寄稿・講演/未晒し蜜ロウワックス

小川耕太郎が語ります! ~雑誌寄稿、講演会~

第8回檜フローリングに特化した製材工場編/リフォーム産業新聞2007.4.10

2007-04-10 13:21:11 | リフォーム産業新聞2006~
リフォーム産業新聞 2007年4月10日付 No.776

●しぜんな自然派家造り
 第8回ヒノキフローリングに特化した製材工場編

 ~大量のヒノキと土地を一度に購入~


 静岡に加藤木材産業㈱という製材工場がある。数年前までは通し柱や母屋角を中心とする製材工場であったが、今ではヒノキフローリングの製造に特化し、フレビオ(一般のヒノキフローリング)とムク暖・皇樹KOUKI(床暖対応フローリング)という商品名で業績を伸ばしている。

 社長の加藤力也さんとはフローリング製造に進出しようという時に塗料のお問合せを頂いた事がキッカケで知り合ったのだが、その徹底ぶりのすさまじさにいつもびっくりさせられている。いきなり最新鋭の機械を導入し、材の仕入れは木曽ヒノキのみ(最初は杉も少量生産していたが)、塗装は蜜ロウワックス以外使いませんと決めてしまった。木曽ヒノキをびっくりするほど購入し、材を乾燥させる場所がないと土地まで買った。後で聞くと決定までにはいろいろな調査を気が済むまでやったそうだが、横で見ていた私はいきなりそんなに投資そて大丈夫なのかと心配したものだった。

 実際、フローリングに進出して数ヶ月は売上げが上らず、会長のお父さんから「小川さん何とかフローリングを売ってやってくれ。このままでは倒産してしまう。」と言われ、蜜ロウワックスを採用してもらっているので心配していたが、その数ヶ月後には会長がフォークリフトに乗って忙しそうに材を運んでいる。「会長、お忙しそうですね。」と声をかけると、「材木屋なんて、こんな年になっても働かされる。」とぶつぶつ文句を言っている。この間まで「暇で暇でしょうがない。」と怒っていたくせに、まったく困ったものである。

 なぜ、こんなに急激に伸びるのだろうか?ヒノキのフローリングなんて安い商品があふれるほどある中、決して安くはないフローリングがどんどん売れて行く。マンション一棟まるごとフレビオ仕上げ、銀座のクラブが採用、建売住宅にフレビオを採用したら周りの建売より1000万円高で建築途中に完売などビックリの話がいっぱい出てくる。

 別に難しいことではない。先ほどお話した徹底が信頼に繋がっているのだ。当初、ウレタン塗装にしてくれたらいくらでも買うという話があった。もしそこでウレタン塗装を受けていたら、価格競争の波にドップリつかってしまい、こだわりのフローリングとしては売れなくなっただろう。あくまでも蜜ロウワックス、木曽ヒノキにこだわり抜いたことで巷に溢れているヒノキフローリングとは別のブランド品として認知されたのだ。

 床暖房対応フローリングも徹底が産んだ商品である。無垢の一枚板フローリングで床暖に対応するなんて、木材のことを知っている人間なら即座にムリと思うのが普通である。しかし、加藤社長は独自の乾燥方法を開発し、2年がかりで東京ガスの床暖房テストに合格する。80度の温水を床下に1100時間流し続け、毎日コップの水をフローリングに振りかける。10ヶ所の測定で1ヶ所でも0.5mm以上の隙間が出来たら不合格になるという過酷なテスト通過したのである。

 皇樹KOUKIには床暖房にしたいお客様にも無垢の国産材を使ってほしいという加藤社長の意地ともいえるこだわりが詰まっているのだ。合格するまで工夫すると最初から決めてしまう。迷わない、ぶれない、一番難しいのはここだけなのだ。

 決めたことに迷い、途中であきらめ、投げ出してしまったところに人とは違う差別化された商品など生まれるはずがない。最後までやり抜いたところにブランドは産まれる、ただそれだけのことである。


