☆気まぐれ学生の読み物ダイアリー☆

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34.復活(上)(下)

2007-09-11 20:35:19 | 小説(海外)
 今日は久しぶりに海外の小説を取り上げようと思います今日紹介するのはトルストイ最後の大作『復活』。トルストイが最晩年に10年以上の歳月を費やして書き上げたトルストイ文学の集大成ともいえる作品です。このブログで海外の小説を取り上げるのはドストエフスキーの『罪と罰』以来ですが、この作品は雰囲気的には罪と罰のエピローグの延長といった感じでした。(読んだ人しかわからないたとえですみません)ということで、小説のあらすじを紹介したいと思います


◆物語のあらすじ◆
 貴族社会で生活するネフリュードフ公爵は、とある毒殺事件の陪審員に任命されました。法廷で彼が目にしたものは、かつて彼が誘惑して捨て去ったカチューシャ(マースロワ)の姿でした。彼女は“あの日”から娼婦として暮らすようになり、堕落した人生を送ってきたあげく、この日毒殺事件の被告人として法廷に呼び出されたのでした。すっかり忘れ去っていた青年時代の思い出がよみがえり、自らが犯した罪と良心との葛藤に苦しむネフリュードフ。この時、彼はカチューシャの罪を晴らすために行動しようと決心しました。


 2人の初めての出会いは13年前でした。ネフリュードフが叔母(ソフィヤ・イワーノヴナ)の家に滞在した際、初めて美しい少女・カチューシャを目にしたのです。まだ大学生だったネフリュードフと、ネフリュードフの叔母の家で働いていた小間使いのカチューシャ。当時ともに純粋であった2人は、しだいに強くひかれ合っていきます。そして旅立ちの日、2人は特別な想いを抱きながら別れを告げました。

 2人が再会したのはそれから3年後のことです。この間、ネフリュードフは貴族社会の生活にどっぷりと浸かり、以前のような純粋な心を失っていました。そんな時、彼は再び叔母の家を訪れました。そこにはまだカチューシャが働いていました。堕落したネフリュードフとは対照的に、純粋な心を持ち続けるカチューシャ。しかし、ネフリュードフとの再会に心をときめかせるカチューシャとは違い、ネフリュードフの心の中には抑えきれない衝動が渦巻いていました。そして10年前の復活祭の日、ネフリュードフはついに自らの心にひそむ悪魔の誘惑に負けてしまったのでした。

 復活祭の翌日、ネフリュードフは叔母の家を後にします――カチューシャの小さな手のひらの中に100ルーブリ紙幣を押し込めて。悪夢のような出来事からしばらくして、カチューシャは自身が妊娠していることを知りました。このことを知ったカチューシャは雇い主であるソフィヤたちと喧嘩し、ついに暇を出されてしまいます。悲しみに暮れ、駅のホームで自ら命を絶つことも考えたカチューシャでしたが、その後各地を放浪するうちに徐々に堕落していき、現在のような娼婦としての生活を送るようになりました。彼女が裁判を受けるようになったのは彼女の最初の堕落から8年後の出来事でした。


 裁判に参加したネフリュードフは、彼女の罪が冤罪であることを確信し、彼女にかけられた嫌疑を晴らそうと努力します。実際、陪審員が集まって開かれた会議でも彼女を支持する声が多数聞かれ、最終的には彼女を無罪とすることに決定しました。しかしながら、陪審員たちはある重要な手続上のミスを犯してしまったため、結局マースロワは4年間服役することになってしまいました。

 このミスを取り返すべく、ネフリュードフは東奔西走することになります。彼は上級裁判所である元老院に掛け合ったり、時の皇帝に直々に嘆願書を提出したりしました。その一方で彼はマースロワに面会を求め、彼女に対して自らの罪を謝罪し、無事に罪が晴れた暁には彼女と結婚したいという意向を伝えました。長い歳月の間に嫌な思い出をすっかり消し去ってしまったマースロワは、最初にネフリュードフを見た時は怒りと困惑の色を隠せずにいましたが、彼の結婚の申し出については断固拒否しました。後に彼女は自分にとって好意的なこの金持ち男性をどのように利用しようか考えるようになります。しかしながら、マースロワが彼に対してどのような態度を取ろうと、彼の決心が揺らぐことはありませんでした。そんな中、元老院から下された判決。結果は「有罪」――これにより、シベリアでの服役を余儀なくされたマースロワはシベリアに向かいます。そんなマースロワを追うべく、ネフリュードフも身辺整理を済ませ、一路シベリアへと向かうのでした――



 ここまでが大体上巻までの内容です大作なので枝葉末節まで書いていくとキリがありませんが、この程度で大体話の流れは伝わったのではないでしょうか。この先の話に少しだけ触れておくと、シベリアに着いたマースロワとネフリュードフは、そこで様々な人々に出会います。マースロワは少しずつ自分の心を取り戻していき、娼婦だった頃の自分に決別すべく前進します。また月日が流れるにつれてマースロワの胸の中にはネフリュードフとの楽しかった思い出がよみがえってきて、彼女の感情は大きく揺さぶられることになります。しかし、それでも彼女の結婚に対する答えは変わりませんでした。なぜなら、ネフリュードフに対する想いが強くなればなるほど、自分はネフリュードフにふさわしくない人間であるという思いが強くなっていったからです。そんな中、マースロワとネフリュードフが耳にしたある人物の告白。そして、ネフリュードフのもとに届いた一通の手紙。マースロワの決意の一言を耳にしたときのネフリュードフの運命は――


 この小説では単なる恋愛小説であるというだけでなく、その裏にある時代背景、社会情勢の一面をも垣間見ることができます。この作品が成立したのは1899年、帝政ロシアの真っ只中です。農民たちは貴族たちによる支配に苦しみ、また多数の政治犯や異教者が投獄されることもありました。そんな中、ネフリュードフが目指したのは自分の土地を貧しい農民に分けてあげることでした。彼は自らの土地を捨て、社会の平等を実現しようとしたのですが、この辺りには当時社会主義が望まれていた時代背景が窺えます。レーニンらによってソビエト連邦が成立したのはこの後まもなくのことでした。


 ところで、この小説にはもう一つの結末が用意されていたそうです。作者であるトルストイは最初の結末を書き上げたのですが、その後「読者に聖書について知ってほしい」という理由で結末を書き直したそうです。僕個人的には書き直す前の方が好きだったので、読み終えた後には若干もやもやした感じが残りました。賛否両論意見が分かれるところかもしれませんが、個人的には期待通りの結末にならなかったのが少し残念でした


【今回の作品】 (おススメ度、読みやすさは5段階評価です)
 『復活(上)』 (360頁)  トルストイ著  中村白葉訳  岩波文庫  1979
 『復活(下)』 (405頁)  トルストイ著  中村白葉訳  岩波文庫  1979
 <おススメ度>   (星が多いほどおススメです)
 <読みやすさ>   (本が少ないほど読みやすいです)

2 コメント

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読んだはずなんだけど・・・ (kazu)
2007-09-11 22:49:40
すっかり忘れていました。トルストイはすごく“純粋”なので、学生時代にしか読めないと思います。という訳で、一番いい時に読んだのではないでしょうか?とにかく、トルストイは“原始キリスト教”を追い求めているので、ストイック(禁欲的)です。それ故、若い時はあこがれます。今はどうかというと、ネフリュードフと同じで、いろんなことを経験してしまったので、難しいかな?
とにかく、いい時期に、いい本を読んだのは間違いない!
そう? (Shin)
2007-09-12 20:36:10
それならよかったまあ自分ではそういう認識はないんだけどでも長い本は疲れる