社会問題の本を高校生でも分かるように要約・解説

大学院生が、社会問題の本を1冊1000字以内で要約します。学生のレポートや論文作成に使えます。

本田由紀『教育の職業的意義』を要約

2012-08-08 09:03:34 | 日記
 労働市場への「抵抗」と「適応」を学卒の若者が行えるように、教育の職業的意義が高校段階で特に求められる。具体的には、「抵抗」は労働法の権利教育をさし、「適応」は職業教育をさす。特に職業教育は、産業の変化すなわち第三次産業が中心となり雇用が流動化しているため、それに応じたものが求められる。すなわち、教える技能を一つに限定した教育ではなく、一つの専門を起点としながら関連領域の知や技能を獲得できるような職業教育が必要である。そうした資源をもった専門高校の増加が求められる。
 高度経済成長期以降、高校全入化が実現し中卒者が減少した。しかしブルーカラーの仕事の数は増加したため、中卒者がこれまで担っていたブルーカラーの仕事を高卒者も担うようになった。これにより、ホワイトカラーの仕事に高卒者が就くという対応関係は崩壊した。ホワイトカラーの仕事に就けない高卒者の不満が生じたがしかし、ブルーカラーでも、ホワイトカラーの仕事を経験するよう企業内で職業訓練をすることによってこの不満は解消された。それにともない、学校教育の職業的意義は失われてきた。
 ところで、教育の職業的意義と似て非なるものとしてキャリア教育が広まりを見せている。キャリア教育は、生きる力といった抽象的な能力の養成や勤労意欲の醸成を志向する。しかし、就職した後に役立つような労働法の知識や技能は提供しないままに、進路についてやみくもに自己決定することを結果として若者に求めているため、キャリア教育は有害である。
 なお、この抵抗と適応は両方必要である。抵抗が不足していれば、低賃金だったり長時間労働だったり違法行為が行われたりする労働条件に若者が苦しめられる。他方で適応が不足していれば、労働条件に異議申し立てをする抵抗が難しくなる。なぜなら第一に、技能を有して職場に適応してこそ、職場のなかまに承認されなかまと連帯して抵抗することが容易になるからである。第二に、技能を有してこそ、技能をもつ意味を揺るがすような職場での配置転換や無意味な仕事を受けることなど、企業の際限のない指揮命令権に歯止めをかけることができるからである。

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