文:小川耕太郎

第7回(続)屋根に特化した工務店編/リフォーム産業新聞2007.3.13

2007-03-13 09:35:10 | リフォーム産業新聞2006~
リフォーム産業新聞 2007年3月13日付 No.772

●しぜんな自然派家造り
 第7回(続)屋根に特化した工務店編

 ~1日に3回の訪問で丁寧な現場管理~


(前回までのあらすじ)
 横浜市金沢文庫に創業24年の「トンカチ」という名前の小さなホームセンターがある。責任者、根岸由民さんは「トンカチ」のリフォーム部門として「根岸小屋」というリフォーム相談室を受けた。相談を受付、受注した仕事は根岸さんが責任施工するというシステムだ。しかし受注はなかなかとれない。そこで根岸さんは高級住宅街が多いという金沢文庫周辺の住宅事情を踏まえて、屋根に特化することを決意した。


戦術
手書きのチラシを
①店頭でターゲット年齢の人に手配り。 
②ターゲット住宅へのポスティング。
③親切、丁寧な現場管理。工事中は1日に3回は必ず現場に行く。
④写真。工事の順を追って、写真を撮り、完成後、その写真を額縁に入れ保証書と一緒に進呈。

 以上のことを来る日も来る日もやり続けてみると、月間1000万円程度の受注がコンスタントに取れるようになってきた。屋根に特化しているにもかかわらず、仕事振りや評判を聞いて、外溝や水周りのリフォームも頼まれるようになってきた。これぞ、地域密着型リフォーム事業の典型といえるのではないだろうか。

 ここまで読まれて、俺だって同じようにやってきたという方がいらっしゃるのではないだろうか?リフォーム業から会社を立ち上げた方は、多かれ少なかれ同じような苦労をされたはずだ。そう特別なことでもないかもしれない。私事ながら「蜜ロウワックス」の販売も同じように、リュックサックにサンプルを詰め、両手に唐草模様の風呂敷包みを提げて工務店さんを歩き周り、売上げを伸ばしてきた。

 その時のことを心に刻んでいれば、怖いことなど何も無い。新しいことにチャレンジしようとするとき、何だってやり通してやると思えるのだ。何年かぶりに根岸さんに会い、その仕事振りを聞き、少ない時間を見つけては「根岸小屋」に戻りチラシを抱えてポスティングに向かう姿を拝見して、改めてそう思った。


文:小川耕太郎

第6回屋根に特化した工務店編/リフォーム産業新聞2007.2.13

2007-02-13 10:02:30 | リフォーム産業新聞2006~
リフォーム産業新聞 2007年2月13日付 No.768

●しぜんな自然派家造り
 第6回屋根に特化した工務店編

 ~店頭でのチラシ配布で商機発見~


 横浜市金沢文庫に創業24年の「トンカチ」という名前の小さなホームセンターがある。その店のレジを出た正面に通称「根岸小屋」と呼ばれる8畳ほどのプレハブが建っている。

 そこの責任者、根岸由民さんはトンカチの経営母体ジューテックの元社員で、過去には建築会社を20年ほど経営していたこともあった。ある事情で別会社の経営を頼まれ、しばらく社長をしていたが、何年かしてやめる事になってしまった。仕事を失った根岸さんに「トンカチを手伝ってくれないか?」と声がかかった。

 トンカチのリフォーム部門を手伝うにあたり、「根岸小屋」という「リフォーム相談室」を作ってはどうだろうかとなった。つまり、トンカチはプレハブ小屋を提供し、事務機器一式を使えるようにし、根岸さんはその小屋を拠点にリフォームの相談を受付け、受注した相談は根岸さんが責任施工するというシステムである。

 そこあkら根岸さんの悪戦苦闘が始まった。以前からホームセンターに出入りしている業者の仕事を取るわけにはいかない。当初、数ヶ月の販売金額は微々たるもので、収入は無いに等しかった。しかし、「これで食べていけるだろうか?」という不安はしばらくして拭い去れた。金沢文庫周辺は横浜でも高級住宅地が多い。店頭でチラシ配りをしていて60歳以上のお客様が過半数であることを実感し、ある考えが閃いたのである。そこから毎日近隣を車でぐるぐる回ってみると、家が語っていた。「やっぱりな!」確信だった。

 戦略はこうだ。20年以上経った高級住宅地、住人は60歳以上、平均寿命からいえばまだ20年以上住むことになる。ジューテックは高級鋼板系屋根材「マックス瓦」の総代理店である。ここに、顧客と売り手のニーズとウォンツが一致を見る。

 「屋根に特化しよう。これで一本で10年は間違いなく食べていける。」

(次号へ続く)


