Lapin Agile

ギャラリー&カフェ喫茶**ラパンアジル**

春待つ村

2016-04-28 | マスターのつぶやき

ことしン冬は、とても永ァくさぶい冬じゃったけン、あたし珍しく二度も風邪ばひいちょって、ホンに冬がなければ・・・と、思いよったン。

 その、待ち遠しかった春がやって来る。

でも、ことしンだけ、あたしにはその春のうれしさも、すこしばかり半分じゃった。

なぜなら姉ちゃん学校さ卒業したら、東京の方の工場さ就職が決まっちょって、この家、この村から出て行っちまうンだもの。

まーだ家には兄ちゃん二人もおるし、こないだベゴッコ)も産まれて賑やかだからいいンだけど、姉ちゃんが居なくなると、さびしい。

姉ちゃん、あたしンことすっごく可愛がってくれて、母ちゃんのように面倒見てくれたもン。

姉ちゃん、東京さ行って東京モンになって、東京で嫁に行っちまうンかな・・。

 

 いつまでも残っていた雪の下からあおい芽が顔をのぞかすようになって、

                          やがて一面緑の野になり、村人皆ンなが真っ黒な土を耕す春がやって来る。
                                    


春終われど、蝋梅のかほり・・・

2016-04-20 | ゲスト及び投稿者のページ

Lapin.Shoji

別コーナー、杉田散歩シリーズで紹介した妙法寺の境内に咲いていた蝋梅の花。咲いていて時期は1月の半ば。でもいまだに近くを通るとあの花の匂いがするような気がしてならない。 冬、葉に先立って香気のある花を開く。外側の花弁は黄色、内側のは暗紫色で、蝋細工のような光沢を有し、のち卵形の果実を結ぶそうな。境内の隅のほうでひっそりと咲いている様は、いかにも品の良き貴婦人のように見えたのは私だけではないでしょう。


春の香りは懐かしき・・・

2016-04-20 | マスターのつぶやき

仕事を終え、行きつけの酒場に腰をおろすと、いつも粋の良いママさんが珍しく着物を着て、割烹着(今の若い女は、割烹着を知らンそうだ。)をつけて、やけにしっとりとした・・?格好をしている。
「ネェ、今日珍しいものが入ったのでご馳走するわネ。」そう言いながらコトコトと、カウンターの向こう側で盛り付けをしている。
「何だと思う?蕗の薹とタラの芽が田舎から送って来たの。昨日、兄夫婦が採りたてを送り、そして今日でしょ、ホーント便利よね。それで田舎を思い出し、いつも着物姿で料理していた母のように私もこんな格好してみたの。」
「ハイ これ。これは、タラの芽の天ぷらとゴマ和え・・・こっちは蕗の薹のおひたし。 特に美味しいってものじゃないけど、何となく郷愁が感じられるし、なんてったって今、春を食べているって気がするでしょ。」  
 割烹着のママは手際よく料理の用意をしながら、合間にそつなくお酒を注いだりもしてくれている。 男も、北国で生まれ育ったので、山菜採りの事はよく覚えていた。
ーーーすっかり雪が融けた頃、隣の婆ッちゃは村のわらす(童・・わらし)等を、村のはずれの野山に山菜採りに連れて行ってくれる。土筆(つくし)だの蕗の薹だの、そしてワラビやノビロやタラの芽等々。半年も雪に閉ざされていた北国の春は懐かしい土の香りがしている。
 婆ッちゃは土手の堤にわらす等を座らせ、いろんな話をしてくれたものだ。 「ほだばよ、爺ッちゃとこのベコがよ、ちち(乳)がようけ出るもんじゃけに、おまンらの家にもろうともらって・・・。」 そんな話を遠くに聞いたような気もするが、少年だった男には一学年上の、いっちゃんの横に座ったというだけで胸はドキドキと、寡黙の少年にしていた。
 あの時のいっちゃん、今どうしているのだろう。 あれから30年・・・・・

「しーさん、どうしたの・・? 蕗の薹持ったまま、なぁーんにもしゃべらんと・・・。」

                    完