水無月のAIワールド

AIで自分の夢を叶えたい!

ラストチャンス⚾️(長編)

2023-12-28 17:45:07 | 日記
A中学校野球部、部員16名。
私が顧問でこの学校で野球を指導し始めた5年前までは、そんなに強い学校では無かった。
しかし、3年後、生徒が入れ替わると部活の空気が一変した。

乾いた土が水を求めるように、部員たちは守備、打撃を覚えていった。以前は球場へ行くとき、帰る時のスクールバスでもゲームの話しかしてなかったのに、行く時はどんなプレイをしようか作戦を話し合い、負けた時は悔しくて誰も一言も話さなくなった。練習試合の回数も増えて行き、私はいつしか生徒達と中体連で全国大会に行くことを夢見てしまった。

勿論簡単では無い。3年目は地方大会で準優勝。生徒も私も、親も号泣した。勿論悔し涙。

翌年は地方大会が、まさかのコロナ流行の為中止で戦わずして涙。

私の転勤も近くなってきた5年目、ついに地区大会優勝。
全員に迷いがない。県大会だ!

県大会、破竹の勢いで勝ち進んだA中学校は、決勝大会で優勝常連校のB校と対戦した。
天気は激しい雨。ブルペンは粘土のようにぐちゃぐちゃで、投手のスパイクを激しく汚した。

A校はオーダー交換後のジャンケンで、セオリーの後攻。
雄叫びを上げる16人。
しかし、当たり前だがB校は凄い。盗塁やスクイズまで仕掛けて来た。長打だけが少年野球ではない。
あっという間に7回の裏。しかもアウトカウントはツーアウトでスコアはB校が3点、A校が2点。
誰もが諦めたその時。
バッターが1番に戻った。カモシカのようにしなやかな下半身が自慢の山本が、ポテンヒットを打った。小さいがヒットはヒット。
メンバーに再び戦意到来!
2番の田畑は、渾身のスリーベースヒットでついにA校、3点!
力が尽きそうなメンバーに最後の力を与えたのは、スタンドの親の喉が枯れるほどの応援の声だった。私は諦めかけていた自分を恥じた。

3番の妹尾。もう作戦では無い。気合いで打てとサインを出した。
球場全員が固唾を呑んでバッターボックスを見つめる。
疲れきった投手、まさかのワイルドピッチで妹尾の勝負のチャンスは失われてしまった。
しかし、諦めずホームインした田畑。その瞬間、県大会優勝が決まった。
私の人生1番の幸せな瞬間まであと3ヶ月、まずは一勝を目指して進んでいこうと思う!






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