文:小川耕太郎

第5回(続)施主のニーズを引き出す工務店編/リフォーム産業新聞2007.1.9

2007-01-09 14:44:03 | リフォーム産業新聞2006~
リフォーム産業新聞 2007年1月9日付 No.763

●しぜんな自然派家造り
 第5回(続)施主のニーズを引き出す工務店編

 ~ひとつのことにこだわることは武器を持つこと~


(前回の続き)
 そんな彼の姿勢や集中力が作品に存在感を与えているのだと思うし、写真だけでも魅力を感じるのだろう。私もこんなドアにしてみたいと思うし、そこから部屋はこんな感じで、お風呂は・・とドンドンイメージが膨らんでくるのはどうしてだろうか。

 別に今回私は、ドア作家にドアを作ってもらおうと提案しているわけではない。競争力のある工務店になるためにはお施主様が表現できないでいる「ニーズ」を探り当て、その方に合わせた提案するという手間のかかる作業を避けて通れないし、当然、インテリア雑誌、展示会、インターネットなどを利用した情報収集、勉強は欠かせなくなり、表現力、提案力も必要になってくるだろう。しかし、ドアひとつでいいから他と違うこだわりの提案ができれば、お客様の方でイメージを膨らませ、お客自身さえ気づいていなかったニーズが溢れ出てくることがあるということを言いたいのだ。そして、その溢れ出させることが要望を聞いてくれる工務店、こだわりを実現してくれる工務店につながるのだと思う。まずはドア一枚から始め、溢れ出させるための武器を照明、家具、塗装etcと少しずつ増やしていけば、何年かすれば他にはない会社になっていくのではないだろうか。

 まずは、社長の好きなこと、趣味など身近なところからこだわりを表現していったら良いのである。そんなに難しいことではないと思うのだが如何だろう。


文:小川耕太郎

第4回施主のニーズを引き出す工務店編/リフォーム産業新聞2006.12.12

2006-12-12 14:39:40 | リフォーム産業新聞2006~
リフォーム産業新聞 2006年12月12日付 No.760

●しぜんな自然派家造り
 第4回施主のニーズを引き出す工務店編

 ~ドア1枚からはじめる、こだわりのリフォーム~



 お施主さんは家のドアをどのようにして決めるのだろうか?
工務店さんから進められるままに?メーカーのカタログから?そもそも、お施主さんはドアになど興味が無いのだろうか?安ければ良いのだろうか?

 それでは、工務店さんはどのようにしてドアを選んでいるのだろうか?
やはりメーカーのカタログから?オリジナルのドアを作っているところもあるだろう。杉やヒノキを使って、あるいはシナベニアなどで・・・。でも、リフォーム例などで「いいなー」と思うドアを私は見たことが無い。

 いずれにせよドアは決まり、家に取り付けられ、ある空間への出入り口として使われることになる。スチール製玄関ドア、寝室へのフラッシュドア、リビングへのガラスの付いたドア、知らぬ間に値段と機能だけでどこも同じようなドアが取り付けられているのではないだろうか。

 今回ご紹介するのは日光に住むドア作家・小坂憲正さんである。まずはホームページを観て頂きたい。http://www18.ocn.ne.jp/~kosaka3/
すごい存在感、そのドアを開けたらどんな空間があるのだろうと空想せずにはいられなくなる。美容室の回転ドア、居酒屋の入口等を観ると私ならそのドアだけでワクワクしながらお店に入ってしまうことだろう。

 彼は今までに33の作品を製作しているが一つとして同じ物はない。環境や住む方の家族構成、店舗の場合どんなサービスをする場所なのかなどを考え、扉のイメージ作りから入り、一ヶ月も考え、イメージが出来上がったらそのイメージに合う木を探し始める。古木であったり、流木であったり、時には朽ちた木を使うこともある。

 彼は「その木を最大限に生かし、息を吹き込むような感覚で製作にかかります。するとどんな木でも生き返り、本来の表情を見せます。更に鉄、陶器、ガラス幾何学模様などが組み込まれ、塗装、焼き印を入れて完成となります。」と製作過程を説明している。また、彼のホームページには「気」「感覚」などの言葉がよく使われていて、作品作りにのめり込み、集中している様子がよくわかる。そんな彼の姿勢や集中力が作品に存在感を与えているのだと思うし、写真だけでも魅力を感じるのだろう。(次回に続く)


