安倍晋三首相による靖国神社参拝以降、ぎくしゃくする日米関係。「媚薬オバマ政権は日本軽視」「なぜ中国に付け入る隙を与えるのか」という批判が、今も太平洋の両岸で飛び交う。日本政府関係者は「日米は別れられない夫婦」と関係修復を目指すが、首相側には同盟強化のためコツコツ積み上げた努力が裏切られたような思いがにじむ。日米は首相の「片思い」だったのか。思いが届かない一因は、キューピッド役の不在にもあるようだ。
「日米がいがみ合っていても、喜ぶのは中国だけですよ。『嫌いだ』というだけでは子どもと同じ」
外務省に近い東京・虎ノ門の老舗洋食屋。中堅の外務官僚は、熱々のピザを頬張りながら切々と説いた。普段はワインをがぶ飲みし、こちらが驚くような食欲をみせるのだが、この日はピザの進み具合が悪い。テーブルは不思議な緊張感に包まれている。
この中堅官僚氏自身も、オバマ政権には内心じくじたる思いがある。「あれっ」と強く思ったのは昨年9月のことだという。
当時のオバマ氏は内戦で化学兵器を使用したシリア・アサド政権への軍事介入を決断。しかしロシアの仲介などを受けると約2週間で矛を収めた。
「大統領が『戦争する』といえばできてしまうのが米の怖さ。その牙をあっさりと抜いてしまうとは…。結果が正しかったかは別にして、北朝鮮で何かあったときに頼りになるのか」
もう1つオバマ政権に抱く不信感は、中国との距離感がころころと変わることだ。
中国の習近平国家主席は、米中2カ国で世界を仕切る「新たな大国関係」(G2)が持論。昨年6月のオバマ米大統領とのノーネクタイ会談では「太平洋には米中両大国を受け入れる十分な空間がある」と述べ、日本抜きの国際秩序の再構築を持ちかけた。
「オバマ氏は当時、習氏の誘いを断り、安倍首相も電話で謝辞を伝えた。ただ側近のライス大統領補佐官は昨年11月と今年1月、『新たな大国関係』を部分的に認めるような発言をしている。私は2カ月に1度程度ワシントンに行くが、中国をどの程度のパートナーと位置付けるのか、米政府要人の意見はまだら模様。人によって強弱が違い、素朴に恐ろしさも覚えますよ」
「日米がいがみ合っていても、喜ぶのは中国だけですよ。『嫌いだ』というだけでは子どもと同じ」
外務省に近い東京・虎ノ門の老舗洋食屋。中堅の外務官僚は、熱々のピザを頬張りながら切々と説いた。普段はワインをがぶ飲みし、こちらが驚くような食欲をみせるのだが、この日はピザの進み具合が悪い。テーブルは不思議な緊張感に包まれている。
この中堅官僚氏自身も、オバマ政権には内心じくじたる思いがある。「あれっ」と強く思ったのは昨年9月のことだという。
当時のオバマ氏は内戦で化学兵器を使用したシリア・アサド政権への軍事介入を決断。しかしロシアの仲介などを受けると約2週間で矛を収めた。
「大統領が『戦争する』といえばできてしまうのが米の怖さ。その牙をあっさりと抜いてしまうとは…。結果が正しかったかは別にして、北朝鮮で何かあったときに頼りになるのか」
もう1つオバマ政権に抱く不信感は、中国との距離感がころころと変わることだ。
中国の習近平国家主席は、米中2カ国で世界を仕切る「新たな大国関係」(G2)が持論。昨年6月のオバマ米大統領とのノーネクタイ会談では「太平洋には米中両大国を受け入れる十分な空間がある」と述べ、日本抜きの国際秩序の再構築を持ちかけた。
「オバマ氏は当時、習氏の誘いを断り、安倍首相も電話で謝辞を伝えた。ただ側近のライス大統領補佐官は昨年11月と今年1月、『新たな大国関係』を部分的に認めるような発言をしている。私は2カ月に1度程度ワシントンに行くが、中国をどの程度のパートナーと位置付けるのか、米政府要人の意見はまだら模様。人によって強弱が違い、素朴に恐ろしさも覚えますよ」