ヴォイニッチの科学書・ブログ版

ポッドキャスト科学情報番組「ヴォイニッチの科学書」ブログ

次回放送お休みのお知らせ

2007年02月16日 | お知らせ
 インターネットラジオ局くりらじがお届けする最新科学情報番組「ヴォイニッチの科学書」ですが、下記の日程は放送お休みとさせていただきます。
 毎週楽しみにしてくださっている皆様、申し訳ありません。


2007年2月16日 21:30~ 生放送お休み
2007年2月17日 05:00~ ポッドキャスト配信お休み


大阪市が學天則復元

2007年02月11日 | 科学雑談
 2月10日に公開した Chapter-147 は「万能科学者西村真琴と學天則」でしたが、この収録のわずか 2日前に大阪市が「平成19年度当初予算案報道資料」において學天則の復元事業に着手することが発表されていました。

平成19年度:当初予算案報道資料
http://www.zaisei.city.osaka.jp/index.cfm/13,7456,17,7,html

 これは上記リンク先の通り、3項目掲げられた「新しい文化や産業を創造し、活力と魅力あふれるまちに」の3項目目「人が輝き新しい文化を生む、世界に貢献する大阪」に関連して「日本初のロボット「学天則」の復元事業 2,100万円・・・科学館において大阪の地で作られた「学天則」を復元するとともに、作業工程を活用した講座を開催」と資料の 109ページに記載されています。
http://www.zaisei.city.osaka.jp/index.cfm/13,7456,c,html/7456/20070207-212559.pdf

 東洋初のロボット。その独特のビジュアルから一度目にした人はみな虜にしてしまう不思議な魅力を持つ學天則がついに復元されるようです。

Chapter-147 万能科学者西村真琴と學天則

2007年02月10日 | 番組要旨
今回の放送を聴く

 長野県松本市に1883年に生まれた西村真琴さんはレオナルド・ダ・ビンチのような卓越した科学者でした。生物はみな共存共栄という信念の元、満州や朝鮮などの動植物の収集と研究に尽力し、ロボット学者としては日本で最初にロボットを制作したエンジニアでもあり、日本で最初の科学小説家、北海道大学植物学教授、アイヌ人孤児・中国人孤児の救済に尽力した慈善事業家、政治家、そして晩年には子供は世界共通の財産として幼児教育の振興に努めました。

 西村真琴さんは広島高等師範学校卒業後、満州の南満医学堂において生物学教授として3年間勤め、多数の標本を作製しニューヨーク自然史博物館に寄贈したりもしています。その後の欧米の研究者との交流の過程で欧米の植物学の水準の高さを知り、教授職を辞して満州で製作した大量の標本をかかえて渡米しコロンビア大学植物学科に入学しました。この標本を寄贈したのがきっかけでニューヨーク市自然科学博物館調査研究員を委託される幸運に恵まれ、大学に在学した3年間は博物館でアフリカの動植物の分類の仕事に携わりました。

 しかし、アメリカ人が日本人を見る目は冷たく、また科学の最先端を走る桃源郷と思っていたアメリカの技術もその多くが、おりしも勃発した第一次世界大戦の最新殺戮兵器へ姿を変えました。西村真琴さんは科学技術の進歩は人類の明るい未来への歩みと共に進むと信じていましたが、ここで自分の考えていた西洋の最先端科学に失望し、3年で帰国します。

 その後西村真琴さんは北海道大学に教授として迎えられ、水力発電所からの排水によって絶滅寸前となっていたマリモの救済に全力で取り組み、マリモを他の湖に移植することに初めて成功し、この業績を持って東京帝国大学から理学博士の博士号を授与されます。しかし、当時日本の国民すべてが急速に進展する科学技術に酔いしれ、科学技術に支えられたバラ色の未来と無限の可能性を信じていましたので、それを批判して自然の大切さを訴える西村真琴さんに対する評価は冷酷でした。

 そんな折、44歳の時に出版した科学随筆が評判となり、その出版に携わった大阪毎日新聞の誘いで大阪毎日新聞に論説顧問として入社することになります。大阪毎日新聞入社の翌年、当時西村真琴さんは45歳ですが、この歳に、西村真琴さんの業績として最も有名な「學天則」の製作が行われました。

 この年は昭和3年で、京都で昭和天皇御大礼記念博覧会が開催され、大阪毎日新聞社の出品作として製作されたのがアジアで最初のロボット「學天則」でした。學天則は金色に輝き、机に座った姿をした座高が2.4メートルもある巨大なロボットです。右手には字を書くために鏑矢を持ち、左手には霊感灯という不思議な道具を持っていました。当時海外で試作されていたロボットは重労働など人間の肩代わりをする奴隷のような機械として研究が行われていましたが、學天則の仕事は「ものを考えること」でした。