文:小川耕太郎

第3回施主を惹き付ける工務店編/リフォーム産業新聞2006.11.14

2006-11-14 14:32:56 | リフォーム産業新聞2006~
リフォーム産業新聞 2006年11月14日付 No.756

●しぜんな自然派家造り
 第3回施主を惹き付ける工務店編

 ~多種多様の自然派建材でネットワークも~


(前回からの続き)
 やってみるとわかるが林産地を訪ね、提携し、建築すると言うことは手間と苦労ばかりで実にならない、なっても採算に合わないことが多い。もちろん最初はKJ WORKSもそうだったのだろうと思う。だが、何度もやり続けて定着し、多くの人に知ってもらえるようになれば大きく変わってくる。その後、どこにも真似のできない特徴になり、こだわりを実現してくれる工務店さんとして信頼を得るようになっていく。「ナンバーワンよりオンリーワン」よく使われる言葉だが、特別な技術、特許等が必ずしも必要なわけではない。KJ WORKSはやり続け、深めていくことで「KJ WORKSにしかできない家づくり」を創り上げたと言えよう。

 現在、KJ WORKSは大阪の彩都に「暮らしのギャラリー木想館」を立ち上げ、各地から広葉樹中心に約1000枚以上の原板をクラフト館内に在庫している。その一部は、「木想館」内の「ファニチャースタジオ かぐら」や『阿蘇小国の家展示情報館』、事務所などにも製品展示を兼ねて多種多様に採用し、お客様がいつでも見ることが出来る。漆喰や珪藻土などの左官素材や「未晒し蜜ロウワックス」をはじめとする塗料、土佐和紙やケナフなど紙等も訪ね歩き、ネットワークを創り上げ、リフォームをはじめとする家づくりには欠かせない素材として活かされている。

 それだけではない。福井さんの出身がインテリア業界だったこともあって、自社の住宅設計担当者にインテリアや家具キッチン、内装にまで垢抜けするインテリアデザインのセンスを身につける指導も行っている。住まい手の方々の暮らしのあり方に、その人ならではの素材選びやお洒落なデザインのリフォームに導ける家づくりを提案していこうとしているのである。

 「KJ WORKSならではの他社には真似のできない、気候風土や素材を活かし、デザインする木の家づくりを極めることを目標に、これからも一目見たらKJ WORKSの家づくりとわかる「木想家」をつくり続けたいと思います。」福井さんの言葉である。

 何でも良いと思うのだが、工務店さんがKJ WORKSのような他にない特徴を身につけていけば、リフォームでも家づくりでも確実にお客様を惹きつける事ができるようになり、大手に負けることなどなくなると思うのである。


文:小川耕太郎

第2回全国の林産地と繋がる工務店編/リフォーム産業新聞2006.10.10

2006-10-10 14:26:38 | リフォーム産業新聞2006~
リフォーム産業新聞 2006年10月10日付 No.751

●しぜんな自然派家造り
 第2回全国の林産地と繋がる工務店編

 ~幅広い木材知識を求め全国を飛び回る~



 4年ほど前、大阪で工務店をされている方から電話が入った。「明日、尾鷲に見学に行きたい。」それがKJ WORKSの福井さんと知り合ったキッカケである。KJ WORKSで家を建てられた方がご自分でフローリングに蜜ロウワックスをかけた。その家に点検に行った福井さんは、床の仕上がりを見て何を塗ったのかを尋ね、すぐに私どもに電話をかけてきたのだった。お客様のところで見たワックスが気になり、すぐに現地に出向き確認しようとするなんて、なんて行動の早い方だと私もビックリしたことをはっきりと覚えている。

 KJ WORKSは、今年で27年目になる工務店さんである。前身は家具&インテリアが中心の内装業であった。当時を振り返り「使い勝手や用途による寸法、形、色合いなどかなり神経を使う作業でしたが、実にやりがいのある仕事でした」と福井さんはおっしゃる。そのことと福井さん自身が岐阜県の林産地の生まれで、木材に小さい頃から非常に興味を持っていたことが、国内の木材に関わらず海外の木材まで、針葉樹から広葉樹までと幅広い木材知識を得る事に繋がっていった。日本各地の林産地を見て歩き、各地の製材所とも友好な関係を構築することで、各林産地の木材の特徴も大いに学んで行ったのである。それが現在のKJ WORKSにスーッと繋がっているのがよくみえる。

