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ここは、神話やファンタジーについて書こうと思います。

太上老君 天界の精霊が地上に降り立った

2009-03-20 00:49:17 | 道教
 老子は古代から現代にいたるまで、庶民にもたいへん人気のある神様で、多くの逸話や小説にも登場している。例えば『西遊記』では、乱暴で神さまも手に負えない孫悟空を懲らしめ、やがては孫悟空の良き相談相手になっている。
 『神仙伝』によると、老子はもともと人間ではなかったと記されている。その各説を紹介しよう。まず、老子の母は流星を見て、その「気」に感じて老子を身ごもったという。また母は懐妊してから72年目に老子を生んだという。しかも生まれる時に母親の左脇の下が割れて出てきた。生まれながらに白髪だったので『老子』と呼ばれたという。また一説によれば、母親が李(すもも)の木の下で生み落とし、老子は生まれるとすぐに口を開いた。李の木を指さして「これをわたしの姓としよう」といったのだそうだ。
 道教教典による老子の姿は身長およそ3メートル、身体は黄色で、鼻は鳥のくちばしに似ていて眉の長さ17センチ、耳は長さ23センチという異形をしていて、亀のベッドに横たわり、身には5色の雲をまとっている。黄金と宝石で飾られた御殿に住み、階段は白銀で作られている。彼の前後左右には天の東西南北の守り神である。多数の青龍(せいりゅう)、白虎(びゃっこ)、朱雀(すざく)、玄武(げんぶ)が護衛となり、頭上には雷電が輝いているという。


道家

2009-03-13 11:07:50 | 道教
 老子とその後継者である荘子を代表とする学問の派閥のひとつ。周代末期から戦国時代にかけて中国にはさまざまな思想が出現し「諸子百家」といわれるほどの賑わいを見せた。そのなかで道家は「無為自然」をモットーとして、仁義を重んじる儒家や兼愛説を唱える墨家を否定した。さらに人々が純粋な生活を送るために原始社会への復帰を説き、また統一国家の出現を予想している。


太上老君 道教の中心思想を担う実在人物

2009-03-01 00:09:59 | 道教
 太上老君は“道家”の開祖であり、本名は李耳(りじ)、戦国時代の初期(紀元前5~4世紀前半)に実在したとされる人物である。一般には老子の名前で知られている。
 彼は周(紀元前1100~前249年まで、850年間続いた王朝)の王室書庫の記録官をしていたといわれる。当時から哲学者として知る人ぞ知る存在だったが、「自分を隠し、名を現さない」という主義を貫くことから周囲の人間は彼の偉大さを理解していなかった。やがて、周の国力が衰えたことに見切りをつけてぶらりと旅に出た。函谷関(かんこくかん=当時の西の国境)を通ると、そのまま行方がわからなくなったという。風のように消えていったのである。ところが、国境で警備隊長の尹喜(いんき)に求められて、道徳の奥義を説いた5000字の書物を書き記した。
 このたった1冊の書物が老子を一躍スーパースターにしたのである。書物は数世紀後に大きな反響を呼び、道教の最も重要な教典として受け入れられ、皇帝から庶民にいたるまですべての中国人の思想的よりどころとなったのである。この書物は現在伝えられている『老子』(別名は『道徳経』)である。
 老子の思想は「無為自然」すなわち万物の根源を無であるとし、無の性格は自然で、水のように物事に逆らわず流れるものであるとした。しかも生命の源をなすというものである。


