オタクサラリーマン奮戦記

それでも生きていかざるをえない。

大人達は心を捨てろと言うが

2007-05-15 23:20:25 | Weblog
 これは少々昔の話になります。私ことうっかりロッキーと先輩のドン・マカローニさんの二人で「青髭の兄弟の店(仮名)」で一杯飲んでいたときのことです。
 ドン・マカローニさんは我らのグループのリーダー的な存在で、自分にとってはオタクの師匠であります。コミケの存在を自分に教えてくれたのも彼でありました。以来彼とは夏と冬を共に戦う戦友であります。

 その日、ドン・マカローニさんはいつになく静かでした。いつもはアニメやゲームなどのオタ話で盛り上がる我々でありましたが、その日ばかりはどちらから話を切り出すわけでもなく、ただちびちびと酒を啜り、肴をかじっておりました。
「会社の方はどうよ。もう慣れた?」
 突然、ドン・マカローニさんが少し疲れたような様子で話しかけてきました。当時私は社会人なりたての頃で、会社で電話を取ってはどう対応したらよいか分からず、頭が真っ白になってパニくり、先輩から怒鳴られてばかりという日々を送っておりました。とにかく人と話すこと自体が苦手でどうにもならない頃でした。
「いや~、やっぱオタクにとって社会は厳しいですね。新米だから給料も安いですし。」
 自分も少々疲れた声で答えました。
「金がよくてもなぁ…。」
 ドン・マカローニさんはそう言うと、懐から煙草を取り出し、顔をしかめながら某キャラクターの刻まれたジッポーで火を点けました。
 有名大学を卒業後、大手有名証券会社に就職したドン・マカローニさんは我らの仲間の中で一番の高給取りでした。
「今日、お得意さんの葬式があってね。先輩と二人で行ってきたんだ。俺も新人の頃随分お世話になった人で、最後のお別れにと思って行ったんだが。これにはもう一つ別の目的があってね…。」
 ドン・マカローニさんはそこで、煙草の青い煙をまるでため息をつくかのように吐き出しました。
 その別の目的とは何か。自分が好奇の視線を向けると、ドン・マカローニさんは目を逸らし、
「奥さんにお悔やみを申し上げた後のことさ。実は今とても有望な商品がございます、ご主人のご遺産を是非運用してみませんかと。こういうわけさ!」
とはき捨てるように言いました。
 自分は
「それは、…」
ひどい話ですねと続けようとして黙ってしまいました。彼を非難することになりそうな気がしたたからです。
「その人が残された家族のために残していった金にたかるなんてよ…。何か人として間違っていると思うんだよな。これも仕事の厳しさってヤツになるのか?でもよお、葬式の席で言うことじゃないよなぁ…。」
 ドン・マカローニさんは再び疲れたように青い煙を吐き出しました。
「仕事のためには人の心を捨てなきゃいかんのかね…。」
 そう言ってうな垂れるドンに自分はかける言葉がありませんでした。

 それから数年後、ドン・マカローニさんが勤めていた大手有名証券会社はバブル経済の崩壊の影響で倒産してしまいました。
 倒産のニュースで世間が大騒ぎになったとき、ドン・マカローニさんから電話がありました。倒産の事実は社員である彼も直前まで知らなかったそうです。

「我々はどこへ行くのか、我々は何者なのか 我々は一体何をしているのか」
 そのとき、ドンが残した言葉です。

名乗らない電話

2007-05-08 21:06:24 | Weblog
 開設したもののえらい間が空いてしまいました。皆さん日々の労働でお疲れのようでして。さすらいのジョニーさんなんてその名の通りどこかをさすらい続けているのか音信不通になって久しいです。どこかの空の下で頑張ってくれているとよいのですが…。

 さてようやくの第一回目は不肖このうっかりロッキーが努めさせていただきます。
 気が付けば季節はもう花から葉へと、新緑の季節になってまいりました。この4月から新社会人として会社勤めを始めた皆さんもそろそろ「会社の現実」みたいなものに気付き始めた頃でしょうか。
 
