせその場はまるで子供たちのお祭り的な雰囲気をかもしだしていた。
そして看護師らしき女性が雄と雌の下着をはずすとマダムはその股間に垂れ下がるペニスを口いっぱいに頬張り、紳士たちは雌の乳房や大きく広げられた両足に舌を滑らせるものと真ん中のアワビに舌をこれでもか! と、ばかりに差し込んで嫌らしい音を立てた。
「では、オーダーをこれから聞いて行きます」と、夢中で舐める客達を落ち着かせた。
我を忘れて夢中で舐める客達は白衣の男の言葉に笑みを浮かべながら個々の椅子に腰を下ろした。
「それでは雄の方から参ります」と、マダム達に視線を移すと「私は股間がいいわ、ペニスの刺身と睾丸の白子入りの蒸料理と残った皮はミディアムで焼いてもらおうかしら」と、いい別のマダムは「私は尻肉のスライス焼きをもらおうかしら」と、笑みを浮かべた。
「それでは雌の方から参ります」と、紳士達は乳房を一つと、右足の尻から内ももに裏モモの肉をステーキでと、目をギラギラさせた。そして紳士達は思い思いの料理を白衣の男に伝えると「かしこまりました」と、紳士達に一礼して奥の方へと移動した。
そして数十分が経過すると肉の焼けるいい匂いが客達の場所にも届いたようだった。
雄の股間は根こそぎ切り取られ、性転換をした男のようになり、雌は二つの乳房と尻肉の殆どを根こそぎ剥ぎ取られ、裏モモと内もももまた血管と骨だけを残して全てを切り取られた。
客達は自ら指定した料理に舌鼓をうって舌を鳴らすとゴクリとワインで口をリセットした。 客達は今夜の晩餐を笑みを浮かべながら個々に喜びを隠さなかった。
そして客達が料理を楽しんでいる間に、白衣の男はターゲットされた男と女の身体に応急処置をしつつ、部屋の掃除を入念に施し目立たない場所に犬の毛を一本落としてニヤリと笑うと、いつもどうり客達が使った食器とナイフとフォークは黒いバック子に入れられた。
客達は個々に呼んだお抱え運転手を呼び高級外車に乗ってその場を去り、繋がっているであろう昔の黒電話から119番に通報を入れて白衣の男と看護師はその場を立ち去った。そして再び救急車から警視庁の合同本部に連絡が入り刑事達は大慌で病院へと急行した。
翌日、美智子と幸子はいつもどうりに出勤し、洋子と一人の男性社員が無断欠勤していることを知った。 それから数日後に新聞に洋子と別の部署の男が拉致され鬼畜の美食家たちの被害にあったことを知った。
「いい気味だわ」と、美智子は憂いを隠さず。新聞を読んだ幸子は自分の同僚と言うこともあって怒りが込み上げたようだった。 すると美智子から幸子に電話があって「これから洋子先輩にお見舞いに行こうよ」と、声を弾ませた。
美智子は自分から奪われた元彼の前に行くと「被害者が貴方でなくて本当に良かったわね~」と、声を弾ませながら笑ってみせた。 そして仕事の終わった午後5時に美智子と幸子は洋子のいる病院に花束を持って見舞いに行ったが、警察に阻まれて部屋に入れずにそのまま帰って来た。
そして警視庁と所轄の合同捜査本部では、鑑識の発見した犬の毛一本の報告を受け、科捜研からは外来種ではないかと報告が挙げられた。 そしてコロナのまん延するオリンピックの真っ最中にしてテレビでは今回の事件を連続犯と位置付け現在も捜査中と警察から発表された。
そんな中で今回の被害にあった洋子は自分の身体の肉が40%も剥ぎ取られたことにショックを受け身心喪失状態に苦しんでいて、男から無理やり性転換をさせられたこの被害者もあまりにも大きいショックに未だに事情聴取の出来ない日々を送っていた。
そして捜査本部では警視庁の一課長が大勢の刑事達を前で「今回発生した連続事件に付いて必ず星を上げる!!」、と大声を上げると各班長達は「よし!! 行くぞ!!」と、本部の壁に声を反射させて一堂にバタバタと出て行った。
