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一応、秘密の…ホミンのお話置き場です。

今日は何の日。イチゴの日編

2017-01-05 | ケーキ屋さん








「ユノ様!!」


今日は客足が鈍い。これなら、ゆっくり出来るだろうかと、何の気なしに考えていた。


そんな時、店先から、突如として賑やかな声が響き、バタンとドアを開く音もする。また何かあったのだろうか。作業を中断し、受け止める準備をする。


「どうした、チャンミン」
「ユノ様!今日はユノ様の日ですっ! あっ」
「俺の日?」


予想通り、躓くチャンミンを抱えながら、耳にした言葉を繰り返す。

「何がどうして、俺の日なんだ?」
「それはですね!」

腕の中で笑うチャンミンの説明より早く、やはり予測通りに煩い鳥が飛び込んできた。



「チャンミン!今日は旦那の日じゃない!イチゴの日!」
「あ、キュちゃん」
「何でイチゴの日が旦那の日なの!」
「だって、ユノ様はイチゴが大好きなんだよ?だから、ユノ様の日!」
「だから、違うでしょ!あっちのもこっちのも旦那はイチゴ好きだって、よく分かってる!でも、何でも旦那と直結しないでよ!ボクはチャンミンとイチゴの日を楽しみたいの!」
「え?キュちゃん、僕と楽しみたかったの?」
「そうだよ!なのに、チャンミンは話の途中で駆け出しちゃうし!」
「そうだったの!ごめんね、キュちゃん!」


俺から離れず、素直に謝るチャンミンの様子に、煩い鳥は不満だと呟く。



「今日が苺の日なら…何が食べたいんだ?」
「え!?」
「丁度、苺もあるし、貰い物の苺のジャムはまだ残っているだろ?あれをロールケーキにするか?それとも、ムースかババロアか。あ、チーズタルトのソースに苺を使うのも良いな」
「ユノ様!」


俺が候補を口にする度に、チャンミンは肩を跳ねさせ、笑顔を煌めかせる。その後ろで顔を顰める鳥にも、ついでに声を掛けた。



「そこの鳥は何が良いんだ?」
「え!ボクの意見も聞いてくれるの!?」
「まあ…偶にはな」


あくまで仕方なく…。そんな表情を作り、答えると煩い鳥は部屋の中を飛び回る。


「なら、イチゴジャムをサンドしたクッキーを作って!量も沢山ね!いろんなチャンミンの所に行って、褒められたいから!」
「これから、運び回るのか?」
「うん!そうだよ」


少し、甘い顔をすれば、鳥は遠慮ない要求を突き付ける。


「ユノ様!僕もイチゴジャムをサンドしたクッキー!食べたいですっ!」
「……」
「みんなにプレゼントもしたいですっ!」
「…なら、一緒に作るか…」
「はい!作ります!あっ、それから味見も!」


チャンミンが喜ぶなら、問題ないか。そこにしか、考えが至らない俺は、チャンミンにしがみつかれたまま、イチゴの香りに包まれながら、それまでとは別の作業を始めていた。












おしまい。