 そう言えば新人のうちは電話とりなんてものをやらされることが多いのではないでしょうか。相手の用件を聞き、それを担当部署に取り次いだり、伝言をしたりと一見簡単なようですが、この仕事もいろいろと面倒でたいへんです。まあ、そうやって会社がどんな仕事をしているのか覚えていくのでしょうが。
 
 新人のうちはどんな取引先があってどんな用件で電話をしてくるのか全くわかりません。しかし、相手はこちらが事情を当然理解しているものとして電話してきます。客先にわかりませんとは絶対に言えませんから、「少々お待ちください。」と保留にして事情を理解している先輩や上司に尋ねるしかない。これが一回や二回ならともかく三回以上も続くとお互いに気まずくなりますし、相手によっては怒りだします。しかもこういうときに限って頼りにすべき先輩がいなかったり、他の電話中だったりなんてことがよくあったりするものです。まあ、こんなときは「折り返し担当者よりお電話させていただきます。」とするのが常套手段でしょう。それでも相手の怒りが治まらないときは治まらないのですが…。

 このようなケースなんてのはまだいい方です。世の中には電話でまともに会話ができない人達というのが結構いらっしゃいまして。こういう連中を相手にするのは本当に疲れます。これが例えば一般の顧客からのクレームならそんな変な電話もあるかもしれませんが、信じられないことに一緒に仕事をしている会社の上司や他部署の人間にそんな奴らが結構いたりするのです。
 例えば「名乗らない電話」というのが現実に存在します。電話というのは声だけのコミュニケーションですので、相手の顔が見えません。相手が名乗ってくれなければ誰なのかは知りようもありません。ですが名乗らない電話というものは実際よくかかってきます。しかもその相手は名乗らないことについて、さして気に止めてもいないようなのです。

 以下は私が今の職場にきて三日目に起きたことです。相手を仮にXとしておきます。
私「はい。(株)○×△でございます。」
X「あん?!(不機嫌そうに)」
私「あの、(株)○×△でございますが。」
X「な、なんなんだよ!」
私「は?」
X「他の奴に代われよ!」
私「あ、あの…。どちら様でしょうか。」
X「いいから、他の奴に代われって言ってんだよ!」
 後で判明したことですが、このX氏は他部署のそれなりの地位にいる方でいらっしゃるそうで。ガラの悪さは以前から評判だとかで。このときも私の先輩やら上司は苦笑しているだけでした。
 
 こんなケースもありました。これは私が前の職場にいたときのことです。
?「俺だけど。○△部長いる?」
私「失礼ですが、お名前を頂戴願えますか?」
?「あん?俺が分からないのか!?」
 かくして、この?氏は社長だったのです。後で上司にこっぴどく怒られましたが、社長かどうかを声だけで判別なんて入社間もない人間にできるわけありません。電話で名乗るという当然のマナーもできなくても、上場企業の社長はできるようです。

 他には「黙ってしまう電話」というのもあります。こちらが用件を伝えても全く返事をしないのです。(相手にとって面倒な業務の場合に多いようです。)こちらが「もしもし?」と問いかけると「ちっ」と舌打ちをするのが聞こえて電話がきれます。
 また、よく聞き取れなかったのでこちらが「○×の件でよろしいですか?」と確認すると、これまた黙ってしまう人がいます。「もしもし?」と問いかけると「もしも~し」と不機嫌そうに返事をしてきます。そして「○×の件でよろしいですか?」ともう一度問いかけるとまた黙るのです。どうも一度言ったことは二度と言わない主義のようです。しかし、それでは業務に支障が起きてしまうのですが…。

 このような変なケースは挙げればきりがありません。まあ、どこの職場にいっても変な人達というのはいるものでしょうが…。

 新人の皆さん。最近の新社会人はなってないなんてオジサンさん達の愚痴を聞くことないですよ。いい年して電話でまともに会話ができなくても、何十年もサラリーマンやっているオジサンはたくさんいるのですから。