天上界は36階の高層ビルディング

2008-12-26 16:17:00 | 道教
 道教では、人間は死ぬとまず地獄に落とされる。そして閻羅王による裁判の結果、罪のあるものは懲役刑となり、そうでない者は天上界に上ることができるとされる。それでは天上界はどのような構造になっているのだろうか。
 各説あるなかで、一番ポピュラーな36層説を紹介しよう。一般の人間が到達できる天界は欲界、色界、無色界の、いわゆる三界である。これは天界のなかでも下層に位置する世界である。
 欲界=太皇黄曽天という名前の天界から七曜摩夷天までの6層に分かれている。生前に悪事、殺生、邪淫の罪を犯さなかった人間が行くことができる。ここに入った人間の寿命は1万年とされている。
 色界=虚無越衡天から無極曇誓天までの18層の天界がある。ここは一生の間に悪事を犯さず、怒りの感情を見せなかった人間が住むことができる。ここでの人間の寿命は1億万年。
 無色界=皓庭宵度天から秀楽禁上天までの4層の天界。悪口、二枚舌、嘘、おべんちゃらをいわなかった人間が入ることができる。ここでの人間の寿命は1億万年のさらに1億倍である
 以上が普通の人間が到達することができる三界で、合計28層の天界である。さらにその上にあるのが「上四天」と呼ばれる世界だ。無色界で善行を積んだ善男善女は、西王母の迎えを受けて、四梵天(しぼんてん)あるいは四種民天(ししゅみんてん)という4層からなる天界に昇ることができるとされている。ここまで到達すると、もはや人間には死を待つという恐怖は存在しない。永久の生命が保証されるのである。
 さらにこの上に「太清(たいせい)」、「上清(じょうせい)」、「玉清(ぎょくせい)」、という天界がある。ここは仙人と大勢の神さまの住む世界であり、人間は到達することができない。位の高い神仙はみなそれぞれの宮殿を持ち、仙王、仙公、仙伯、九仙、九真、九聖などの仙官の住居でもある。
 さて、そのまた上にされに天がある。これこそが天界中の天界である大羅天(だいらてん)である。いわば天国の最上階なのである。ここには玄都(げんと)という都市があり、その中心部に玉京という宮殿がそびえたっている。この宮殿の主人が道教の最高神である元始天尊なのだ。彼は宇宙創造神で、混沌からすべての物を作った神である。もちろん現在もなお宇宙の一切をコントロールしているとされる。宮殿は金銀宝石で飾られ、庭には霊獣の麒麟や獅子が遊ぶという。中国人にとってはこれ以上望みようのない、ユートピアだ。


元始天尊 元始天尊の十戒

2008-01-10 00:51:22 | 道教
 元始天尊をめぐるエピソードは残念ながらあまり存在しない。それは宇宙創造神という抽象的な立場に起因しているといえる。また、また、自然発生的な民間信仰を「道教」として体系化を計るときに、いくつかの矛盾の含んだまま神格を設定したのである。したがってこの神は民衆に理解しにくい存在なのである。庶民と触れ合うにはあまりにも偉大な存在なのだとする評価もある。
 さて、あるとき元始天尊は大勢の神々や仙人を引き連れて宇宙の各地を巡視したことがあった。ある国に着くと、そこは国王が道教の神々をうやまい、たいへん平和な治世を行っていた。そこで天尊は使者を国王の元に遣わして、次の十種類の戒律を伝授したという。

1 両親や師、目上の人にそむき、不孝をしないこと
2 殺生をしたり、すべてのものの生命を損なわないこと
3 君主にそむき、国家を損なわないこと
4 親類はもちろんのこと、血縁のない女性とも姦淫してはならない。
5 道教について非難したり、教えを他人に漏らしてはならない
6 祭壇を汚したり、祭壇の前で淫らな服装をしないこと
7 孤児や貧乏人をだましたり、 他人の財産を奪ってはならない
8 大酒を飲まず、悪口や二枚舌を使わないこと
9 太陽、月、星の下で裸になったり、老人や病人を捨てないこと
10 凶悪な行い、尊大、多大な利益をつつしむこと。

 こうした戒律は現代人から見ると、いかにも幼稚な道徳訓にしか思えないが、弱肉強食が正義として横行した古代社会にあっては大きな意味があったのである。わたしたちが持つモラルも、こうした戒律が積み重なって作られたものであることを了解したい。