 大きさが10メートルもある巨大な機械仕掛けの鳥が鳴き声を上げると學天則は思考を始めます。左手の霊感灯が光るのが學天則がアイディアを思いついた印です。霊感灯がひらめくと學天則はかっと目を見開き、天を仰いでにっこりほほえみ、鏑矢をなめらかに動かしてそのアイディアを書き留めます。筆記を終えると自らのアイディアに自らが納得するように首を左右に振り、そして微笑んだと言います。
圧縮空気で動く學天則はあたかも人間が呼吸をするように穏やかに人間と寸分違わぬ動作をしたといいます。西村真琴さんはロボットを機械とは考えずに、生物の一員として迎えようとしていたのでした。

 やがて西村真琴さんはそれまでの崇高な知的活動の限界を悟り、自らの身体を盾にした行動に取り組み始めました。医療奉仕団を結成して戦争で傷ついた中国人の救出にあたったり、戦争の犠牲となった中国人孤児を日本の学校に通わせた後に母国中国に帰し職を斡旋する中国児童愛育所の運営をしたり、孤児の救済や保育の改革に73歳まで取り組みました。

 なお、二代目水戸黄門で有名で1997年に亡くなられた俳優西村晃さんは西村真琴さんの次男に当たります。また、學天則はその後、ドイツに売却されましたがその直後に行方不明になっています。


今回の番組は筑摩書房から1996年に発行された
大東亜科学綺譚」荒俣 宏 (著)
を参考にしました。
この本には西村真琴さんの他多くの日本人科学者が登場します。
是非ご一読下さい。

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講演会
教科書が教えないホットな科学の講演会3
宇宙のはじまりと終わり
2007年3月3日(土曜日)10:00~11:30
下関市立彦島図書館(入場無料・事前申込不要)
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出版物
最新科学おもしろ雑学帖
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《今週号の目次》
・Chapter-147 万能科学者西村真琴(詳細)
・惑星探査機が謎の減速
・イオンエンジン搭載小型惑星探査機「はやぶさ」
・イネの収量ホルモンを活性化する遺伝子発見
・タイタンにメタンの雨を降らせる雲を発見

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Chapter-146 サイエンスニュースフラッシュ 2007年1月

2007年02月03日 | 番組要旨
今回の放送を聴く

京都大学の研究チームが数字を理解する際に活躍する脳の領域を明らかにしたと発表しました。
 ローマ数字ではCが100、 Mが1000となり、桁数のより小さい数の文字が、より大きい文字の左にくると、大きい文字から小さい文字を引け、という読みの規則などもあります。従ってCMXCIXと書くと、999を意味することになります。
 今回の研究ではこのようにある人にとってなじみのない数字を見たときの脳の血液の流れと、その数字を読むことがだんだん上達していく過程の脳の状態を比較することで、脳のどの部分が数字の理解に関係しているかを分析しました。その結果、左半球前頭葉の背側部中央のかぎられた場所のニューロンのみが数字に習熟するにつれて活動が活発になっていくことがわかりました。

 九州大学と東京大学医科学研究所の共同研究チームは、日本人の脳梗塞の発症に関わる遺伝子多型を発見したと発表しました。
 脳梗塞患者さん1,126 人と同数の一般健常人について、全ゲノム上の5万2千カ所のSNPと呼ばれる遺伝子の中の一つの塩基と呼ばれる構成成分が普通と異なっているタイプを比較した結果、プロテインキナーゼC エータ(PKCη)という遺伝子上のSNP が脳梗塞と関連していることをつきとめました。この遺伝子変異がある患者さんではプロテインキナーゼC エータの活性が1.6倍高くなり、脳梗塞の発症率では最高で2.8倍も高くなることが福岡県久山町における疫学的調査によってわかりました。

 自律型海中ロボットを使った海底の観測でインド洋の水深2700メートルの海底で世界最大規模の溶岩台地を発見したと、東京大などの調査チームが発表しました。これは大規模な海底山脈の谷の部分が溶岩で埋め尽くされた形状で、世界でも例がないものです。その規模はインド洋を南北に走る中央海嶺に沿って長さ約26キロ、幅約2.7キロと細長く台地中央の平らな部分は溶岩が厚さ約300メートルも堆積していると推定されました。これは数万年前から現代までの間に海底山脈から粘性の低い溶岩が大量に噴き出て形成されたようです。この溶岩台地が形成された仕組みを検討することによって地球内部の大規模な対流を解明するヒントが得られる可能性があります。


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講演会
教科書が教えないホットな科学の講演会3
宇宙のはじまりと終わり
2007年3月3日(土曜日)10:00~11:30
下関市立彦島図書館(入場無料・事前申込不要)
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《今週号の目次》
・数字を理解する際に活躍する脳の領域
・日本人の脳梗塞の発症に関わる遺伝子多型を発見
・インド洋の海底で世界最大規模の溶岩台地を発見
・音を認識する神経細胞
・紅茶の心臓病予防効果はミルクで無効
・日本でも翼竜が繁殖していた
・植物の形を自由に小さくする新しい酵素を発見
・炭酸飲料好きも遺伝子が決める
・D体、L体混合物から D体のみを選び出す新しい方法
・透明な電子回路の実現に一歩近づいた
・深海の熱水噴出口から青い熱水の噴出を初めて確認
・満身創痍のハッブル宇宙望遠鏡
・マゼラン雲は何者か
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