いつも、夜中に何度も鳴き声で起こされるのに、昨日から今日にかわる時間が最後の鳴き声だった。
昨夜は抱っこすると、力なく寄り掛かってきた。
こちらも力尽きぬようソファーに寄りかかり、しばし思い出話と老犬の頑張りに労いを伝えた。
朝目を覚ますと、昨日「もう寝ようね」と横にした場所で同じ姿勢。いつも起こさない様に確認する呼吸の動きがない。声をかけ、抱こうとすると既に冷たくなっていた。
こんな筈ではなかった。もう少し一緒に居られると思っていた。
皆が声を掛けてくれる。「あなたが心配」と。もちろん、主人や息子も。
でも、一番泣いているのは主人と息子。おかげで、こちらは笑うしかない。

午後の日差しが眩しい。その上、かなり暑い。

鳥が空を飛んでいる。雲が老犬の顔に見える。
これから、幾つ君の面影を探すのだろうか。