今宵は『ボラ・デボラ』からこのセリフにしました。このセリフは…
ジュワンの浮気現場を目撃し、さらにジュワンと親友のジヌとの会話から、ジュワンが自分との結婚を全く望んでいなかったことどころか、一緒にいると気乗りのしない飲み会に出ているように感じていたことを知ったボラは、ジュワンが単に魔が差して浮気したのではないことを知りました。そして家に戻ったボラはベッドへ倒れこんでしまいました。
翌日も外へ出ることができず、リビングでテレビをつけっぱなしにしながらソファーに横たわっていたボラが胸の内で語ったことばになります。
今までも何度か引き合いにだしましたが、漱石の『猫』にこんな一節がありますよね。
「しかしすべての大事件の前には必ず小事件が起るものだ。大事件のみを述べて、小事件を逸するのは古来から歴史家の常に陥いる弊竇である。主人の逆上も小事件に逢う度に一層の劇甚を加えて、ついに大事件を引き起したのであるからして、幾分かその発達を順序立てて述べないと主人がいかに逆上しているか分りにくい。」
ハインリッヒがこの法則を導きだして書物を記したのが1931年ですからハインリッヒが『猫』を読んでいたのかどうかは知りませんが(笑)、これこそまさにハインリッヒの法則です。つまり、別れ話などというのもいきなり出てくるわけではありませんよね。
ボラの場合も、思い返すとジュワンに、携帯を裏返しにおいたり、何かにつけて仕事が入って会社に戻ったり、急に会議が入ったり、口癖のように、すまない、と謝ったり、車の中に誰かの痕跡があったり…。
ドラマですから笑い話になりますが、リアルですとたいへんなことになります。いいことも悪いことも積み重ねです。気をつけたいところです。
しかしですね、こんなどたばたラブコメ(親しみを込めて敢えて言ってます)に、こんな専門用語を解説付きで持ち出してくるなんて、日本のドラマでは考えられません。製作陣は、ほんとうによく勉強していると思います。ハインリッヒの法則なんて、それを無理やり大学で勉強させられたか、リスクマネージメントにでも携わっていないと出てこない言葉です。