コメント(10/1 コメント投稿終了予定)
 
 
 
Unknown (田中洌)
2008-12-08 20:22:44
この記事を読んで、切り抜いておいたやつの記事のことをまっ先に思いだした。しかし、どのノートのどこに貼りつけたか、わからなくなっていたので、あきらめていたら、ふと、その、切り抜きに、偶然出くわした。

そして、その抜粋を紹介したい誘惑から、どうしても、逃れられないでいる。

★★★★

■そこでは、道路の網の目と区画、黒い瓦礫の平面がどこまでもひろがっていた。コンクリートの建物の廃墟の壁も、ところどころに見えた。
しかし、何よりも平面、すべてが焼き尽くされ、一匹の蟻も這っていない。一匹の蝿も飛んでいない。生命の痕跡も残さない平面のひろがり……かつては、そこに広島市があったのだ。

金持ちや貧乏人。徴兵された兵隊や郵便配達の少年、学校の教師、子供たち、その母親たち、犬や猫がそこで生きていたが、彼らは一瞬のうちに消えてしまったのだ。一瞬のうちに、何万もの人生が、何の理由もなく、まったく突然に。

私は、爆発のときに広島にいたのではない。
爆発のあとの焼け跡を、かつて市民たちが生きていた空間を見たのだ。

その焼け跡には、ケロイドが羽織ったぼろの間から見える男女が、ゆっくり、音もなく、滑るようにさまよっていた。その光景の全体には、音がなかった。
その沈黙の空間は、永遠に沈黙しているかのように感じられた。

■私は死にどういう意味も見いださない。なぜ彼が、彼女が、死ななければならなかったか、理由はない。理由があるとすれば、生きている理由だけだ。私は、多くの価値を相対化する。
広島の焼け跡を見ながら、どうしてそうしないことができようか。

しかし、生きていることそれ自体は例外である。何か意味があるとすれば、今ここに生きていることのほかにあるはずがない、と私は考える。
そして戦争に反対する。

★★★★
      夕陽妄語「核兵器三題」2006年

 
 
 
>田中洌さん (これお・ぷてら)
2008-12-09 10:02:09
ご紹介いただき、ありがとうございました。
加藤には、いくつかの三題噺がありますが、これもまた味がありますね。

 
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。