「それにしても・・・ 前回は猫の毛で、今回は犬の毛とはいったい、犯人達は何を我々に伝えているのか」と、机に左腕を起てて左頬をてのひらで軽く抑えた。
更に刑事と鑑識と科捜研が刑事の同行で現場を調べに行ったものの、前回同様に犬の毛一本と会議用のテーブルに付着していた血液を採取したが建物の玄関前にある多数のタイヤ痕を鑑識が突き止め科捜研にも協力を依頼した。
「現場の玄関に残された7台のタイヤ痕は一体何を指しているのか」と、科捜研では詳しくその痕跡と同じ痕跡がないか過去の事件との関連性を調べていた。
まずはタイヤの種類と製造元の捜査。そして使用されている車種の捜査、そして被害者の関連性が無いかの三つの問題をクリアしなければならない。
捜査一課長は被害者の入院先の大学病院の教授に直接話を聞いていて仰天していた。 教授によれば被害者の身体の肉を取るに際して一本の血管も傷つけていないことと、それがどんな高度な技術なのかと言うこと。 教授はゴットハンドと喉をごくりと鳴らした。
そしてこんな高度な技術を持っているゴットハンドと称される人物は世界でも数人もいればいい方で恐らく日本にはこれほどの技術を持った医師は恐らく居ないだろうと語った。
「そうか! 我々の捜査の基準は日本人が対象だったが外人も入れるべきなんだ」と、捜査一課長は顔をこわばらせ「相手は医者ではないかも知れない」と、右手に拳を握った。
その頃、所轄の刑事は若い警視庁の刑事に、こんなやりかたもあるとばかりに財閥や政治家の家の玄関で堂々と胸を張ってインターホンのボタンを押した。 そして最近、近くに引っ越してきたので御挨拶に参りましたと穏やかに伝えると、さっそく猫を抱いて出てきた奥さんが玄関のドアをあけた。
あら、可愛い猫ちゃんですねえー と、満面の笑みを浮かべて一度だけ猫を抱かせて貰った。 所轄の刑事のやり方に警視庁の若い刑事は「やられたあぁー」と、ばかりに緊張した頬を緩ませた。そして猫の毛を一本抜いてポケットにしまった。
そして所轄の刑事と警視庁の若い刑事たちはしらみつぶしに猫の毛を確保していき、直ぐに集めた猫の毛を科捜研に持ち込んだ。そして事件現場に残された猫の毛と合致した猫を見つけた。
だが科捜研に入った所轄と警視庁の刑事達に科捜研は思わぬ回答を出した。 「この猫の毛の持ち主は政財界のドンと呼ばれる自民党の幹事長であった」と、科捜研の研究員たちは肩をがっくりとさせた。
そしてこの情報は直ぐに捜査一課長に報告されたものの、このまま検察庁の特捜班へ行っても証拠不十分として捜査には首をかしげないだろうし、何か他に別の方法はないかと思った時、一課長は苦し紛れに一本の電話を掛けた。
「よおぉ!、しばらく!」と、電話の相手に娘さんは大きくなったろぅー と、一応の世間話し。相手もそんな雑談をするために俺に電話よこしたわけじゃないだろうと切り返して来たのは「公安」の調査官であった。
一課長は公安の調査官に一連の連続事件の話題を小声で告げると「何か情報はないか?」と、公安の調査官に単刀直入に聞き耳を立てた。 すると調査官は、あるにはあるんだがどうもお宅らの上とうちらの上が重い腰を上げないんだよなあ~ と、渋い声を出した。
「なんだその重たい腰ってのは」と、一課長が尋ねると公安の調査員が「ここでは言えない何処に盗聴器があるかわかったもんじゃないから近いうちにオマエの家にいくからお互いのスケジュールを後できめようか」と、公安の調査官は電話を切った。
一課長は公安の友人の言動に何かふきつな予感を感じさせていた。