 KJ WORKSのホームページ(http://www.kjworks.co.jp/)を見て頂くと、全国各地の林産地へお客様と一緒にしょっちゅう出かけている様子がうかがえる。新築の家見学会や勉強会は月に何度も行なっている。大阪から尾鷲まで車で約4時間、バスを借りて数十人で尾鷲ヒノキの山、製材、プレカット、内装材工場と私どものワックスを見学に来られたこともある。国産材・自然素材と銘打って建築をしている工務店さんは数多くあるが、ここまで徹底して見学会を企画し、実際に見学した林産地の製材所と提携し、材を仕入れ、リフォームや新築に活かしている工務店さんは多くないだろう。(つづく)

文:小川耕太郎




第1回有機無農薬野菜の八百屋編/リフォーム産業新聞2006.9.12

2006-09-12 13:43:43 | リフォーム産業新聞2006~
リフォーム産業新聞 2006年9月12日付 No.747

●しぜんな自然派家造り
 第1回有機無農薬野菜の八百屋編

 ~八百屋の店先で防蟻剤を販売~


 地球環境にやさしい、と銘打っている企業は星の数程ある。しかし実態はいかがなものか。初回としては風変わりではあるが、エコロジー雑貨販売店を紹介する。富士村夫妻が経営する有限会社生活アートクラブ(http://ecodepa.jp/)である。

 同社が創業時に開発したのは河川の負荷軽減を目的としたリサイクル石鹸。これを販売していくうちに、実は、川を汚す大きな要因とされる農薬問題にぶつかる。農作物に使用する農薬のなんと数百倍の量が殺虫剤やシロアリ駆除剤に使用されていることを知り、突如自然素材によるにシロアリ駆除業に進出をする。

 一般に、シロアリ駆除剤メーカーの販売先は工務店、ホームセンターだ。ところが同社は真逆の発想で、都内の小さな八百屋から営業をスタートした。八百屋と言っても、有機無農薬野菜を扱っている自然食品店のような小売店。当初、八百屋の主人からは、「野菜を売っている横でシロアリ駆除なんて、お客様に対してイメージが悪すぎる」と叱られたそうだ。しかしながら、「そこは無農薬野菜も自然素材のシロアリ駆除も健全で肥沃な土壌をつくる同じ仲間」と説得し、なんとか了解を取り付けた。

 晴れて「薬剤を使用しないシロアリ予防・駆除」と銘打ち、店の片隅に遠慮がちに立てたポールに幟を括ったのである。その2日後、お店の常連客から「こういう商品を扱って欲しかった」と絶賛の声付きでシロアリ駆除の注文を貰った。

 住宅の専門ではない会社にも関わらず、健康・安心・安全といった間口で呼びかけを行った結果、初年度180棟、2年目には200棟を超える施工請負に恵まれた。

 昨年は、リフォーム詐欺事件が勃発。シロアリ業界や訪問販売業者への不信感が広がる中、同社では消費者の信頼を勝ち取り、新たなサービスも開始した。エアコンやレンジ周りの清掃仕事だ。家族の健康まで配慮した丁寧な床下の工事に対するお客様の信頼があるからこそ、次なる相談事が寄せられたのかもしれない。床下から床の上に上がれるチャンス。早速会社趣旨に合致した「塩素系薬剤を使用しない、人と環境にやさしいハウスクリーニング」のネットワーク化を1年がかりで構築した。シロアリ業に比して、ハウスクリーニング業は更に面白いらしい。特にエアコン、浴槽の清掃にはパフォーマンス性がある。実際、消費者から次なる要望や相談事が舞い込んでくる。屋根の修繕、フローリング張替、今話題のオール電化住宅など、リフォーム相談・依頼である。現在、施工業者のネットワーク化を図っているそうだ。

 同社の当面の目標は、国産材を育てること。安全をテーマにシロアリ駆除やハウスクリーニング事業がお客様との良きコミュニケーションツールツールとなって、将来、国産材を使用した住宅関連事業に進出するのは、それほど遠い話ではないかもしれない。

文:小川耕太郎